1 競売における担保責任(権利・種類・品質の不適合)
2 競売における担保責任の条文
3 競売における担保責任の有無の整理
4 種類・品質の不適合を排除する趣旨
5 種類・品質の不適合の責任に関する解釈
6 競売手続中の救済手続の種類
7 競売手続中の救済手段の内容(概要)

1 競売における担保責任(権利・種類・品質の不適合)

一般的な売買契約で,後から当初想定していなかったことが判明した場合,担保責任(契約不適合責任)が認められることがあります。
詳しくはこちら|売買・請負の瑕疵担保責任の要件と責任の内容の全体像
この点,競売で買受人となって不動産(などの財産)を取得した場合にも担保責任が認められることがありますが,売買とは大きな違いがあります。
本記事では,競売における担保責任について説明します。

2 競売における担保責任の条文

競売における担保責任は,平成29年の改正で条文が少し変わっています。最初に条文そのものを整理しておきます。
改正前の民法570条ただし書が,改正後は568条4項に移動しています。

<競売における担保責任の条文>

あ 民法568条

(競売における担保責任等)
第五百六十八条 民事執行法その他の法律の規定に基づく競売(以下この条において単に「競売」という。)における買受人は,第五百四十一条及び第五百四十二条の規定並びに第五百六十三条(第五百六十五条において準用する場合を含む。)の規定により,債務者に対し,契約の解除をし,又は代金の減額を請求することができる。
2 前項の場合において,債務者が無資力であるときは,買受人は,代金の配当を受けた債権者に対し,その代金の全部又は一部の返還を請求することができる。
3 前二項の場合において,債務者が物若しくは権利の不存在を知りながら申し出なかったとき,又は債権者がこれを知りながら競売を請求したときは,買受人は,これらの者に対し,損害賠償の請求をすることができる。
4 前三項の規定は,競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については,適用しない
※民法568条(平成29年改正)

い 平成29年改正前の民法570条

(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは,第五百六十六条の規定を準用する。ただし,強制競売の場合は,この限りでない

3 競売における担保責任の有無の整理

前記の条文を分かりやすく整理します。
権利が欠けていた,など,権利の不適合については,競売でも担保責任が認められますが,売買と比べて制限されています。
次に,種類・性質が想定どおりでなかった,というような物の不適合については,条文上,競売では担保責任が否定されています。

<競売における担保責任の有無の整理>

あ 権利の不適合

ア 基本 概ね一般の売買に準じ,担保責任を追及できる
※民法568条1項・2項,541条,542条,563条,565条
イ 特則 損害賠償請求については特則がある
※民法568条3項

い 種類・性質(物)の不適合

ア 結論 担保責任を問いえない
イ 条文 前3項の規定は,競売の目的物の種類又は品質に関する不適合については,適用しない。
※民法568条4項(平成29年改正前民法570条)

4 種類・品質の不適合を排除する趣旨

前述のように,競売では種類・品質に関する不適合があっても,条文上は担保責任が否定されています。これは,競売の結果を確実にする(そう簡単にくつがえさない)という趣旨です。

<種類・品質の不適合を排除する趣旨>

(平成29年改正前民法570条ただし書について)
競売は債務者の意思に基づかずして行われ,しかも債権者また物の性状に関して知る機会の少ないのを通常とする(他人の物なのであるから)に反して,買受人はむしろ自己の危険において買い取るべきものであるから,買受人の信頼の保護を犠牲にしてでも債権者・債務者を保護し,もって競売結果の確実性を期しよう,とする趣旨である。

5 種類・品質の不適合の責任に関する解釈

以上のように,条文上,競売では種類・品質の不適合について担保責任が否定されています。ただし,解釈としては,一定の例外を認める見解もあります。
たとえば債務者や債権者が不適合を知っていたけど黙っていた場合は,買受人はだまされたことになります。このような場合には担保責任を認める見解もあるのです。

<種類・品質の不適合の責任に関する解釈>

あ 解釈の方向性

物的担保責任の否定には慎重な配慮を必要とする
※中野貞一郎ほか著『民事執行法』青林書院2018年p517
※東京高判平成15年1月29日(公法上の規制を示さなかった)

い 特殊事情による例外

ア 「注釈民法」見解 (平成29年改正前の民法570条について)
債務者が瑕疵を知って申し出なかったり,債権者がこれを知って競売を請求した場合・・・568条3項の規定を瑕疵担保責任の場合にも類推適用すべきものと考える。
※柚木馨ほか編『新版 注釈民法(14)債権(5)』有斐閣1993年p371,372
イ 「民事執行法」見解 瑕疵の露呈なき売却実施が執行債務者または執行債権者の信義則に反する挙動に基づく場合
買受人はその者に対し損害賠償を請求できる
※民法568条3項類推適用
※中野貞一郎ほか著『民事執行法』青林書院2018年p528

6 競売手続中の救済手続の種類

競売において担保責任が認められる場合,民法上,買受人は解除や減額請求,損害賠償請求ができることになります。
競売手続の中の具体的手続としては,競売手続の取消や,売却許可決定がなされた後であれば執行抗告(売却許可決定の)取消があり得ます。時期(タイミング)によって使える手続が違ってきます。

<競売手続中の救済手続の種類>

あ 全部解除

ア 救済方法 競売手続取消決定
※民事執行法53条(適用ないし類推適用)
イ 効果 代金納付前には代金納付義務を免れる
代金納付後・配当実施前にはその返還を執行裁判所に請求できる

い 一部解除(代金減額請求)

ア 売却許可決定確定前 売却許可決定に対する執行抗告
※民事執行法71条6号,74条2項
イ 売却許可決定確定後・代金納付前  売却許可決定の取消の申立
※民事執行法75条1項類推適用
ウ 代金納付後 配当実施前であっても,もはや競売手続内で救済を受ける余地はない
※中野貞一郎ほか著『民事執行法』青林書院2018年p529

7 競売手続中の救済手段の内容(概要)

競売手続の中の救済手段(手続)については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|競売における瑕疵・損傷・滅失→売却不許可・売却許可取消

本記事では,競売手続における担保責任について説明しました。
実際には,個別的事情によって法的扱いや最適な対応方法が違ってきます。
実際に競売において想定と違う状況に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。