1 司法書士の不動産売買決済への立会の法律的な意味(義務)
2 司法書士の立会に期待される役割
3 司法書士の決済『立会』の意味(解釈のバリエーション)
4 単純な登記申請代理と『立会』の違い

1 司法書士の不動産売買決済への立会の法律的な意味(義務)

司法書士が行う主な業務は,不動産の売買の決済への立会です。
詳しくはこちら|司法書士の不動産売買決済の立会の流れ(代金支払と登記移転の同時履行)
この司法書士の立会業務の法的な意味(業務や義務の内容)については,いくつかの考え方(解釈)があります。
本記事では,司法書士の立会の法律的な意味について説明します。

2 司法書士の立会に期待される役割

まず,背景として,司法書士が行う立会に期待されることは,円滑で適正な取引が実現することに役立つというものです。

<司法書士の立会に期待される役割>

司法書士が単に登記手続の専門家であるにとどまらず,社会的に信用のおける人物であり,かつ,一般の法律関係にも明るい準法律家として,取引自体の円滑,適正に資するべくその役割が期待されている
※大阪地裁昭和63年5月25日

3 司法書士の決済『立会』の意味(解釈のバリエーション)

前記の(立会業務への)期待だけでは抽象的です。司法書士の立会の具体的な意味(立会業務の内容)の解釈を紹介します。
いくつかの見解がありますが,代金の支払と移転登記の同時履行を確実に実現するという方向性は一致しています。実際の登記の事故に関する司法書士の責任の判断においては,立会業務の細かい解釈によって結果に違いが出ることもありえます。

<司法書士の決済『立会』の意味(解釈のバリエーション)>

あ 円滑な取引のための助力

司法書士が不動産取引において当事者の一方または両方の依頼に基づき,取引の現場に同席し,登記申請代理を受任するとともに,実体的権利の移転および代金の決済など取引を円滑かつ実効的なものとするために必要な助力をすることである
※加藤新太郎著『司法書士の専門家責任』弘文堂2013年p149

い 登記上の障害の有無の判定

司法書士が不動産取引につき当事者の一方または両方の依頼に基づき,取引の現場に同席し,登記手続を受託するとともに,権利の移転または代金の決済についての登記上の障害の有無を判定すること
※栗田哲男『判例タイムズ792号』1992年p79

う 登記申請意思の実質的な確認

不動産売買取引における所有権移転登記と代金支払の同時履行の場の立会について
形式的な審査だけではなく実体関係に立ち入り,法律上,取引上の常識を助言する
→登記申請意思の実質的な確認である
※加藤新太郎著『司法書士の専門家責任』弘文堂2013年p149

4 単純な登記申請代理と『立会』の違い

ところで,司法書士が行う業務の1つに(単純な)登記申請代理があります。登記申請書を作り,添付書類を揃えて登記所(法務局)に提出するという業務です。
立会業務は,この登記申請業務を含みます(包含します)。
純粋な登記申請業務立会業務では,委任者の立場が違います。立会では,形式的な(登記申請上の)登記義務者・登記権利者という立場から委任するわけではありません。不動産取引に関する当事者が,各立場としての利益を確保(保全)することを要請しているのです。司法書士の立場でいえば,真正な登記が実行されることだけではなく,取引の各当事者の利益を保全することが使命となるのです。

<単純な登記申請代理と『立会』の違い>

あ 立会の委任者の立場

立会は,不動産取引の当事者との関係で受任する

い 単純な登記申請代理との比較

登記権利者・登記義務者の関係で受任するのは立会ではない
これは登記申請代理である
※加藤新太郎著『司法書士の専門家責任』弘文堂2013年p148

本記事では,司法書士の(不動産取引の決済の)立会の意味(立会業務の内容)について説明しました。
実際に登記の事故があった際は,細かい事情や主張・立証の仕方によって司法書士(やその他の関係者の)責任が違ってきます。
実際に登記の事故(や司法書士の責任)の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。