【借地条件のうち建物の構造の内容(堅固/非堅固の判断基準)】
1 建物の構造(堅固/非堅固の判断基準;総論)
2 建物の構造と堅固性
3 堅固建物(非堅固建物)の意味と典型例
4 堅固/非堅固の判断基準
5 軽量鉄骨造の建物の堅固性判断
6 重量鉄骨造の建物の堅固性判断
7 『スチールハウス』の堅固性判断
1 建物の構造(堅固/非堅固の判断基準;総論)
建物に関する借地条件は,裁判所による変更手続の対象となります。
建物に関する借地条件の内容にはいろいろなものがあります。
詳しくはこちら|建物に関する借地条件の内容(基本的な分類)
その1つに『建物の構造』があります。
実際に借地条件の変更の裁判の対象となるケースのほとんどが建物の構造についてのものです。
具体的には『非堅固建物』に限定する借地条件です。
『堅固』や『非堅固』の区別にはハッキリしないところがあります。
本記事では,『堅固』の意味や『非堅固』との区別を中心に,建物の構造に関する借地条件の内容について説明します。
2 建物の構造と堅固性
建物の構造を『非堅固建物』に限定する借地条件はとても多いです。
実務では,借地条件変更のケースのほとんどが,非堅固建物所有から堅固建物所有目的に変更するものなのです。
<建物の構造と堅固性>
あ 建物の構造と堅固性
建物の構造としては
『堅固建物』と『非堅固建物』の区別がある
※借地法2条1項,3条
い 借地条件変更の裁判のシェア
実際の借地条件変更の大部分について
→『非堅固から堅固に変更する』ものである
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p216
3 堅固建物(非堅固建物)の意味と典型例
『堅固建物』は旧借地法の条文に規定されている概念(用語)です。
典型例は,鉄骨鉄筋の堅牢性が十分に高い建物のことです
<堅固建物(非堅固建物)の意味と典型例>
あ 堅固建物の条文上の例示
石造,土造,煉瓦造又はこれに類する堅固の建物
※借地法2条1項
い 堅固建物の典型例
鉄骨鉄筋コンクリート造の中高層ビル・マンション
う 非堅固建物の典型例
木造建物
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217
4 堅固/非堅固の判断基準
前記の鉄筋鉄骨の建物は『堅固』と容易に判断できるものです。
しかし,実際には『堅固建物』といえるかどうかがハッキリしないものも多いです。
この見解の対立が具体的トラブルに発展するケースもよくあります。
まずは,『堅固』と『非堅固』を区別する判断基準をまとめます。
ただ,やや抽象的な基準です。これだけで確実に判別できるとは限りません。
<堅固/非堅固の判断基準>
あ 堅固/非堅固の判断基準
『ア・イ』などを総合的に評価して判断する
ア 建物の堅牢性・耐久性イ 解体の難易度
い 堅固/非堅固の判断要素
『あ』の事情について
建物の材質,規模,構造などから導き出す
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p216
※市川太志『借地非訟事件の処理について』/『判例タイムズ967号』1998年p19
う 堅固/非堅固の区別の困難性
『堅固建物/非堅固建物』の区別について
現在では明確に示すことが困難となっている
5 軽量鉄骨造の建物の堅固性判断
以下,よくある建物の構造ごとに,『堅固建物』の判断の傾向を説明します。
まず,軽量鉄骨の建物は,非堅固建物と判断される傾向があります。
<軽量鉄骨造の建物の堅固性判断>
あ 軽量鉄骨造の建物の例
プレハブ建築
ヘーベル建築
い 裁判例の判断の傾向
多くの裁判例で非堅固建物と判断されている
※東京高裁昭和59年12月27日
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217
6 重量鉄骨造の建物の堅固性判断
重要鉄骨の建物は,原則的に『堅固建物』です。
しかし,個別的な工法によっては『非堅固』と判断されることもあります。
<重量鉄骨造の建物の堅固性判断>
あ 原則
重量鉄骨造の建物について
→堅固建物に該当する場合が多い
い 例外
ボルト締めの組み立て式で解体が容易なものについて
例;工場や倉庫に多い
→非堅固建物である
※最高裁昭和48年10月5日
※東京高裁昭和51年3月15日
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217
7 『スチールハウス』の堅固性判断
建築テクノロジーは常に進化し続けています。
従来の枠組みに当てはめるのが難しいものも登場しています。
その1つが『スチールハウス』です。
堅牢性という点からは,従来の軽量鉄骨に近いと評価されています。
目安としては『非堅固』と判断される傾向があるといえます。
<『スチールハウス』の堅固性判断>
あ 『スチールハウス』の意味
比較的薄い鋼板を折り曲げたものを柱や梁として組み立てる
→この工法で建てた建物のこと
い 堅固性の判断
堅牢性,耐久性は軽量鉄骨造に近い
→非堅固建物と判断される傾向である
※澤野順彦『実務解説 借地借家法 改訂版』青林書院2013年p217