市街化調整区域の家は相続なら住める、買うと許可が要る|一般承継と特定承継
1 市街化調整区域の家は相続なら住める、買うと許可が要る|一般承継と特定承継
市街化調整区域の家を相続した人は、そのまま住み続けられます。ところが同じ家を買った人は、建て替えないでそのまま住むだけでも許可が要るとされています。登記のうえでは同じ所有権の移転なのに、取得の原因で扱いが分かれます。
本記事では、この分かれ目がどの条文のどの文言から出てくるのか、許可を取らずに使った場合に何が起きるのか、そして許可が出る場合の基準は何かを説明します。
市街化調整区域とは何か、開発許可がどういう場合に下りるのかは、別の記事で説明しています。
2 用途の読み方に人が入る→相続は通り、売買は許可が必要(まとめ)
一般承継と特定承継の分かれ目——規制の掛かり方と、違反したときに起きること
あ 規制の掛かり方
(ア)開発許可を受けた土地では、許可に係る予定建築物等以外の建築物の新築と、改築・用途の変更による予定建築物以外の建築物への変更が禁じられる(イ)市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域でも、同じ内容の制限が掛かる(ウ)許可に基づいて建った建築物を、建築主及びその一般承継人以外の人が利用・使用することは用途の変更に当たり、第三者への所有権の移転もここに含まれる
い 相続と売買の分かれ目
(ア)一般承継(相続等)=規制の外。建替えを伴わないそのままの使用も、許可は要らない(イ)特定承継(売買等)=建替えのための新築や増改築を伴わない場合であっても、用途変更の許可が必要
う 許可を取らずに使ったときに起きること
(ア)無許可の用途変更=50万円以下の罰金(イ)監督処分=許可の取消し・変更・効力停止・条件の変更や付加/工事の停止/改築・移転・除却その他の是正措置(ウ)効くのは、許可に付した条件に違反した場合の号ではなく、法律の規定に違反した場合の号。違反の事実を知って譲り受けた者と、使用する権利を取得した者にも及ぶ(エ)監督処分の公示の後に譲り受けた者=通常「違反の事実を知って」いたと推定される(オ)監督処分の命令に違反した場合=1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金
え 許可が出る場合の基準
(ア)適法に建築され、相当期間(10年程度を目安)適正に利用されたものであること(イ)用途変更にやむを得ない事情があること=所有者の死亡、破産、遠方への転居など
お この規制が及ばない建築物
(ア)線引き前建築物=許可に基づいて建ったものではない(イ)用途の変更を伴わず、敷地の拡大や開発行為がなく、一定の面積要件等を満たせば、第三者が取得した場合でも建替えのための新築や増改築に許可は要らない
3 許可を受けた者以外が使うこと=都市計画法42条1項・43条1項の用途の変更
市街化調整区域の建築規制は、新築だけに掛かっているのではありません。開発許可を受けた土地では、許可に係る予定建築物等以外の建築物を新築することと、建築物を改築し又はその用途を変更して予定建築物以外の建築物とすることが、いずれも禁じられています。開発許可を受けた開発区域以外の区域についても、同じ内容の制限が置かれています。
ここで効いてくるのが「用途の変更」の読み方です。許可に基づいて建った建築物を、許可を受けた者以外の人が使うことがこの用途の変更に当たるとされており、そこから所有権の移転が許可の問題になります。以下では、まずその読み方を確かめ、次に相続の場合がなぜ外れるのかを見ます。
許可のどこで人が特定されるのか、条件や開発登録簿に何が書かれるのかは、別の記事で説明しています。
開発許可には誰の名前が入るのか|「自己の居住の用に供すること」という条件
開発許可を受けた土地における建築等の制限
何人も、開発許可を受けた開発区域内においては、第三十六条第三項の公告があつた後は、当該開発許可に係る予定建築物等以外の建築物又は特定工作物を新築し、又は新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して当該開発許可に係る予定の建築物以外の建築物としてはならない。ただし、都道府県知事が当該開発区域における利便の増進上若しくは開発区域及びその周辺の地域における環境の保全上支障がないと認めて許可したとき、又は建築物及び第一種特定工作物で建築基準法第八十八条第二項の政令で指定する工作物に該当するものにあつては、当該開発区域内の土地について用途地域等が定められているときは、この限りでない。
※都市計画法42条1項
