1 民法177条の『第三者』から除外される当事者とその包括承継人
2 当事者の意味
3 取得時効における当事者
4 公売・競売における当事者
5 (当事者の)包括承継人の位置づけ
6 包括承継人の具体例
7 一方当事者と他方当事者の相続人の関係の具体例
8 未登記の受贈者兼相続人と譲受人の関係

1 民法177条の『第三者』から除外される当事者とその包括承継人

民法177条の適用範囲は,『第三者』の範囲で決まります(通説的見解)。『第三者』の意味は,当事者以外の者という意味です。当事者の包括承継人も当事者と同じです。
詳しくはこちら|民法177条の適用範囲(『第三者』の範囲・登記すべき物権変動)の基本
本記事では,民法177条の『第三者』から除外される当事者とその包括承継人の内容を説明します。

2 当事者の意味

一般的に『第三者』という用語は当事者以外の者という意味です。
では,民法177条の『第三者』にあたらない当事者はどのような者か,というと物権変動の原因となった行為をした者ということになります。
さらに,何らかの行為をしてはいないけれど物権変動が生じるケースもあるので,この場合には,物権変動により直接的に効果を受ける者も当事者として扱うことになります。

<当事者の意味>

あ 原因行為の当事者

物権得喪の原因たる行為の当事者
※大判明治40年7月30日

い 直接的効果を受ける者

物権変動により直接法律上の効果を受ける者
『ア・イ』のような状況が典型例である
ア 取得時効(後記※1)
イ 公売・競売(後記※2)

3 取得時効における当事者

物権変動により直接的に効果を受ける者の典型例の1つは取得時効による物権変動の効果を受ける者です。所有権を得る者と(反射的に)失う者が基本ですが,ほかにもバリエーションがあります。

<取得時効における当事者(※1)>

あ 基本的事項

ア 解釈
時効取得者と権利喪失者について
→物権変動により直接法律上の効果を受ける者である
当事者として扱う(民法177条の第三者に含まれない)
イ 判例
時効完成時の所有者は,時効取得者に対しては,伝来取得における当事者の地位にある
※大判大正7年3月2日

い 取得時効の対象不動産の抵当権の扱い

抵当不動産についての取得時効の完成によって,抵当権が消滅する
→抵当権者は(時効完成時の所有者と同様に)当事者である
※大判大正9年7月16日

う 地役権の取得時効の扱い

地役権の時効取得者承役地所有者は取得時効による直接的効果を受ける
→当事者である(地役権の時効取得は登記なしで承役地所有者に対抗できる)
※大判大正13年3月17日
※大判昭和14年7月19日

4 公売・競売における当事者

公売や競売は売買と同じように物権が移転します。しかし,意思表示によるものではないので取引の当事者とはいえません。
とはいっても,物権変動により直接法律上の効果を受ける者といえるので当事者として扱われます。公売や競売で法定地上権が成立した場合についても同様のことがあてはまります。

<公売・競売における当事者(※2)>

あ 基本的事項

公売・競売における買受人と従来の所有者について
(意思表示による物権変動ではないが)
→物権変動により直接法律上の効果を受ける者である
当事者として扱う(民法177条の第三者に含まれない)
※大判昭和7年11月10日(旧競売法の競落人)

い 法定地上権の扱い

法定地上権の設定における抵当権設定者と買受人
→物権変動により直接法律上の効果を受ける者である
当事者として扱う(民法177条の第三者に含まれない)
※大判大正3年4月14日

5 (当事者の)包括承継人の位置づけ

一般論として,包括承継人は,文字どおり包括的に法的な地位を承継します。そこで,当事者を包括的に承継した者は当事者と同じ扱いとなります。

<(当事者の)包括承継人の位置づけ>

当事者の包括承継人は,当事者と同一の法的地位にある
→『第三者』に含まれない
※舟橋諄一ほか編『新版 注釈民法(6)物権(1)補訂版』有斐閣2009年p653

6 包括承継人の具体例

包括承継人の代表的な例は相続人です。さらに,相続財産法人も同じ扱いとなります。

<包括承継人の具体例>

あ 相続人

相続人は包括承継人である
※民法896条
一方当事者他方当事者の相続人は第三者に該当しない(対抗関係を生じない)(後記※2)

い 相続財産法人

相続財産法人は,相続人そのものではない
しかし,被相続人の権利義務を承継している
=相続人と同様の法的地位にある者である
→被相続人からの受贈者に対する関係では,第三者に該当しない
※最判昭和29年9月10日

7 一方当事者と他方当事者の相続人の関係の具体例

当事者の包括承継人は当事者と同じ扱いとなります(前述)。そこで,AとBが当事者である場合,AとBの相続人は当事者ということになり,民法177条は適用されません。

<一方当事者と他方当事者の相続人の関係の具体例(※2)>

あ 譲渡人の相続人と譲受人の相続人の関係

不動産の譲渡人の相続人に対し譲受人の相続人が所有権移転登記を求める場合
→これらの者の間には対抗の問題(対抗関係)を生じない
※ 大判昭和3年8月31日

8 未登記の受贈者兼相続人と譲受人の関係

2重譲渡のいずれも登記がなされていないまま譲渡人が亡くなり,第2譲受人がその相続人であったというケースがあります。第2譲受人は,譲受人(当事者ではなく第三者)と相続人(当事者の包括承継人)の2つの地位を持つことになります。結論として当事者として扱う(民法177条は適用されない)という判断をした裁判例があります。

<未登記の受贈者兼相続人と譲受人の関係>

あ 事案

AがBに山林を譲渡した後,Aがこれを相続人Cに生前贈与した
いずれも登記未了でいる間にAが死亡した
その後,Cが相続による所有権移転登記を得た

い 相続前の状態(前提)

二重譲渡に該当する
BCは互にその権利を主張し得ない立場にあった

う 相続後の状態(結論)

(Cが生前贈与を受けた不動産につき登記を得ないまま,Aが死亡した)
Cは相続前生前贈与による所有権を以て第三者に対抗し得なかつた関係上,贈与がなく相続が開始された場合と同一の立場になる
CはBのAに対する所有権移転登記義務を承継する
Cは二重譲渡を受けた者としての立場を失った
Cは,民法177条の第三者に該当しない
また,相続による所有権取得登記に対し,生前なされた贈与による所有権取得登記と同一の遡及的効力を付与することはできない
→Cは,Bに対し所有権取得を対抗できない
※広島高判昭和35年3月31日

本記事では,民法177条の適用が除外される当事者とその包括承継人について説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
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