1 境界を判断する証拠・立証方法
2 証人・当事者尋問の供述内容
3 現地の検証に証人が立ち会う方法
4 証人による立証のハードル
5 鑑定の基本と鑑定事項の具体例
6 鑑定による立証のハードル
7 鑑定費用の負担と相場
8 鑑定に関するイレギュラー事項(裁判例)
9 (準)書証による立証
10 検証による立証
11 検証の実施における工夫や注意点

1 境界を判断する証拠・立証方法

境界確定訴訟では,最終的に,公法上の境界を判断(再現)します。
境界の判断では,いろいろな事情が考慮されます。
詳しくはこちら|境界の位置を判断(特定)する事情ごとの判断基準と立証方法
判断の元になる事情は,証拠による立証が必要です。
この点,立証方法にはいろいろな種類のものがあります。
本記事では,境界の判断に関する立証方法(証拠方法)について説明します。

2 証人・当事者尋問の供述内容

立証の代表的なものの1つは証人尋問や当事者尋問です。
重要な事情を知る(記憶にある)者に,法廷で話してもらうというものです。

<証人・当事者尋問の供述内容>

あ 直接証拠的な供述

ア 分筆の際の目撃状況
イ 売買の際に指示された境界
ウ 境界として先代から伝え聞いた内容(伝聞)

い 間接証拠的な供述

ア 占有状況
イ 管理状況
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p484

3 現地の検証に証人が立ち会う方法

証人による証言をより効果的にするために,現地に立ち会ってもらうという方法があります。
検証という証拠調べに立ち会うということです。
裁判所が,その場での尋問を認めることもあります。

<現地の検証に証人が立ち会う方法>

あ 発想

証人が現地で説明すると記憶の再現がより効率的・正確になる
裁判官が説明内容を把握しやすい

い 工夫した方法

証人が『検証』に立ち会う
検証現場で尋問する方法をとる
証人尋問だけは法廷で行うという方法もある
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p484

4 証人による立証のハードル

境界に関する証人尋問では,適している人がいても,当事者との利害関係が濃いケースがほとんどです。
ですから,証言の信用性はあまり高くならない傾向があります。

<証人による立証のハードル>

あ 証人が少ない

第三者的な立場の証人が比較的少ない
例=取引の仲介人

い 利害関係

証人となる者が存在しても
当事者の一方に強い利害を持つことが多い
→高い信用性を持つ証人はあまり存在しない
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p484

5 鑑定の基本と鑑定事項の具体例

境界の判断では鑑定を実施することが多いです。
面積の測量は大前提として,樹齢などの特殊な調査事項が追加することもあります。

<鑑定の基本と鑑定事項の具体例>

あ 鑑定の内容

裁判所が専門家を鑑定人として選任する
例=測量士・土地家屋調査士
鑑定人が鑑定事項(い)を調査する
鑑定人は調査・判断の結果を鑑定書として裁判所に提出する

い 鑑定事項の具体例

ア 対象地の植林の樹齢
イ 境界木の樹齢
ウ 面積の実測
当事者双方が主張する境界によるそれぞれの土地の実測面積
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p484

6 鑑定による立証のハードル

鑑定人として選任されるのは測量などに詳しい専門家です(前記)。
さらに,土地の境界の判断についての鑑定では,より高い専門性が要求される傾向があります。

<鑑定による立証のハードル>

あ 山林

山林の場合
→土地が広い+地形が複雑である
面積の実測には専門家の高度な技術を要する傾向がある

い 都市部

都市部の場合
→係争地が非常に狭いことが多い
正確な実測を要する傾向がある
→高度の技術を要する
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p484,485

7 鑑定費用の負担と相場

鑑定は専門性が高いので,ある程度の費用がかかります。
一般的な宅地のケースで30〜60万円程度となることが多いです。
この費用は,鑑定を申し立てた当事者が支払います。
判決に至れば,通常,原告と被告で費用を分担することになります。

<鑑定費用の負担と相場>

あ 鑑定費用の負担

鑑定を申し立てた当事者が鑑定費用を負担する
最終的に判決の中で負担すべき者と割合(金額)を定める

い 鑑定費用(金額)の相場

100坪以下の一般的な住宅地について
目安=30〜60万円程度
個別的事情により大きく異なることもある

う 現況測量の費用の相場(参考)

現況測量は鑑定よりも大幅に簡略化されている
鑑定よりも費用が低い
目安=10〜15万円程度

8 鑑定に関するイレギュラー事項(裁判例)

鑑定の遂行においていろいろな問題が生じることがあります。
問題の内容によっては,鑑定結果が使えなくなることもあります。
当事者(代理人弁護士)としては,鑑定書を作るプロセスで不当なことがないかをしっかり意識する必要があります。
また不合理なプロセスが発覚した場合は,裁判所が鑑定書を元に判断しないように主張すべきです。

<鑑定に関するイレギュラー事項(裁判例)>

あ 訴訟外の資料の利用

鑑定事項=山林の境界の実測
鑑定人が訴訟手続外で図面を入手した
この図面を資料として用いて鑑定書を作成した
→鑑定結果を証拠に採用しても違法ではない
※最高裁昭和31年12月28日

い 鑑定の基礎の信用性の否定

境界線の認定の基礎となった鑑定に疑問がある
→原判決に審理不尽,理由不備がある
※大阪高裁昭和51年10月15日

9 (準)書証による立証

主要な立証方法の1つとして書証や準書証があります。
要するに紙の資料を証拠として使うというものです。
公図や地図などの境界を直接に記載したものはほぼ必ず使います。
地上で撮影した写真や航空写真を使うことも多いです。

<(準)書証による立証>

あ 書証の実情

公図その他の地図が書証として用いられることが多い
現在や過去の(古い)写真が準書証として用いられることも多い

い 写真の種類

ア 一般的な地上の写真
イ 航空写真

う 正確性の程度

ア 公図・地図・図面
作成時期や作成経緯によって正確性が大きく異なる
イ 一般的な写真
撮影の場所(位置)や撮影時期がはっきりしないことが多い
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p485

10 検証による立証

立証方法の1つに検証というものがあります。
裁判官が直接現地に行って,実際に目で見るというものです。
境界の判断のためにはほぼ全件で実施します。

<検証による立証>

あ 検証の実情

ほぼ必ず実施される
現地の状況は事案全体の把握に大きな影響がある

い 山林の検証の特徴

山林の検証について
範囲が広く,地形が複雑である
→短時間で全体を把握することは困難である

11 検証の実施における工夫や注意点

検証は,裁判官が直接現地に行って直接状況を把握する貴重な機会です。
当日,現場で不備があると事情の把握が不十分になってしまいます。
そのため,事前に周到に準備をしておくべきです。

<検証の実施における工夫や注意点>

あ 検証前の効率化の工夫

効率よく検証を実施するために
あらかじめ検証の手順について関係者で打ち合わせておく
十分な準備をしておく(い)

い 検証の準備の例

ア 略図の作成
イ 必要な器材を容易しておく
例=木杭・ショベル
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p485,486

う 検証実施時の注意点

検証を実施する際
個々の事項の認定(え)に注意を払う
認定内容が正しく検証調書に表現されるようにする

え 認定内容の例

ア 山道
人の通った道か,けもの道か
イ 自然地形
尾根が続いているか,途切れているか
※藤田耕三ほか編『不動産訴訟の実務 7訂版』新日本法規出版2010年p486