開発許可を受けた土地以外の土地における建築等の制限
何人も、市街化調整区域のうち開発許可を受けた開発区域以外の区域内においては、都道府県知事の許可を受けなければ、第二十九条第一項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物を新築し、又は第一種特定工作物を新設してはならず、また、建築物を改築し、又はその用途を変更して同項第二号若しくは第三号に規定する建築物以外の建築物としてはならない。ただし、次に掲げる建築物の新築、改築若しくは用途の変更又は第一種特定工作物の新設については、この限りでない。
※都市計画法43条1項
(1)建替えを伴わない所有権の移転でも用途変更の許可が必要
市街化調整区域の規制は新築に限られません。既存の建築物の増改築と用途の変更にも掛かり、その用途の変更には第三者への所有権の移転が含まれる、という読み方がとられています。
そこで、第三者がその建築物の所有権を取得する場合は、建て替えのための新築や増改築を伴わない場合であっても、建築物の用途変更の許可の申請が必要になります。買ってそのまま住むだけでも許可の問題になるのは、ここからです。
許可が要るということは、買った人はそのままでは使えないということです。それが売買や競売の場面でどう現れるのかは、別の記事で説明しています。
市街化調整区域の家は売れるのか|特定承継人の建替えが原則認められない理由
規制は新築だけでない→増改築と用途の変更(第三者への所有権移転を含む)にも及ぶ
市街化調整区域は開発許可制度を通じて規制されている結果、建築物を新築する場合だけではなく、既存建築物の増改築や用途の変更(第三者への所有権移転も含む)も規制されています。
※『開発許可に関する Q&A』高知県土木部都市計画課H29.2p15
建替えを伴わない所有権の取得→用途変更の許可の申請が必要
そのため、建築物の所有権を取得する場合は、建替えのための新築、増改築を伴わない場合であっても都市計画法の許可(=建築物の用途変更の許可申請)が必要です。
※『開発許可に関する Q&A』高知県土木部都市計画課H29.2p15
(2)一般承継人は規制の外=相続による取得は許可の対象外
分かれ目は「建築主及びその一般承継人」という線です。相続のように一般承継で取得した人はこの線の内側にいるので、そのまま使い続けることが用途の変更になりません。売買で取得した人は線の外にいるので、同じことをすると用途の変更になります。
同じ線は、都市計画法違反の建築物をめぐる裁判例でも、所轄行政庁の見解として示されています。許可を受けた者以外の第三者が建てた建築物について増改築も新築も許されないとしながら、許可を受けた者又はその一般承継人による増改築や新築については許可される可能性がないではない、という形です。
包括承継と特定承継が民法上どう違うのかは、別の記事で説明しています。
包括/特定承継の違い|対抗要件・登記申請・借地権・農地・株式・相続放棄
建築主及びその一般承継人以外の人による利用・使用→厳しく制限される
線引き後に建築された建築物については、建築主及びその一般承継人以外の人が利用・使用することは、厳しく制限されています。
※『開発許可に関する Q&A』高知県土木部都市計画課H29.2p15
所轄行政庁の見解=許可を受けた者又はその一般承継人なら許可の可能性
なお、この点に関して、所轄行政庁である埼玉県川越土木事務所長は、本件建物は都市計画法に違反する建築物であって、本件建物の増改築ないし建物の新築は許されない(なお、上記開発許可を受けた乙山春夫又はその一般承継人による増改築ないし新築については、許可される可能性がないではない。)との見解を有していること
※東京高等裁判所 1996-07-19 判例タイムズ1103号143頁/金融・商事判例1010号14頁/判例時報1590号74頁/金融法務事情1486号106頁
4 無許可の用途変更に続く制裁=罰金・監督処分・命令違反の罰則
許可が要るのに取らないまま使った場合、制裁は3つ並びます。無許可の用途変更そのものに対する罰金、是正を命じる監督処分、そしてその命令に違反した場合の罰則です。
以下では順に見ます。監督処分で効いてくるのは、許可に付した条件に違反した場合の号ではなく、法律の規定に違反した場合の号です。
(1)無許可の用途変更→都市計画法92条6号の50万円以下の罰金
まず罰則です。42条1項又は43条1項の規定に違反して建築物の用途を変更した者は、50万円以下の罰金に処せられます。建てなくても、使い方を変えただけで罰則の対象になるということです。
