1 債務者以外による抵当権の消滅|代価弁済・抵当権抹消請求・第三者弁済・消滅時効
2 抵当権の消滅時効の『期間』は20年
3 抵当権そのものの消滅時効の『援用』ができるのは『債務者・設定者』以外だけ
4 抵当権そのものの消滅時効の起算点は『滞納時』
5 抵当権そのものの消滅時効に『中断』はない
6 休眠担保権抹消|登記法上の手続

1 債務者以外による抵当権の消滅|代価弁済・抵当権抹消請求・第三者弁済・消滅時効

<事例>

抵当権の付いている不動産の譲渡を受けた
抵当権の設定が30年前と,非常に古い

主債務が滞納→消滅時効完成,となっていれば,消滅時効により抹消可能

(1)第三者による抵当権消滅

いわゆる『抵当物件の第三取得者』という状態です。
抵当権を抹消する方法として,『お金を払う』もの,払わないもの,がいくつかあります。

<第三者の金銭負担による抵当権抹消>

あ 金銭負担あり

ア 代価弁済
イ 抵当権消滅請求
ウ 第三者弁済

い 金銭負担なし

ア 消滅時効

(2)第三取得者による『抵当権そのもの』の消滅時効

一般的には『担保されている債権』

<被担保債権と抵当権(そのもの)の消滅時効>

あ 原則論

『被担保債権については消滅時効が完成していない(=消滅しない)』
→『抵当権はサブなので,これも消滅しない』

い 例外

第三取得者が消滅時効を主張する場合
『被担保債権の状態』とは関係なく『抵当権独自に消滅時効が進行する』

第三取得者は,被担保債権とは別に,『抵当権そのもの』の消滅時効を利用できる
※民法396条

2 抵当権の消滅時効の『期間』は20年

貸金返還請求権のような,一般的な債権は,原則として消滅時効の期間は10年間です(民法167条1項)。
現実には,多くの例外があります。
詳しくはこちら|債権の種類によっては短期消滅時効が適用される
この点,抵当権については,債権又は所有権以外の財産権に該当するので,消滅時効の期間は20年となります(民法167条2項)。

3 抵当権そのものの消滅時効の『援用』ができるのは『債務者・設定者』以外だけ

<抵当権そのものの消滅時効の援用権者>

あ 援用権者

『債務者』『抵当権設定者』以外の者

い 具体的な援用の可否

ア 抵当不動産を購入した者=第三取得者
援用できる
イ 抵当不動産を相続により承継した相続人
援用できない
理由;包括承継のため『債務者』or『設定者』という地位も承継している

抵当権自体の消滅時効を利用できる者は限定されています。
(主)債務者と抵当権設定者(=物上保証人)は援用ができないとされています(民法396条)。
要するに『抵当不動産を購入した者』だけが援用権者ということになります。

4 抵当権そのものの消滅時効の起算点は『滞納時』

一般的に,『権利を行使できる』時点から起算して20年間の経過により,消滅時効が完成します(民法166条1項)。
『権利の行使』=抵当権の実行,ができるタイミングは,『被担保債権の債務不履行』の時です。
つまり『被担保債権が滞納になった時点』です。
そうすると『分割払い』の場合は,金額によって『滞納時点』が細切れになっています。
しかし,一般的な金融機関の融資約款では,一部の滞納時点で期限の利益喪失が適用されるはずです。
そうすると,ローン・融資などの残額全額について,『滞納』となります。

5 抵当権そのものの消滅時効に『中断』はない

<物上保証人による『債務の承認』>

債務者以外=物上保証人・第三取得者が『債務の承認』
→消滅時効の『中断』にはあたらない
※最高裁昭和62年9月3日

一般的に(債務の)『承認』は,消滅時効の中断事由とされています(民法147条)。
しかし,『抵当権』(の負担)は『債務そのもの』ではありません。
あくまでも所有権という物権が抵当権という別の物権によって制限されている,という状態です。
そこで,『承認』という概念は妥当しない→適用されてない,と解釈されているのです。

6 休眠担保権抹消|登記法上の手続

長期間放置されている抵当権については,登記上『抹消』する特別な方法があります。
『休眠担保権の抹消』という手続です。
別に説明しています。
別項目;担保権者の相続人が所在不明であれば,判決なしでも単独抹消できる;休眠担保権抹消

条文

[民法]
(抵当権の消滅時効)
第三百九十六条  抵当権は、債務者及び抵当権設定者に対しては、その担保する債権と同時でなければ、時効によって消滅しない。