1 『仲介抜き行為』の手法×法的扱い→みなし報酬
2 『仲介抜き行為』×みなし報酬|相当額算定
3 『抜き行為』→みなし報酬|5割|判例
4 『抜き行為』→みなし報酬|8割|判例
5 『抜き行為』→みなし報酬|7割・6分の1
1 『仲介抜き行為』の手法×法的扱い→みなし報酬
不動産売買契約の解消の際に仲介手数料が問題となるケースはよくあります。
詳しくはこちら|売買契約解消×仲介手数料|全体|報酬請求権・相当額・算定
当事者が意図的に『仲介手数料』を回避する悪質な手法もあります。
仲介の『抜き行為』と呼ばれるものです。
まずは基本的事項をまとめます。
<『仲介抜き行為』の手法×法的扱い→みなし報酬>
あ 『仲介抜き』行為の手法
仲介業者の紹介によって知った当事者と,仲介業者を排除して直接取引すること
『仲介手数料』を逃れる目的で行われることが多い
い 法的扱い
条件成就を当事者が妨げた→報酬が発生する(みなし報酬)
報酬の算定は『相当額』となる
※民法130条,商法512条
2 『仲介抜き行為』×みなし報酬|相当額算定
みなし報酬を算定する方法・傾向を整理します。
<『仲介抜き行為』×みなし報酬|相当額算定>
あ 『相当額』算定の考慮要素
<抜き行為による仲介手数料の『相当額』算定傾向>
仲介業者の関与 | 『相当額』の算定傾向 |
先行契約解消への関与が大きい | →小さい |
後行契約成立への関与が大きい | →大きい |
い 『相当額』算定の大まかな傾向
ア 実質的完結ケース
売買契約締結直前で『抜いた』
→満額
イ 未完結ケース
仲介業者の不備が多かった
事後的な当事者の努力が大きかった
→5割程度
以上は,かなりおおまかな方向性・傾向をまとめたものです。
事案によって大きく結論が異なります。
いくつかの判例を紹介します。
3 『抜き行為』→みなし報酬|5割|判例
みなし報酬が5割と認められた事例を紹介します。
<『抜き行為』→みなし報酬|5割|判例>
あ 事案
買主(候補)と仲介業者が『媒介契約』を締結
一般媒介契約書の仲介抜き行為に関する特約
→『契約成立に寄与した割合に応じた報酬請求権が生じる』(相当額報酬請求権)
い 相当額報酬請求権の条項についての判断
相当額報酬請求権の条項は有効である
『仲介抜き』目的に限定されず,有効である
う 『相当額』の算定要素
ア 先行の契約が解消されたことへの関与の程度
先行契約の買主の融資が下りなかった理由への仲介業者の関与が大きい
→先行契約解消への関与が大きい
→『相当額』は小さい方法
イ 後行契約成立への関与の程度
後任の代理人の貢献度・成果が大きい
→後行契約成立への関与が小さい
→『相当額』は小さい方向
え 結論的な判断
『相当額』=本来の仲介手数料の『5割』
理由;『相当額』が低くなる個別事情が重なっていた
※東京地裁平成24年11月16日
4 『抜き行為』→みなし報酬|8割|判例
みなし報酬が8割と認められた事例を紹介します。
実質的には4割とも言えます。
<『抜き行為』→みなし報酬|8割|判例>
あ 事案
売主・買主が(単独の)仲介業者を通して売買契約締結
交渉における代金額は3400万円とほぼ合意されていた
売主・買主が,『仲介手数料を逃れる目的』で仲介業者抜きで,直接売買契約を締結した
後行の売買代金額は3280万円
↑これは先行の売買代金額3400万円から『媒介手数料相当額120万円』を控除したもの
い 裁判所の判断
『相当額』=法律上の仲介手数料限度額の約8割
本来『両手』(両手数料)と考えると『4割』と言える
※岡山地裁平成15年1月15日
5 『抜き行為』→みなし報酬|7割・6分の1
抜き行為のみなし報酬は個別的な事情が大きく影響します。
平均的相場を離れた判例を紹介します。
<『抜き行為』→みなし報酬|7割・6分の1>
あ 7割認定事例
『相当額』=本来の仲介手数料の7割
※大阪地裁昭和55年12月18日
い 6分の1認定事例
『相当額』=本来の仲介手数料の6分の1
※東京地裁昭和56年6月29日