1 無償での土地利用の法的扱いの種類と違い
2 土地の使用貸借と無償の地上権の認定基準
3 夫婦間の土地の無償使用の判断事例
1 無償での土地利用の法的扱いの種類と違い
土地の所有者以外が土地を無償で利用するケースの法律的な扱いは主に2種類に分けられます。
使用貸借と地上権です。
この2つの契約の方法と主な違いを整理します。
<無償での土地利用の法的扱いの種類と違い>
あ 使用貸借
ア 契約方法
無償で目的物を貸借する契約である
イ 効果
債権的な契約なので(使用借権の)譲渡はできない
借地借家法は適用されない
い 地上権
ア 契約方法
地上権の設定契約による発生する
イ 効果
地上権は物権なので,自由に譲渡できる
地上権者は地上権設定登記を求める権利がある
地上権が建物所有目的である場合
→『借地』として借地借家法が適用される
詳しくはこちら|建物所有目的の土地賃貸借は『借地』として借地借家法が適用される
2 土地の使用貸借と無償の地上権の認定基準
土地の無償の利用は,通常,親族などの特別な関係のある者の間でなされます。
契約書などをしっかり作っておらず,合意(約束)の内容がはっきりしないことがとても多いです。
関係が悪化した時に,使用貸借か地上権なのか,という点で意見が食い違いトラブルとなることがあります。
使用貸借と地上権の判別をする基準をまとめます。
要するに,地上権は権利がとても強いので,一般的には当事者は想定していないということです。
<土地の使用貸借と無償の地上権の認定基準>
あ 原則
合理的意思解釈として
当事者は自由な譲渡を想定していない
→原則として使用貸借である(と推定する)
い 例外
地上権であることが明白である場合
例;契約書に明記されている
→地上権と認定する
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p238
3 夫婦間の土地の無償使用の判断事例
実際のケースについて,最高裁が,使用貸借か地上権か,という判断を示した判例があります。
土地の所有者と利用者には夫婦という関係があった事例です。
前記の一般的な判断基準と同様の基準を示しています。
<夫婦間の土地の無償使用の判断事例>
あ 原則
夫婦間での土地の無償使用を許す関係
→使用貸借と推認する
い 例外
『特に強固な権利を設定したと認める特段の事情』がある場合
→地上権の設定と認める
※最高裁昭和47年7月18日
※『判例から学ぶ民事事実認定 ジュリスト増刊2006年12月』有斐閣p187