1 分筆登記における測量の範囲・残地求積と全筆求積
2 分筆登記における全筆求積(原則)
3 例外的な残地求積
4 分筆登記申請における残地求積を認める準則の条文
5 旧準則制定当時の分筆に伴う地積測量図の扱い
6 過去の分筆に伴う地積測量図の実務の運用
7 平成16年準則改正による実務の変化
8 残地求積を認める「特別の事情」の具体例
9 代位による分筆登記申請における「特別の事情」の判断
10 1筆の土地の一部の処分禁止の仮処分による代位(概要)
11 筆界確認の協議の支障と「特別の事情」の判断
12 額縁分筆の可否(概要)

1 分筆登記における測量の範囲・残地求積と全筆求積

たとえば土地の売買などの取引は通常,1筆単位で行います。1筆の土地というのは,登記上,1つの地番がついている土地ということです。
広い1筆の土地の一部だけを売る場合には,1筆を物理的に2筆(以上)に分ける手続が必要になります。これを分筆登記といいます。
この分筆登記の時には測量が必要になりますが,どの範囲で測量をする必要があるか,という問題があります。これ自体は事務的な手間の問題なのですが,仮処分など,他の手続の中で,この分筆登記の測量のことが問題となることもあります。
本記事では,分筆登記の際に行う測量について説明します。

2 分筆登記における全筆求積(原則)

土地は1筆ごとに登記されていて,地積が記録されています。地積とは面積のことです。当然ですが,地積が不正確だと,境界(筆界)の位置が特定できないことにつながり,隣地所有者同士で熾烈な対立が生じることになります。そこで,地積は可能な限り正確であることが求められます。
そこで,分筆登記の時にも最大限正確性を高めておく必要があります。
たとえば土地Aを土地A1とA2に分けたとしましょう。この場合,土地A1とA2の両方の測量を行います。土地Aの地積は,数十年前に測量した結果が記録されたものであって,測量誤差が大きいということもありがちです。その場合は,現在測量したA1とA2の面積の合計が,Aの地積と一致しないこともあります。その場合は,分筆の前提として,原則としてAの地積を修正する必要があります。地積更正という手続です。
このように,分筆の時には原則として全部の筆の測量をします(面積を出します)。このことを全筆求積といいます。

3 例外的な残地求積

前述の全筆求積には例外もあります。それは,土地A2だけ測量して,A1は測量しない,という方法です。この場合,A2は測量していませんので,測量データから面積を出すことはできません。そこで,分筆前のAの地積からA2の(測量した)面積を控除した残った面積をA1の地積としてしまいます。これを残地求積といいます。
当然,元のAの地積に誤差があった場合,A1の地積がその誤差を引き継いでしまいます。そこで残地求積は好ましいものではありません。

4 分筆登記申請における残地求積を認める準則の条文

前述のように,例外である残地求積は好ましくないので,極力避けることになっています。このことは不動産登記の準則に定められています。
具体的には,「分筆前の土地が広大な土地であって,分筆後の土地の一方がわずかであるなど特別な事情があるとき」には,分筆後の土地のうち1筆について地積の求積方法,筆界点間の距離及び筆界点の座標値の明示は不要とする,という規定です。残地求積が認められるためには「特別の事情」が必要なのです。

分筆登記申請における残地求積を認める準則の条文

あ 不動産登記事務取扱手続準則72条

(分筆の登記の申請)
第72条 分筆の登記を申請する場合において,分筆前の地積と分筆後の地積の差が,分筆前の地積を基準にして規則第77条第4項の規定による地積測量図の誤差の限度内であるときは,地積に関する更正の登記の申請を要しない。
2 分筆の登記を申請する場合において提供する分筆後の土地の地積測量図には,分筆前の土地が広大な土地であって,分筆後の土地の一方がわずかであるなど特別の事情があるときに限り,分筆後の土地のうち1筆の土地について規則第77条第1項第5号から第7号までに掲げる事項(同項第5号の地積を除く。)を記録することを便宜省略して差し支えない
※不動産登記事務取扱手続準則72条

い 不動産登記規則77条1項5〜7号

五 地積及びその求積方法
六 筆界点間の距離
七 国土調査法施行令第二条第一項第一号に規定する平面直角座標系の番号又は記号
※不動産登記規則77条1項5〜7号

5 旧準則制定当時の分筆に伴う地積測量図の扱い

ところで,準則の制定時点にさかのぼると,少し文言が違っていました。ただし書で,例外的に残地求積を認めるのは同じですが,特別の事情があるときに限りという文言はありませんでした。
というのは,旧準則制定以前には全件が残地求積だったので,新たに全筆求積を必要とすると,負担増加が急激すぎたので,経過措置として従前の方式(残地求積)を残存させる,という経緯(趣旨)があったのです。

