1 一括売却における売却代金・執行費用の割付
2 一括売却における売却代金の割付の要否
3 売却代金の割付の方法(理論)
4 売却代金の割付の計算の具体例
5 一括売却における執行費用の割付

1 一括売却における売却代金・執行費用の割付

不動産の競売手続において,複数の物件をセットにして売却するという方法(一括売却)があります。
詳しくはこちら|複数の不動産を『セットにして』競売できる;一括売却
一括売却の手続では,売却代金や執行費用を複数の物件に割り振る(配当の割付)ことになります。
本記事では,一括売却における売却代金と執行費用の割付について説明します。

2 一括売却における売却代金の割付の要否

一括売却の際に,必ず売却代金の割付が必要となるとは限りません。複数の物件の所有者も債権者の優先順位が完全に同じである場合には割付は不要となります。

<一括売却における売却代金の割付の要否>

あ 割付が不要となる場合

一括売却(民事執行法61条)された数個の不動産について,所有者が同一であり,かつ,配当等を受けるべき債権者の範囲とその順位が共通する場合
→(配当の額を導出する前提として)各不動産ごとに売却代金の額を定める(割付を行う)必要はない

い 割付が必要となる場合

一括売却がされたケースにおいて,『あ』に該当しない場合
→(配当の額を導出する前提として)各不動産ごとに売却代金の額を定める(割付を行う)必要がある
※伊藤眞編『条解 民事執行法』弘文堂2019年p865

う 割付の必要性を認めた判例

数個の不動産が一括売却された場合において,その各所有者を異にし,しかも右各不動産を目的とする担保権の担保権者が異なるとき又は担保権者が同一であつてもその被担保債権の債務者が異なるときは,各不動産ごとに売却代金の額を定める必要がある
※最判昭和62年12月18日

3 売却代金の割付の方法(理論)

一括売却の際に,売却代金を割り付けるルールの基本部分は,売却代金の総額各不動産の売却基準価額で案分するという単純なものです。
ただ,ここで用いる各不動産の売却基準価額とは,それぞれを単独で売却する前提での評価ではなく,全体として(セットで)売却することを前提とした場合の各不動産の評価額ということになります。

<売却代金の割付の方法(理論)>

あ 規定内容

(不動産が一括して売却された場合において,各不動産ごとに売却代金の額を定める必要があるときは)
各不動産ごとの売却代金の額は,売却代金の総額各不動産の売却基準価額に応じて案分し,算定する
※民事執行法86条2項前段

い 各不動産の売却基準価額の意味

『あ』で用いる『各不動産の売却基準価額』とは
実務(東京地裁民事執行センター)では,その個別売却を前提とした売却基準価額ではなく,一括した不動産全体の売却基準価額の内訳として理解している
※伊藤眞編『条解 民事執行法』弘文堂2019年p865

う 売却基準価額の2義性

『売却基準価額』(旧最低売却価額)が売却のための売却基準価額と割付のための売却基準価額という2つの意味で使われている
※『不動産の強制競売および担保権実行のための不動産競売(3)』/『ジュリスト増刊 民事執行セミナー』有斐閣1981年5月p126

え 一括『競売』との違い(参考)

民法389条の一括競売における割付についても,民事執行法86条が(類推)適用される
ただし,この場合は更地を競売に付す場合と同等の満足を抵当権者に付与すべきであることから,特別の考慮が必要になる
実務では建物価格に土地利用利益を考慮するが,批判もある
※『民事執行の実務 不動産執行編(上)』p478,478
※山本克己『一括競売の拡大』/『金判1186号』2004年p64

4 売却代金の割付の計算の具体例

売却代金の割付で使う,各不動産の売却基準価額(評価額)は前述のように,少しややこしいです。そこで具体例を示します。

<売却代金の割付の計算の具体例>

あ 各売却基準価額(価値)
状況 A地=公道に面している土地 B地=A地の裏にある袋地 A地+B地
個別売却した場合の価値(売却基準価額) 50 20 70
一括売却した場合の価値(売却基準価額) 70 50 120
い 割付の計算

一括売却の結果,140で売却された
A地とB地に,70:50で割り付ける
50対20で割り付けるのではない
※『不動産執行の理論と実務(上)』p220,221
※鈴木忠一ほか『注解民事執行法2 不動産執行』第一法規出版1984年p286,287
※『新基本法コンメンタール 民事執行法』日本評論社2014年p188
※伊藤眞編『条解 民事執行法』弘文堂2019年p865

5 一括売却における執行費用の割付

以上の説明は,売却代金,つまり配当の原資を各物件に割り付けるというものでした。
これとは別に,執行費用(の負担)を各物件に割り付ける必要もあります。費用の内容ごとに,各物件プロパーのものと共通するものに分けて,共通する費用については売却基準価額(評価額)で案分して割り付けることになります。

<一括売却における執行費用の割付>

あ 規定内容

一括売却(民事執行法61条)された数個の不動産について各不動産ごとに売却代金の額を定める場合においては,執行費用の負担もまた各不動産ごとに定める
※民事執行法86条2項後段

い 割付の内容

ア 固定費用 いずれの不動産についての執行費用であるかが明確なものは,当該不動産の負担とする
イ 共通費用 いずれの不動産についての執行費用か明確でないものは,各不動産の売却基準価額に応じて案分した額が各不動産ごとの負担になる
※『新基本法コンメンタール 民事執行法』日本評論社2014年p264,265
※伊藤眞編『条解 民事執行法』弘文堂2019年p866

本記事では,一括売却における売却代金と執行費用の割付について説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的解釈や最適な対応方法が違ってくることがあります。
実際に競売に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。