1 共有物分割訴訟における当事者の希望の扱い
2 被告の希望は「反訴」とする見解(基本)
3 被告の希望を給付命令を含めて反訴とする見解
4 原告の複数の希望を主位的・予備的請求とする扱い
5 原告の希望の変更を訴えの変更とする見解

1 共有物分割訴訟における当事者の希望の扱い

共有物分割訴訟で、当事者が請求するのは抽象的な分割(請求)だけであり、分割方法についての希望(主張)は判断材料の1つにすぎない、というのが判例のとる考え方です(最近は別の見解も提唱されていますが)。分割方法についての「希望」は「請求」ではないとしても、「請求」に近いくらい尊重することになります。
詳しくはこちら|共有物分割訴訟における当事者の希望の位置づけ(希望なしの分割方法の選択の可否)
分割方法の「希望」は、このような特殊な位置づけであるため、訴訟上の扱いについても問題があります。本記事では、このことを説明します。

2 被告の希望は「反訴」とする見解(基本)

通常、共有者の間で、共有物分割について協議をして、そこで意見が一致しないため、共有物分割訴訟の申立に至ります。つまり、原告が分割方法Aを主張し、被告は別の分割方法Bを主張する、という構造です。この被告の主張(B)を訴訟上どう扱うかということが問題となります。
被告の主張する分割方法Bは請求ではないですが、尊重されるものです。そこで、請求と同じ扱い、つまり、反訴として扱うという見解があります。

被告の希望は「反訴」とする見解(基本)

原告の提訴した共有物分割訴訟において,被告が原告を相手方として原告と異なる分割内容を表示して申立てたときは,やはり原告の訴えの内容と異なる訴えの申立てをしたとして,その本質は何であるかは争いがあるにしても,紛争に関する申立てとして,反訴の形態によるものとして理解することが必要であろう。
※奈良次郎稿『共有物分割訴訟をめぐる若干の問題点』/『判例タイムズ879号』1995年8月p48

3 被告の希望を給付命令を含めて反訴とする見解

平成5年東京地判では、被告の希望の扱いが少し特殊な形で問題となったケースです。被告は、現物分割を希望するとともに、登記手続(判決中に給付命令を入れること)を求めたのです。裁判所は、現物分割を選択しましたが、登記手続は採用しませんでした。その理由として原告が求めているのは共有物分割(請求)だけであると指摘しました。原告は換価分割を主張していたので、当然、(現物分割に伴う)登記手続は請求(主張)していませんでした。
要するに判決は、被告の主張(訴訟上の)請求ではないということを指摘したのです。
この理論について、分割方法についての被告の主張は請求(反訴)として扱うべきである、という批判がなされています。

被告の希望を給付命令を含めて反訴とする見解

あ 平成5年東京地判の批判

(東京地判平成5年6月30日について)
本判決の検討点としては,被告が申立てたのにかかわらず,そして判決書には被告の申立てとして記載されているのにかかわらず,裁判所は,「なお被告らは,現物分割に伴う登記手続についてまで裁判することを求めたが,その旨の訴えを提起したものではなく,本件訴えは,原告らが共有物の分割を求めるに止まるものであるから,現物分割に伴う登記手続を命ずる裁判はしない。」との説示をしていることである。
・・・
それだからこそ,本件でも原告らからの代価分割の申立てにかかわらず,自分の求める現物分割を具体的内容を明らかにして申立てたのであろう。
そうだとすると,「原告らが共有物の分割を求めるのに止まる」と理解することは問題であり,むしろ当初の提訴自体は原告らであるが,被告らもこれに応じて現物分割の反訴を提起して自らも積極的な反訴の申立てをしたと解するのが的確な理解ではなかろうか。
※奈良次郎稿『共有物分割訴訟をめぐる若干の問題点』/『判例タイムズ879号』1995年8月p53

い 給付命令についての従来の見解と令和3年改正(参考)

当事者の請求がなくても判決に登記手続の給付命令を入れることの可否については両方の見解があった
令和3年改正で明文化され、現在では可能となっている(現在では平成5年東京地判のような扱いはなされない)
詳しくはこちら|全面的価格賠償の判決における履行確保措置の内容(全体)と実務における採否

4 原告の複数の希望を主位的・予備的請求とする扱い

一方、原告としては、複数の分割方法を(順位をつけて)希望する、ということもあります。この場合、訴訟上は、主位的請求と予備的請求といえます。
訴え提起の時点で請求が複数ある場合は、訴えの客観的併合となり、事後的に複数になった(追加した)場合は訴えの(追加的)変更(後述)となります。
伝統的な解釈(形式的形成訴訟の性質)を元にすると、この順位(主位と予備)は、裁判所の判断を拘束するわけではないことになります。

原告の複数の希望を主位的・予備的請求とする扱い

共有物分割訴訟は、形式的形成訴訟であるから、裁判所は当事者の申立内容に拘束されることなく判断することができる。
本件において、原告は、主位的請求と予備的請求の二つの請求をするが、これはあくまでも原告の分割方法に対する希望の表明としての意味しかない。
※東京地判平成17年2月17日

5 原告の希望の変更を訴えの変更とする見解

訴訟の進行の中で、原告が当初主張(希望)していた分割方法を変えることがあります。分割方法Aを主張していたけれど、これを撤回して分割方法Bを主張する、あるいは、分割方法Aを維持しつつ、予備的に分割方法Bを追加する、というものです。
この場合も、希望を訴訟上の請求として扱う、具体的には訴えの変更として扱う、という見解があります。

原告の希望の変更を訴えの変更とする見解

あ 当事者の希望しない分割方法の選択(前提)

したがって、仮に何れの当事者から、現物分割の申立がなされていない場合であっても、現物分割が不能ないし著しい価格を損ずる虞がないと判断したときは、現物分割を命じることができるし、事案が適切であれば、そのように命ずるのが本来なさるべき裁判であると一般的に解されている。

い 訴えの変更という扱い

もっとも、通常は、裁判所の釈明により、訴えの追加的変更の形式で、その種の現物分割の申立がなされることであろう。
※奈良次郎稿『全面的価格賠償方式・金銭代価分割方式の位置付けと審理手続への影響』/『判例タイムズ973号』1998年8月p19

本記事では、共有物分割訴訟における当事者の分割方法の希望の扱いについて説明しました。
実際には、個別的事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
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