旧準則制定当時の分筆に伴う地積測量図の扱い

あ 旧準則の規定

(1 これまでの取扱い)
旧準則一二三条では,その本文で「分筆登記の申請書には,分割前の土地を図示し,分割線を明らかにした分割後の土地の地積の測量図を添付するものとする」ことを原則とした上で,そのただし書において「ただし,分割後の土地の一筆については,必ずしも求積及びその方法を明らかにすることを要しない」とされていた。
この「ただし書」は,分筆前の登記を申請する場合には,本来,分筆後の土地のすべてについて,調査・測量を行わなければならないが,地積測量図上に表示する分筆後の土地のうちの一筆(いわゆる残地)については,概測であっても差し支えないとする趣旨である(昭和五三年三月一四日民三第一四七九号民事局第三課長回答)。
しかし,旧準則制定当初にあっては,一筆の一部を売却する等のために分筆登記の申請をする場合においても,当該土地の全部について測量した後でなければ分筆の登記が認められないとする取扱いでは,土地の所有者に対して過度の経費と労力を強いること,旧土地台帳法当時における分筆登記の取扱いが分筆前の土地の全部について測量を要する取扱いではなかったことから,この旧準則一二三条ただし書の規定は,分筆後の土地の一筆については必ずしも測量をすることを要しないと解釈されており,これがこのただし書の混乱を招く要因となっていた。

い 経過的な取扱という位置づけ

しかし,このような解釈をとったことは,昭和三五年法律第一四号の不動産登記法の一部改正により,不動産の表示に関する登記制度が創設されたことに伴い,旧土地台帳法当時の取扱いを直ちに改めることは国民の過度の負担を強いることを考慮したものであり,いわば不動産の表示に関する登記の創設に伴う経過的な取扱いを示したものと理解するのが相当である。
特に,登記簿の表題部に記載された地積の大半は,地租改正当時からのものが表示されており,分筆の登記の申請の都度,併せて地積に関する更正の登記をしなければならないとする申請人の負担は大きいものがあった。
とはいっても,地積測量図は,地図の精度及び正確性を維持するとともに,地積の明確化を図り,もって,登記された土地の区画の正確性を確保するものであって,分筆後の土地の一部について調査及び測量を要しないというナンセンスな解釈はあり得ないものと考える。
※秦愼也稿『不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取扱いに関する一考察』/『登記研究709号』テイハン2007年3月p23,24

6 過去の分筆に伴う地積測量図の実務の運用

前述のように,準則の制定時点では,経過措置として例外的に残地求積を認めたのですが,この例外を使うことが多くなり,結果的に,原則が残地求積ということになったのです。規定上は例外なのに,実務では原則になるというおかしな時代が続くことになりました。

過去の分筆に伴う地積測量図の実務の運用

(2 分筆登記における地積測量図の取扱いの明確化)
ところが,これまでの登記実務の現状をみると,分筆の登記の申請に添付される地積測量図の大半は,この「ただし書」による取扱いが常態化し,むしろ,分筆後の土地のすべてについて求積及びその方法が明らかにされる取扱いが例外的であるとさえいえるような状況にあった。
そのことによって,分筆登記の申請の対象となった土地の地積が正確に公示されず,後々に紛争や地図混乱等の原因ともなっていたことから,かねてからその是正方策が望まれていたところである。
また,前に述べた「民活と各省連携による地籍整備の推進」の各施策は,精度及び正確性を有する地積測量図の収集及び反映によって強力に推進できるものであり,分筆後のすべての土地の座標値が記録された地積測量図の提出が望まれていた。
※秦愼也稿『不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取扱いに関する一考察』/『登記研究709号』テイハン2007年3月p24

7 平成16年準則改正による実務の変化

平成16年の準則改正で,例外となる残地求積について「特別な事情があるときに限り」認めるということが追記されました。そこで実務の運用が,もともとの規定である全筆求積に改められたのです。
改正によってルールが変わったといえなくもないですが,どちらかというと,改正によって実務の運用が本来の姿に戻ってきたという方が正確だと思います。

