1 区分所有建物の敷地の共有物分割の可否(複数見解)
2 敷地の共有物分割と分離処分禁止との関係
3 敷地の共有物分割と区分所有法の規定の関係
4 現実的な支障による共有物分割の否定
5 分有方式の現物分割の採用の実例
6 2つの見解の現実的な違い
7 専有部分と敷地の共有物分割(参考)

1 区分所有建物の敷地の共有物分割の可否(複数見解)

区分所有建物の敷地は通常,(所有権の)共有や,賃借権の準共有となってます。そうすると,共有物分割(請求)ができるのではないか,という問題が出てきます。実はこれについて統一的な見解はないのです。
本記事では,区分所有建物の敷地の共有物分割ができるかどうか,ということを説明します。

2 敷地の共有物分割と分離処分禁止との関係

最初に気になるのは,分離処分禁止との関係です。区分所有建物では,専有部分と敷地利用権が一体となるべきですから,原則としてこのふたつの分離処分が禁止されています。
詳しくはこちら|区分所有建物の専有部分と敷地利用権の分離処分禁止
敷地だけの共有物分割は,まさに分離処分にあたる,という理由で,全面的に禁止する見解もあります。
一方,分離処分にはあたらない,実際に敷地だけの共有物分割を認めるメリットもある,という見解を採用する裁判例もあります。その具体例とは,敷地を,A所有の土地,B所有の土地という2筆に分けて,土地と(その土地上の)建物(専有部分)の所有者を一致させるような手法です。いわゆる分有タイプタウンハウス形式とか,縦割の区分建物などと呼ぶ形態です。

敷地の共有物分割と分離処分禁止との関係

あ 該当する(禁止する)という見解

ア 学説 共有である敷地の分割請求(民法256条)は,専有部分と分離してなされる持分の処分に該当するから認められない。
マンション標準管理規約(30条の注釈〔4〕参照)は,以上の点を確認的に規定する(同規約〔単棟型〕11条1項2項)。
※稲本洋一郎ほか著『コンメンタール区分所有法 第3版』日本評論社2015年p133
イ 裁判例 区分所有建物の敷地の性格から分割請求は認められない
※東京地判平成20年2月27日

い 該当しない(禁止しない)という見解

ア 「分離処分」の解釈(意味) また,区分所有法22条1項本文によれば,敷地利用権が数人で有する権利である場合には,区分所有者は,その有する専有部分とその専有部分に係る敷地利用権とを分離して処分することができないとされるところ,これにより禁止される分離処分とは,専有部分と敷地利用権とについて一体的にすることができる法律行為としての処分を一方についてのみ行うこと又はそれぞれについて異なる内容で行うことを指し,
イ あてはめ(否定) 敷地利用権の(準)共有物分割請求は,専有部分と一体的にすることができるものではないから,分離処分に当たらない。
ウ 敷地の分割が合理的である具体例 さらに,区分所有法3条は,区分所有者が全員で建物並びにその敷地及び附属施設の管理を行うための団体を構成することを規定するが,いわゆるタウンハウス形式の区分所有建物においては敷地を各区分所有者の単独所有(分有)とした上でその管理又は使用に関する事項を規約で定める例もあるから,上記規定から直ちに区分所有者が共有する敷地の分割請求をすることはできないとの結論を導くことはできない。
※東京地判平成23年3月22日
※東京地判平成21年3月31日(同じ結論=分割を認める)

3 敷地の共有物分割と区分所有法の規定の関係

敷地の共有物分割は分離処分にあたらない(禁止されない)という見解を採用した場合,次の問題が出てきます。分離処分禁止以外の区分所有法の規定に違反しないかということです。
区分所有法21条は,敷地については,17〜19条を「準用する」と記載しています。比較として,仮に「定めるところによる」であれば,「定め」の中に共有物分割がなければ共有物分割は適用しない,という読み方ができます。しかし,「準用する」なので,準用する条文とは別の条文(民法256条など)を排除していないと読めます。結局,共有物分割を否定してはいないという解釈になります。区分所有法21条以外で,共有物分割を否定していると読める条文はみあたりません。
以上の解釈によれば結局,分離処分禁止以外の区分所有法の規定も,敷地の共有物分割を否定していない,ということになります。

敷地の共有物分割と区分所有法の規定の関係

あ 敷地に「準用」するという文言

区分所有法21条によれば,建物の敷地が区分所有者の共有に属する場合には,その敷地に同法17条から19条までの規定が準用されるところ,これらの規定の中に共有物の分割請求の可否に関する規定はない。

い 共用部分は「定めるところによる」という文言(比較)

共用部分の共有については,区分所有法12条により,次条から19条までに定めるところによるとされ,共有物の分割請求に関する規定を欠くことから,共用部分の分割請求をすることはできないものであるが,

