1 売買の代金額や違約金が不当だと無効となる(暴利行為の判断基準)
2 売買契約に関する暴利行為の分類
3 暴利行為(公序良俗違反)の判断基準・要素
4 損害賠償額の予定による暴利と民法420条の関係
5 主観的要素(要件)の緩和
6 暴利行為の客観的要素の判断基準(概要)
7 暴利行為論の機能(無効にする範囲)

1 売買の代金額や違約金が不当だと無効となる(暴利行為の判断基準)

売買契約が強引に締結されるケースはとても多いです。契約内容が不当なものとして,代金の金額違約金が異常な金額となっているものがあります。
状況によっては売買契約や特約が暴利目的のものとして,無効になります。公序良俗違反の中の1つです。
本記事では,売買契約に関する暴利行為(公序良俗違反)の内容や無効となる判断の基準について説明します。

2 売買契約に関する暴利行為の分類

まず,売買契約が暴利行為となるパターンは3つに分けられます。

<売買契約に関する暴利行為の分類>

あ 低い金額で財産を得る契約

安く取り上げられる状態

い 高い金額で財産を売る契約

高い代金を取られる状態

う 高い違約金or損害賠償の予定(の特約)

形式的な違反で高い金額(or財産)を取り上げられる状態

3 暴利行為(公序良俗違反)の判断基準・要素

暴利行為として契約を無効とする判断材料(要素)は,主観的要素客観的要素に分けられます。この2つの要素を総合して無効とするかどうかを判断します。

<暴利行為(公序良俗違反)の判断基準・要素>

あ 判断基準(全体)

『い・う』の2つの要素を相関的に判断して有効・無効を決する
公序良俗に反するといえれば無効となる
※民法90条

い 主観的要素

相手方の窮迫or軽率or無経験を利用した
この要素は緩和される傾向がある(後記※1)

う 客観的要素

著しく過当な利益の獲得を目的とする法律行為である
※大判昭和9年5月1日
※武田直大稿『暴利行為』/『別冊ジュリスト223号 民法判例百選Ⅰ 総則・物権 第7版』有斐閣2015年1月p33

なお,この判断基準は,売買に限らず,他の契約類型も含めた暴利行為一般に適用されるものです。

4 損害賠償額の予定による暴利と民法420条の関係

売買契約の中で通常,損害賠償額の予定や違約金を定めます。代金額の1〜2割程度のものをよくみます。
これは民法の規定で認められています。損害賠償額の予定などの特約があると裁判所は金額を増減できないと規定されているのです。
しかし,仮に損害賠償額の予定額が不当である場合は,公序良俗違反として無効となります。結果的に裁判所が金額を増減できることもあるのです。

<損害賠償額の予定による暴利と民法420条の関係>

あ 民法420条の内容

債務不履行による損害賠償額の予定違約罰の特約(合意)がある場合
→裁判所は,その額を増減することができない
※民法420条1項,3項

い 公序良俗の上位性

損害賠償額の予定・違約罰の特約(あ)が公序良俗に違反する場合
→裁判所はこの特約を(一部)無効として増減することができる
※大判昭和6年2月13日
※大判昭和6年5月23日
※大判昭和14年3月14日
※最高裁昭和29年11月5日

5 主観的要素(要件)の緩和

暴利行為の判断の中の主観的要素は緩和される傾向があります。当事者(被害を受ける者)が,古い判例の中の困窮という状況には至ってない場合でも暴利行為と認めることがあります。

<主観的要素(要件)の緩和(※1)>

あ 主観的要素の緩和(全体)

相手方が窮迫まで至らなくても公序良俗違反を認める傾向がある
『い〜き』のような状況で公序良俗違反を認めた裁判例がある

い 畏怖・困惑

相手方の弱みにつけ入り畏怖・困惑させた
※東京高裁昭和53年7月18日

う 相手方の無知

※東京高裁昭和53年7月18日
※東京地裁平成17年9月27日

え 判断能力の低下

※東京地裁平成23年1月19日
※大阪高裁平成21年8月25日

お 従属状態

※最高裁昭和61年11月20日
※大阪地裁平成22年5月25日

か 心理的な抑圧状態

※名古屋地裁昭和58年3月31日

き 著しく不公正な方法

※最高裁昭和61年5月29日

6 暴利行為の客観的要素の判断基準(概要)

暴利行為の判定では,前記の主観的要素以外に客観的要素も考慮されます。
つまり,どの程度金額が異常である場合に無効となるのかということです。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|暴利行為の客観的要素(売買の代金額や違約金)の判断基準

7 暴利行為論の機能(無効にする範囲)

暴利行為として無効となった場合の法的な効果は,大きく,部分的な無効全部の無効に分けられます。
部分的な無効の場合は,契約の内容(代金額や違約金の金額)を裁判所が修正するということになります。
暴利行為に該当する場合に,一部無効とするのか全部無効とするのかは個別的事情によって裁判所が判断します。最近では全部無効を選択する傾向があります。

<暴利行為論の機能(無効にする範囲)>

あ 伝統的な暴利行為論

契約の効力を部分的に否定する
→取引内容を修正する機能があった

い 近時の暴利行為論

悪質な取引そのものから被害者を解放する
昭和50年代以降は契約を全部無効とするものが多い
※武田直大稿『暴利行為』/『別冊ジュリスト223号 民法判例百選Ⅰ 総則・物権 第7版』有斐閣2015年1月p33

本記事では,暴利行為として契約が無効となる理論の基本的な内容や判断基準について説明しました。
実際には,個別的な細かい事情の主張・立証の仕方によって判断が違ってきます。
実際に暴利目的の不当な内容の契約の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。