平成16年準則改正による実務の変化

このようなことから,平成一六年の全面改正後における法の下での地積測量図は,一筆ごとに作成しなければならないことを原則としつつ,その一方で「分筆前の土地が広大な土地であって,分筆後の土地の一方がわずかであるなど特別な事情があるときに限り,分筆後の土地のうち一筆について規則七七条一項五号から七号までに掲げる事項(同項第五号の地積を除く。)を記録することを便宜省略して差し支えない」(準則七二条二項)として,例外となるケースの明確化が図られている。
これにより,分筆の登記の申請に際しては,上記の特別な事情がない限り,分筆後の土地すべてについて行われた調査及び測量の結果を地積測量図に表示した上で登記所に提出すべきことを明確にする取扱いとされたものと考える。
これによって,地積測量図の記録事項の変更と相まって,登記された土地の区画の正確性が確保できるものと思われる。
※秦愼也稿『不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取扱いに関する一考察』/『登記研究709号』テイハン2007年3月p24

8 残地求積を認める「特別の事情」の具体例

いずれにしても,現在では,全筆求積が原則です。一方,一定の状況(特別の事情)では例外的に残地求積が認められます。
準則の規定上は「特別の事情」の1つとして,分筆後の土地の一方がわずかであるが明記されています。それ以外の具体例は記載されていません。
解釈としては,分筆前後の地積の差が非常に小さい場合,(確定判決を得た者による)代位による分筆登記申請の場合などが,「特別の事情」として認められます。

残地求積を認める「特別の事情」の具体例

あ 分筆部分の面積割合が非常に小さい

分筆前の土地が広大であり,分筆後の土地の一方がわずかであるとき

い 分筆前後の地積の差が非常に小さい

地図又は座標値が記録されている地積測量図が備え付けられている場合であって,分筆前の地積と分筆後の地積の差が誤差の限度内であるときが明らかであるとき

う 代位による分筆登記申請

代位による分筆登記の申請による場合
確定判決による代位は肯定方向だが,保全命令による代位は否定方向である(後記※1

え 筆界確認の協議に支障がある場合

登記官において分筆前の土地の筆界が確認できる場合であって,かつ,分筆後の土地の一方が公有地に接し,境界確認のための協議や境界明示に長期間を要する場合
隣接地の土地の所有者等が正当な理由なく筆界確認のための立会いを拒否している場合又は隣接地所有者等が行方不明で筆界確認のための立会いができない場合のいずれかに該当するとき
ただし,これらを「特別の事情」として容易に認めるわけではない(後記※2
※秦愼也稿『不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取扱いに関する一考察』/『登記研究709号』テイハン2007年3月p24〜26

9 代位による分筆登記申請における「特別の事情」の判断

土地の所有者以外の者が,代位によって分筆登記申請をするというケースもあります。たとえば,1筆の土地の一部を時効取得したというケースです。この場合,申請する人が,取得した(占有している)部分を測量することはできますが,(1筆の土地のうち)他の部分については占有しているわけではないので,測量をすることが難しいです。そこで,占有部分だけを測量し,残りの部分の地積は差し引き計算をする(残地求積)を認めてもらいたいところです。
これについて,確定判決があれば,判決中で取得する土地の位置が正確に特定されているはずなので,残地求積を認めても問題はありません。そこで例外的な残地求積が認められます。

代位による分筆登記申請における「特別の事情」の判断(※1)

あ 前提事情

そこで,このような土地の一部の所有権を取得した者が代位による分筆の登記の申請をしようとする場合に当たって,分筆後のすべての土地について調査及び測量を行った上で,地積測量図を作成しなければならないか,という点が問題となる。

い 原則論

この点について一般的には,土地の一部を取得し,代位による分筆の登記をしなければならない場合であっても,分筆前の土地を特定しなければ当該一部についても特定できないため,代位者の権利が保全できないはずである。
したがって,この特別の事情に該当することはできないものと解される。

う 公共事業に基づく代位(肯定方向)

しかし一方,道路買収などの公共事業に基づく代位による分筆の登記については,官公署等の公共機関が嘱託するものであるが,その登記の嘱託が大量一括にされた場合には,官公署等の急激な費用負担を招くことも考えられる。
このため,今回の分筆の登記における地積測量図の取扱いの明確化を図った取扱いに伴う経過的,過渡的な取扱いとして,例外的に「特別の事情」として取り扱っても差し支えないと考えられる。
ただし,分筆前の地積と分筆後の地積の差が誤差の限度内であることが必要であり,当該事業を実施する公共機関にその疎明資料の提出を求め,登記官の実地調査の際に確認をする必要があると思われる。

