1 司法書士が本人と面談しなかったことによる懲戒処分事例
2 紹介者がリピーターや知り合いだった事案
3 家族の説明を信用した事案
4 信頼できる金融機関からの依頼であった事案
5 信頼できる他の専門職からの依頼であった事案

1 司法書士が本人と面談しなかったことによる懲戒処分事例

不動産登記申請を行った司法書士が懲戒処分を受けた事例は多くあります。
詳しくはこちら|登記申請に関する司法書士の懲戒処分の全体像(不適切な業務の分類)
その中で,登記済証があった,つまり本人確認情報(や保証書)の作成はしなかった事案だけを集約して,さらにその中で,司法書士が当事者本人と面談しなかったことを理由とした懲戒処分を,本記事では紹介します。
なお,当事者本人との面談をしなかった場合に必ず司法書士の責任が認められるというわけではありません。
詳しくはこちら|不動産登記申請を行う司法書士の確認義務の枠組み(疑念性判断モデル)

2 紹介者がリピーターや知り合いだった事案

司法書士が当事者本人と面談しなかった理由(経緯)の典型例の1つとして,依頼の紹介者が以前も紹介してくれたとか,もともと知り合いだったというものがあります。

<紹介者がリピーターや知り合いだった事案>

あ 共通する事情

依頼をしてきた第三者(紹介者)or当事者の一方と知り合いであった
紹介者の典型例=不動産の仲介業者
過去に依頼を受けた件でトラブルが発生したことはなかった

い 懲戒事例
公表 処分内容 登記申請内容
『月報司法書士2006年1月』p107 戒告 賃借権設定仮登記
『月報司法書士2011年12月』p147 業務停止3週間 抵当権設定
『月報司法書士2010年6月』p143 業務停止1週間 抵当権抹消
『月報司法書士2012年7月』p109 戒告 贈与
『月報司法書士2008年7月』p98 業務停止1週間 法人(清算人就任・会社継続)

3 家族の説明を信用した事案

司法書士が,当事者の家族の説明を信用して,本人との面談を省略したというケースも多いです。

<家族の説明を信用した事案>

あ 共通する事情

当事者本人の家族が,本人から依頼されている(任されている)ことに間違いないと説明した

い 懲戒事例
公表 処分内容 登記申請内容
『月報司法書士2008年10月』p112 業務停止2か月 贈与
『月報司法書士2010年2月』p97 業務停止1か月 売買
『月報司法書士2012年8月』p118 戒告 遺産分割
『月報司法書士2011年12月』p150 業務停止1か月 法定相続

4 信頼できる金融機関からの依頼であった事案

依頼や紹介をしてくれた者が,信頼できる金融機関(の担当者)であったために,当事者本人との面談を省略した,というケースも多いです。

<信頼できる金融機関からの依頼であった事案>

あ 共通する事情

信頼できる金融機関(担当者)からの依頼であった

い 懲戒事例
公表 処分内容 登記申請内容
『月報司法書士2010年4月』p92 業務停止1週間 抵当権抹消
『月報司法書士2011年11月』p103 戒告 抵当権抹消
『月報司法書士2011年5月』p85 戒告 抵当権抹消
『月報司法書士2010年2月』p94 業務停止2週間 抵当権抹消
『月報司法書士2013年1月』p100 戒告 抵当権抹消
『月報司法書士2011年10月』p102 業務停止1か月 抵当権設定

5 信頼できる他の専門職からの依頼であった事案

依頼を紹介してくれた者が,司法書士以外の専門職であったために信頼して,当事者本人との面談を省略したというケースも多いです。

<信頼できる他の専門職からの依頼であった事案>

あ 共通する事情

信頼できる他の専門職からの依頼であった
専門職の例=弁護士,税理士,土地家屋調査士など

い 懲戒処分
公表 処分内容 登記申請内容
『月報司法書士2007年7月』p74 戒告 国有地の払下→土地の所有権保存
『月報司法書士2012年6月』p139 業務停止1週間 贈与
『月報司法書士2012年7月』p108 戒告 法人(役員変更)
『月報司法書士2006年11月』p74 業務停止3か月 遺留分減殺
『月報司法書士2007年7月』p66 業務停止1週間 根抵当権抹消(複数のうち1件の虚偽が判明していたケース)
『月報司法書士2008年7月』p94 業務停止2か月 (中間省略登記の中間者の面談省略)

本記事では,司法書士が受けた懲戒処分の事例のうち,(登記済証があるケースで)司法書士が当事者本人との面談をしなかったことが理由となった事例を整理して紹介しました。
実際には,個別的な細かい事情や,その主張・立証のやり方次第で結論は違ってきます。
実際に不正な登記申請に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。