無許可の用途変更に対する罰則
次の各号のいずれかに該当する者は、五十万円以下の罰金に処する。
※都市計画法92条
第四十二条第一項又は第四十三条第一項の規定に違反して、建築物の用途を変更した者
※都市計画法92条6号
(2)都市計画法81条1項1号の監督処分→違反を知って譲り受けた者にも及ぶ
次に監督処分です。都道府県知事等は、都市計画上必要な限度において、許可の取消し・変更・効力の停止・条件の変更や新たな条件の付加をし、工事その他の行為の停止を命じ、又は建築物その他の工作物等の改築・移転・除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができます。
使われる号は1号です。1号は法律の規定に違反した者を対象にし、3号は許可に付した条件に違反している者を対象にします。許可を受けた者以外の人が使うことが42条1項・43条1項の用途の変更に当たるのであれば、それは法律の規定に違反した行為なので、1号の側になります。
そして1号の後段は、違反の事実を知って土地や工作物等を譲り受けた者、賃貸借その他によりそれらを使用する権利を取得した者にも及びます。国の指針は、この後段の趣旨を、違反した物件を第三者に譲渡して監督処分を逃れるなど行為制限の実効性が著しく損なわれる事態を防止することにあると述べています。
監督処分の対象と、とり得る措置
国土交通大臣、都道府県知事又は市町村長は、次の各号のいずれかに該当する者に対して、都市計画上必要な限度において、この法律の規定によつてした許可、認可若しくは承認を取り消し、変更し、その効力を停止し、その条件を変更し、若しくは新たに条件を付し、又は工事その他の行為の停止を命じ、若しくは相当の期限を定めて、建築物その他の工作物若しくは物件(以下この条において「工作物等」という。)の改築、移転若しくは除却その他違反を是正するため必要な措置をとることを命ずることができる。
※都市計画法81条1項
この法律若しくはこの法律に基づく命令の規定若しくはこれらの規定に基づく処分に違反した者又は当該違反の事実を知つて、当該違反に係る土地若しくは工作物等を譲り受け、若しくは賃貸借その他により当該違反に係る土地若しくは工作物等を使用する権利を取得した者
※都市計画法81条1項1号
81条1項1号の趣旨=違反物件を譲渡して監督処分を逃れる事態の防止
法第81条第1項第1号は、違反物件であることを知りながらこれを譲り受け、又は使用権を取得した者に対しても使用禁止等の監督処分を行い得るものであり、違反した物件を第三者に譲渡して監督処分を逃れるなど都市計画上必要な行為制限の実効性が著しく損なわれている事態を防止することにある。
※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p59
(3)公示の後に譲り受けた者→通常「違反の事実を知って」いたと推定
1号の後段は「違反の事実を知って」という要件を置いているので、知らなかった人は対象から外れます。ところがこの要件には、公示の制度が噛み合っています。監督処分の命令をしたときは、標識の設置その他の方法でその旨を公示しなければならないとされているためです。
国の指針は、その公示の後に違反物件を譲り受けた者や使用権を取得した者については、通常「違反の事実を知って」いたと推定されると述べています。
監督処分の公示
国土交通大臣、都道府県知事又は市町村長は、第一項の規定による命令をした場合においては、標識の設置その他国土交通省令で定める方法により、その旨を公示しなければならない。
※都市計画法81条3項
公示の後に譲り受け又は使用権を取得した者→通常「違反の事実を知って」いたと推定
法第81条第3項の規定による公示の後に、違反物件を譲り受け、又は使用権を取得した者については、通常、「違反の事実を知って」いたと推定されるものと考えられること。
※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p59
(4)都市計画法91条=是正命令に違反した場合の拘禁刑又は罰金
監督処分は命令なので、従わなければさらに罰則が続きます。81条1項の規定による命令に違反した者は、1年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処せられます。
命令違反に対する罰則
第八十一条第一項の規定による国土交通大臣、都道府県知事又は市長の命令に違反した者は、一年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する。
※都市計画法91条