え 確定判決による代位(肯定方向)

また,土地の一部について所有権を取得した者が元の所有者を被告として訴えを提起し,その勝訴判決を得た場合において,確定判決又は理由中において,勝訴判決に係る土地の一部の範囲が明確に特定されているときには,後々の境界に係る紛争が生ずるおそれは少ないものと考えられることから,例外的に「特別の事情」として取り扱っても差し支えないものと考える。
※秦愼也稿『不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取扱いに関する一考察』/『登記研究709号』テイハン2007年3月p26,27

10 1筆の土地の一部の処分禁止の仮処分による代位(概要)

前述のように,確定判決で1筆の土地の一部を取得したことが認められた者が代位により分筆登記申請をする場合には,例外的な残地求積が認められるのですが,仮処分の場合はどうでしょうか。判決と同じように,裁判所が判断した結果があるので,残地求積が認められるはずです。
ただ,仮処分の場合には別の問題が出てきます。というのは,仮処分を行う時には,(確定判決が出た状況とは違って)相手(1筆の土地の所有者)に知られないうちに分筆登記をする必要があります。1筆全体の測量が難しいのは当然として,時効により取得した部分だけの測量ですら難しいのが通常です。そこで,状況によっては,1筆全体を対象とした仮処分が認められることもあります。このようなテーマの裁判例では,残地求積の実務の運用の変更について言及するものもあります。このことについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|1筆の土地の一部を対象とする仮処分

11 筆界確認の協議の支障と「特別の事情」の判断

前述のように,現在では,例外的な残地求積が認められるのは「特別の事情」があるケースだけになっています。では,隣接地所有者(のうち一部の者)が立会に協力してくれないので,1筆全体の筆界の確認ができない(地積測量図を作れない)場合は「特別の事情」にあたるのでしょうか。「特別の事情」があるとして残地求積を認めてくれないと,最終的には筆界確定訴訟が必要ということになってしまいます。
この場合,筆界確認ができない理由(事情)を報告書として提出すれば,「特別の事情」として扱われることもあります。

筆界確認の協議の支障と「特別の事情」の判断(※2)

あ 肯定方向の発想

分筆登記の申請に当たっては,いわゆる取り込み分筆を防止する観点から,分筆前の土地のすべてについて筆界を確認し,測量をする必要がある。
しかしながら,分筆後の土地の一方が公有地に接しており,境界確認のための協議や境界明示に長期間を要する場合,隣接地の土地の所有者等が正当な理由なく筆界確認のための立会いを拒否している場合又は隣接地所有者等が行方不明で筆界確認のための立会いができない場合には,迅速かつ円滑な分筆の登記をすることができない。
このため,このような市区町等との境界確認のための協議に時間を要する場合や隣接地所有者との筆界の確認ができる状況にないときには,便宜上,「特別の事情」に該当する場合があることが考えられる。

い 否定方向の発想

ただし,この取扱いは,右の例示とは全く性質を異にしており,安易な適用は避けるべきものと考える。
特に,筆界が明らかでないものや後々紛争を生じるような状況が明らかであるときには,この特別な事情には該当しないとした運用が必要である。

う 肯定する場合の措置(工夫)

やむを得ず,この取扱いをするときには,これらの事情が存することを規則九三条に規定する調査に関する報告に記載,または,登記官による実地調査によって確認される必要があるものと考えられる。
例えば,隣接地の土地の所有者等が正当な理由なく筆界確認のための立会いを拒否している場合においては,立会い拒否が正当な理由に基づかないことを認めるに足りる具体的事情を記録した報告書を提出することになろう。
※秦愼也稿『不動産登記法の全面改正に伴う地積測量図の取扱いに関する一考察』/『登記研究709号』テイハン2007年3月p27,28

12 額縁分筆の可否(概要)

分筆登記をする時に,一部の隣接地所有者が協力してくれないというケースはよくあります。その場合に,額縁分筆という,筆界確認を回避する手法がありました。これは,残地求積を前提とする手法です。つまり,平成16年の運用変更の前の時代に使うことのできた方法です。現在では使うことはできません。
詳しくはこちら|土地の境界(筆界)の確定が必要な状況や確定させる工夫

本記事では,分筆登記の際に行う測量の方法について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に時効取得や境界(筆界)に伴う分筆登記に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。