う 敷地への民法の規定の適用の有無

同法21条は,上記のとおり単に同法17条から19条までの規定を準用するというだけであり,他の事項については民法の共有に関する規定が適用されることを排除していない

え 他の区分所有法の規定

他に,区分所有法上,区分所有者による敷地の共有物分割請求を否定すべき直接の根拠を見出すことはできない
※東京地判平成23年3月22日

4 現実的な支障による共有物分割の否定

以上のように,敷地の共有物分割は禁止されていないという解釈(裁判例)もありますが,無制限に許容するわけではありません。許容することで現実的な支障が生じることに配慮しています。現実的な支障が生じる場合は,共有物分割請求権に内在する制約,または権利の濫用として共有物分割を否定します。

現実的な支障による共有物分割の否定

あ 敷地の共有物分割の支障

とはいえ,高層マンションの場合等を想定すれば明らかなように,区分所有者による敷地の分割請求を肯定すると,他の区分所有者にとって,その意思に反して自己の専有部分に係る敷地利用権が所有権ではなくなり,敷地利用権を安定的に保有し続けられなくなるなど,重大な損害を被る危険が生じ,建物の存立にも多大な支障が生じる場合があるから,常に分割請求を肯定するのは妥当でない。

い 敷地の共有物分割を否定する法律構成

共用部分の分割請求が否定される趣旨は,共用部分が区分所有建物の存立にとって不可欠の部分であることに求められるところ,上記(あ)のような場合においても,かかる趣旨が妥当するから,民法256条以下に規定された共有物分割請求権に内在する制約として,共有物の性質上分割をすることができない場合に当たるものとし,又は共有物分割請求が権利の濫用に当たることを根拠として,分割請求を否定するのが相当である。

う まとめ(規範)

したがって,区分所有建物の敷地が区分所有者の共有に属し,その分割請求を禁止する旨の規約又は集会の決議がない場合において,一部の共有者は,他の共有者に対し,当該敷地が共有物の性質上分割をすることができないか,又は共有物分割請求が権利の濫用に当たるのでない限り,敷地の分割請求をすることができると解するのが相当であり,当該請求が上記の分割請求が許されない場合に当たるか否かの判断に当たっては,区分所有建物の形態や敷地の状況,分割の内容等の事情を考慮し,前記のような他の区分所有者の不利益や建物の存立への支障が生じるか否かを慎重に見極めるべきである。
※東京地判平成23年3月22日

5 分有方式の現物分割の採用の実例

以上で説明した平成23年東京地判は,一般論として敷地の共有物分割を認めた上で,当該事案では分有方式となるような現物分割を採用しました。一般論としての解釈の中で指摘していた分割方法です。

分有方式の現物分割の採用の実例

これらの事実に照らせば,本件土地の現実的な分割方法としては,aマンション102と103の壁心を基準に南北に分割し,南側の別紙添付図面(1)のイ,ロ,ハ,ニ,ホ,イの各点を順次直線で結んだ範囲の土地(甲地)を原告に,北側の同図面のイ,ホ,ヘ,ト,チ,リ,ヌ,イの各点を順次直線で結んだ範囲の土地(乙地)を被告に取得させた上,それぞれが取得する土地の価格と持分に応じて取得すべき価格との過不足を代償金の支払により調整する方法以外には考えられず,かつ,この分割方法は,以下に述べるとおり,敷地の分割請求として許容されるものであるといえる。
すなわち,上記分割方法は,タウンハウス形式の区分所有建物であるaマンションの敷地のうちaマンション101ないし105が所在する本件土地を,被告が区分所有するaマンション101及び102が所在し,その居住者が専ら使用する土地部分である乙地と,原告が区分所有するaマンション103ないし105が所在し,その居住者が専ら使用する土地部分である甲地とに分割し,乙地を被告に,甲地を原告に取得させて分有の状態を生じさせるというものであり,既に分有の状態にあるaマンション106及び107の各敷地と軌を一にするものである。

6 2つの見解の現実的な違い

原則として共有物分割可能,という見解をとった場合でも,実際には,前述の分有方式を実現するような特殊なものでない限り,敷地の共有物分割によって現実的な支障が生じることがほとんどでしょう。つまり,例外的に否定されることが多いはずです。
一方,共有物分割は「分離処分」にあたる(禁止される),という見解をとった場合に,分有方式を実現するような共有物分割までも禁止してしまうのでは困ります。この場合は,分離処分を可能とする規約を定めれば,もともと,条文の規定で(分離処分にあたるけれども)例外的に禁止されないことになります。結局,分有方式を実現する方法は存在します。
結局,2つの見解で,現実的な違いはそれほど大きくないと思います。

7 専有部分と敷地の共有物分割(参考)

以上で説明したのは,敷地のみを対象とした共有物分割です。専有部分と敷地を一体とした共有物分割については,以上のように禁止されるわけではありません。実際にそのような実例はありふれています。
詳しくはこちら|共有の専有部分(区分所有権)の共有物分割の実例

本記事では,区分所有建物の敷地の共有物分割の可否について説明しました。
実際には,個別的な事情によって,法的判断や最適な対応方法が違ってきます。
実際に区分所有建物の敷地の共有に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。