5 用途変更の許可の基準=10年程度の適正利用とやむを得ない事情
許可が要るとして、その許可は出るのか。市街化調整区域の既存建築物の用途変更については、国の指針が留意事項を置いています。用途を変更しようとする既存建築物が適法に建築され相当期間適正に利用されたものであること、そしてその用途変更にやむを得ない事情があることを、総合的に判断するという形です。
相当期間は10年程度が目安とされますが、期間の経過だけで判断するのは硬直的だとも書かれています。やむを得ない事情として挙がっているのは、その建築物の所有者の死亡、破産、遠方への転居など、社会通念上その建築物を従前の用途に供しないことにやむを得ない事情があるかどうかです。
用途変更の許可→適法な建築・相当期間の適正利用・やむを得ない事情の総合判断
なお、用途を変更しようとする既存建築物が、適法に建築され、相当期間適正に利用されたものであること及び当該用途変更にやむを得ない事情があることについては、Ⅰ-7-1(20)③イ及びロに掲げる事項に留意して総合的に判断すること。
※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p56
相当期間は10年程度が目安→事情は所有者の死亡・破産・遠方への転居など
③ 法に基づく許可を受けて建築された後相当期間適正に利用された建築物のやむを得ない事情による用途変更具体的な運用に当たっては、次に掲げる事項に留意することが望ましい。
イ 適正利用の相当期間については、10年程度を目安とすることが考えられるが、一律に期間の経過のみで判断することは、硬直的な運用となるおそれがあるため、留意する必要があること。
ロ また、用途変更の事情については、当該建築物の所有者の死亡、破産、遠方への転居など、社会通念上当該建築物を従前の用途に供しないことにやむを得ない事情があるかどうかを判断すること。
※『開発許可制度運用指針』国土交通省令和7年3月19日p45
6 線引き前建築物は規制の外=第三者が取得しても許可は要らない
ここまでは、開発許可に基づいて建った建築物の話です。市街化調整区域として区分された日より前から存している建築物は、許可に基づいて建ったものではありません。そのため、第三者が取得した場合の扱いも変わります。
所有者の変更以外の用途の変更を伴わないこと、敷地の拡大や開発行為がないこと、一定の面積要件等を満たすことを条件に、建築主とその一般承継人だけでなく、第三者が取得した場合であっても、建替えのための新築や増改築に都市計画法の許可は要らないという運用がとられています。新築や増改築を行わず、そのまま自己用として使う場合も同じです。
線引き前建築物→一定の要件を満たせば第三者の取得でも建替えに許可は不要
線引き前建築物については、市街化区域と市街化調整区域の線引きがなされる前から利用されていた建築物であることを考慮して、
①(所有者の変更以外の)建築物の用途の変更を伴わず
②敷地の拡大や開発行為がなく
③一定の面積要件等
を充たしていれば、線引き前建築物の建築主及びその一般承継人(相続人など)だけでなく、線引き前建築物を第三者が取得した場合であっても、建替えのための新築や増改築時に都市計画法の許可は不要(=建築確認申請のみ要す)との取り扱いを行っています。
※『開発許可に関する Q&A』高知県土木部都市計画課H29.2p14
新築・増改築を伴わずそのまま自己用として使う場合→許可は不要
また、線引き前建築物を売買等で取得した第三者が、新築や増改築を行わずに、そのまま自己用として使用・利用する場合も都市計画法の許可不要として取り扱っています。
※『開発許可に関する Q&A』高知県土木部都市計画課H29.2p14
7 おわりに
本記事では、相続と売買で扱いが分かれる理由を説明しました。開発許可を受けた土地では予定建築物等以外の建築物の新築と用途の変更が禁じられ、許可に基づいて建った建築物を建築主とその一般承継人以外の人が使うことが、この用途の変更に当たるとされています。そこで、相続で取得した人はそのまま使えるのに、買った人は建て替えなくても許可が要ることになります。許可を取らなければ罰金と監督処分の対象になり、監督処分は違反の事実を知って譲り受けた者にも及びます。許可が出る余地は、適法な建築と相当期間の適正利用、そしてやむを得ない事情があるかどうかで判断されます。
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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