1 賃料増減額と相当期間の経過(基本)
2 借地の賃料増額の相当期間(肯定事例のまとめ)
3 借地の賃料増額の相当期間(否定事例)
4 借地の減額請求の相当期間(肯定事例)
5 借地の減額請求の相当期間(否定事例)
6 裁判上の和解の後の相当期間の特別扱い
7 裁判所の和解・調停の後の相当期間(事例)
8 賃料増減額の相当期間の目安

1 賃料増減額と相当期間の経過(基本)

賃料増減額請求が認められるためには賃料が『不相当』となっていることが必要です。
詳しくはこちら|賃料増減額請求(変更・改定)の基本
この『不相当』の中には『相当期間の経過』も含まれます。
まずはこの解釈の基本部分をまとめます。

<賃料増減額と相当期間の経過(基本)>

あ 賃料増減額請求の要件(概要)

賃料増減額の要件について
→賃料が『不相当』になったことである
※借地借家法11条1項

い 期間の経過

『あ』の『不相当』の判断について
『相当の期間の経過』(う)も含まれる

う 判例

現賃料が不相当でも相当の期間が経過していない場合
→増額請求はできない
※大判昭和7年8月17日

え 相当の期間の内容

契約成立or前回の賃料改定後,相当の期間が経過している
=借主が新たな賃料を余裕を持って受け入れられる程度である
具体的な目安となる期間は後記※2のとおりである
※幾代通ほか『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣p629

2 借地の賃料増額の相当期間(肯定事例のまとめ)

借地の賃料増額請求に関する相当期間が認められた事例をまとめます。

<借地の賃料増額の相当期間(肯定事例のまとめ)>

あ 共通事項

以下の契約成立or前回の賃料改定後の期間について
→賃料増減額請求を認めた

い 賃料改定を認めた裁判例
期間 土地利用の状況 裁判例
3年 具体的内容は不明 大判昭和8年7月5日
6年 東京日本橋のレストラン 東京地裁昭和38年7月5日
4年7か月 石川県所在の木造住宅 金沢地裁昭和38年9月18日
2年2か月 松山市所在の営業用建物(推定) 松山地裁昭和37年1月17日
1年4か月 工場 大阪地裁昭和36年4月13日
ほぼ毎年(※1) 仙台のホテル 仙台地裁昭和35年1月29日

※1 8年の間に7回

3 借地の賃料増額の相当期間(否定事例)

借地の賃料改定後6か月の増額請求について,相当期間が否定されています。

<借地の賃料増額の相当期間(否定事例)>

今回の増減額請求について
前回の増額の合意から6か月後であった
→『相当の期間』が経過していない
→増額請求を認めなかった
※大判昭和7年8月17日

4 借地の減額請求の相当期間(肯定事例)

借地の賃料改定後6か月の減額請求について,相当期間が認められています。

<借地の減額請求の相当期間(肯定事例)>

あ 事案

昭和5年4月
賃料を1坪あたり1か月約2円と合意した
その後地価が低下した
6か月後に借地人は減額請求をした
内容=1坪あたり1円40銭とする

い 裁判所の判断

減額を認めた
※大判昭和15年8月30日

5 借地の減額請求の相当期間(否定事例)

解約開始後1か月以内の賃料減額請求について,相当期間が否定されています。

<借地の減額請求の相当期間(否定事例)>

あ 事案

昭和6年12月22日
土地賃貸借契約を締結した
同月末に借地人は減額請求をした

い 裁判所の判断

短期間なので減額請求は認めない
※大阪地裁昭和8年9月19日

6 裁判上の和解の後の相当期間の特別扱い

裁判上の和解による賃料改定は特殊な扱いがあります。
その後の増減額請求の相当期間が認められない方向に働くのです。

<裁判上の和解の後の相当期間の特別扱い>

あ 合意の特殊性

裁判上の和解について
『い』の合意があるものとみなす

い 認定された合意の内容

相当期間中は賃料変更に相当する事情が生じても賃料を変更しない
※東京地裁昭和10年3月6日

7 裁判所の和解・調停の後の相当期間(事例)

裁判所の和解や調停で賃料を改定した後の増減額請求の事例を紹介します。
裁判所の関与しない賃料改定よりも相当期間が長めに要求されるのです。

<裁判所の和解・調停の後の相当期間(事例)>

あ 裁判上の和解後10か月

ア 事案
和解後10か月経過前において
借地人が減額請求をした
イ 裁判所の判断
裁判所は減額請求を認めなかった
※東京地裁昭和10年3月6日

い 調停成立後5か月

ア 事案
調停成立の5か月後において
借地人が減額請求をした
イ 裁判所の判断
減額請求を認めなかった
※東京地裁昭和11年12月21日

8 賃料増減額の相当期間の目安

賃料増減額請求の相当期間の判断にはいろいろなバリエーションがあります(前記)。
賃貸借の内容別に,大まかな相当期間の目安をまとめます。

<賃料増減額の相当期間の目安(※2)>

増額/減額 住宅用借地 営業用借地
増額 3〜5年 5〜7年
減額 2〜3か月 3〜6か月

※幾代通ほか『新版 注釈民法(15)債権(6)増補版』有斐閣p631,632