【借地条件のうち建物の構造の内容(堅固/非堅固の判断基準)】

1 建物の構造(堅固/非堅固の判断基準;総論)

建物に関する借地条件は、裁判所による変更手続の対象となります。
建物に関する借地条件の内容にはいろいろなものがあります。
詳しくはこちら|建物に関する借地条件の内容(基本的な分類)
その1つに『建物の構造』があります。
実際に借地条件の変更の裁判の対象となるケースのほとんどが建物の構造についてのものです。
具体的には『非堅固建物』に限定する借地条件です。
『堅固』や『非堅固』の区別にはハッキリしないところがあります。
本記事では、『堅固』の意味や『非堅固』との区別を中心に、建物の構造に関する借地条件の内容について説明します。

2 建物の構造と堅固性

建物の構造を『非堅固建物』に限定する借地条件はとても多いです。
実務では、借地条件変更のケースのほとんどが、非堅固建物所有から堅固建物所有目的に変更するものなのです。

建物の構造と堅固性

あ 建物の構造と堅固性

建物の構造としては
『堅固建物』と『非堅固建物』の区別がある
※借地法2条1項、3条

い 借地条件変更の裁判のシェア

実際の借地条件変更の大部分について
→『非堅固から堅固に変更する』ものである
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p216

3 堅固建物(非堅固建物)を規定する条文と典型例

『堅固建物』は旧借地法の条文に規定されている概念(用語)です。
典型例は、鉄骨鉄筋の堅牢性が十分に高い建物のことです

堅固建物(非堅固建物)を規定する条文と典型例

あ 堅固建物の条文上の例示

借地権ノ存続期間ハ石造、土造、煉瓦造又ハ之ニ類スル堅固ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ六十年、其ノ他ノ建物ノ所有ヲ目的トスルモノニ付テハ三十年トス
の建物
※借地法2条1項

い 典型例

ア 堅固建物の典型例 今日、堅固建物の典型例は鉄骨鉄筋コンクリート造りの、中高層ビルないしマンションであろう。
イ 非堅固建物の典型例 非堅固建物の典型例は木造建物である。
※澤野順彦編『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p216

4 堅固/非堅固の一般的判断基準

前記の鉄筋鉄骨の建物は『堅固』と容易に判断できるものです。
しかし、実際には『堅固建物』といえるかどうかがハッキリしないものも多いです。
この見解の対立が具体的トラブルに発展するケースもよくあります。
まずは、『堅固』と『非堅固』を区別する判断基準をまとめます。
ただ、やや抽象的な基準です。これだけで確実に判別できるとは限りません。

堅固/非堅固の一般的判断基準

思うに、堅固建物か非堅固建物かの区別の基準は、堅固建物と非堅固建物の借地法上の法律効果の違いが主として存続期間に現れることに鑑みて、建物の材質、規模、構造などから導き出される建物の堅牢性や耐久性さらに解体の難易性などを総合的に評価して判断するのが相当であろう。
※市川太志稿『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年5月p19

5 建物の種類ごとの判断の傾向

以下、よくある建物の構造ごとに、堅固か非堅固か、の判断の傾向を説明します。

(1)鉄筋・コンクリート造→堅固

鉄筋やコンクリートにより作られた建物は堅固建物の典型です。

鉄筋・コンクリート造→堅固

堅固建物に属すると考えて問題のないもの
鉄筋コンクリート造、コンクリートブロック造、鉄骨鉄筋コンクリート造
※市川太志稿『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年5月p19

(2)重量鉄骨造→原則堅固方向・組み立て式は非堅固方向

通常の鉄骨造、つまり軽量鉄骨ではない重量鉄骨造の建物は、原則的に堅固建物です。しかし、個別的な工法によっては非堅固と判断されることもあります。

重量鉄骨造→原則堅固方向・組み立て式は非堅固方向

あ 市川太志氏見解

ア 重量鉄骨→堅固方向 重量鉄骨を使用したいわゆる通常の鉄骨造の場合には、前記ののように解体の容易性が認められる特段の事情のない限り堅固建物と考えるべきである。
※市川太志稿『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年5月p20
イ 組み立て式+解体容易→非堅固方向 組立式解体が容易なもの―非堅固建物とされる場合が多い
※市川太志稿『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年5月p19

い 実務解説借地借家法→堅固方向

ア 重要鉄骨→堅固方向 重量鉄骨造り堅固建物に該当する場合が多いと思われるが、
イ 組み立て式+解体容易→非堅固方向 ボルト締めの組立式で、解体が容易なもの(工場や倉庫などに多い)は非堅固建物にあたる(最判昭48・10・5民集27巻9号1081頁、東京高判昭51・3・15判時824号72頁参照)。
※澤野順彦編『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217

(3)軽量鉄骨造・組み立て式→非堅固方向

軽量鉄骨の建物は、非堅固建物と判断される傾向があります。

軽量鉄骨造・組み立て式→非堅固方向

あ 軽量鉄骨→非堅固方向

軽量鉄骨造り(いわゆるプレハブ建築ヘーベル建築はこれにあたるだろう)は、多くの裁判例で非堅固建物と判断されている(東京高判昭59・12・27判時1158号203頁、その他、市川・前掲書20頁以下引用の裁判例参照)。
※澤野順彦編『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p216、217

い 市川太志氏見解→非堅固方向

これに対し、軽量鉄骨造の場合は、建物の堅牢性、耐久性、解体の容易性等からして非堅固建物と認定される場合が多い。
※市川太志稿『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年5月p20

(4)スチールハウス→非堅固方向

建築テクノロジーは常に進化し続けています。従来の枠組みに当てはめるのが難しいものも登場しています。その1つがスチールハウスです。堅牢性という点からは、従来の軽量鉄骨に近いと評価されています。そこで非堅固と判断される傾向があります。

スチールハウス→非堅固方向

近年、比較的薄い鋼板を(切断面が)L字型、コの字型又は方形に折り曲げて柱や梁として組み立てて軀体とする「スチールハウス」などと呼ばれる建物が出現しているが、堅牢性、耐久性等は軽量鉄骨造りとあまり変わらないと思われるので、非堅固建物にあたると解すべきであろう(今のところ、これに関する裁判例は公刊誌上では見当たらない)。
※澤野順彦編『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217

本記事では、「堅固建物」と「非堅固建物」の判断基準について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際に借地上の建物の分類(判定)など、借地に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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