1 公道や公有地の時効取得
2 公道・公有地の時効取得の可否(基本)
3 埋立地の取得時効を認めた判例
4 公道・公有地の時効取得の典型例
5 私人が公有地を占有する状況の典型例
6 畦道から駐車場への変化による公用廃止(肯定裁判例)

1 公道や公有地の時効取得

私人(一般の方)が公道や公有地(公物)を長期間占有するというケースもあります。この場合に時効取得が成立するかどうかという問題があります。
本記事ではこの解釈論について説明します。

2 公道・公有地の時効取得の可否(基本)

一般の民有地であれば,長期間占有することにより取得時効により所有権を得られることになります。
しかし,公道などの公有地を私人が長期間占有した場合には,原則として時効取得は認められません。

<公道・公有地の時効取得の可否(基本)>

あ 国有地の時効取得(原則=否定)

国有地(公物)について
例=道路,河川敷
行政財産には私権が及ばない
公用廃止によって私物にならない限り,私人による取得時効の対象とならない
※大判昭和10年2月1日(官有道路)
※大判昭和4年12月11日(下水敷地)

い 公物の時効取得(例外=肯定)

『ア・イ』の両方を満たす場合
黙示的に公用が廃止されたといえる
→時効取得の対象となる
ア 公共用財産としての形態・機能を喪失していた
イ 他人の占有により,現実的に公共目的が害されていなかった
※国有財産法3条,18条1項
※最高裁昭和51年12月24日(水路)
※最高裁平成17年12月16日(水路・後記※1)

う 地方自治体の所有地

地方自治体の所有地について
→法律上の規定は国有地と同様である
→国有地と同様の扱いになると思われる
※地方自治法238条1項,238条の4第1項

3 埋立地の取得時効を認めた判例

国が所有する土地について,私人の時効取得を認めた判例の内容を説明します。
海洋の埋立工事が行われ,この時点で陸地となったので,まずは国の所有という扱いになりました。本来であればこの時点で公有水路埋立法の許可を得るのですが,実際には許可を得ないままの状態で放置されました。許可がない場合には法律上,原状回復が義務付けられます。陸地から海洋に戻すということです。
しかし,長期間放置されている間に私人の占有が継続していました。そこで,例外的な扱いとなる事情(前記)を満たし,取得時効が認められました。

<埋立地の取得時効を認めた判例(※1)>

あ 事案

海洋(公用水路)の埋立工事が行われた=陸地ができた
長年の間,公有水面埋立法に基づく許可がなされなかった

い 公共用財産としての性質

埋立地が事実上公の目的に使用されることもなく放置された
公共用財産としての形態,機能を完全に喪失した
埋立地について,他人の平穏かつ公然の占有が継続した
占有により実際上公の目的が害されるようなこともなかった
→公共用財産として維持すべき理由がなくなった

う 法的扱い(結論)

公有水面埋立法に基づく原状回復義務の対象とならなくなった
土地として私法上所有権の客体になる
→取得時効の対象となる
※最高裁平成17年12月16日

4 公道・公有地の時効取得の典型例

公有地の時効取得が認められる典型例をまとめます。

<公道・公有地の時効取得の典型例>

公道の一部について人・自動車が実際に通ることはない
ここに私人が塀などを建てて庭として使っている
平穏に10年(20年)が経過している
※寳金敏明『里道・水路・海浜−長狭物の所有と管理−4訂版』ぎょうせいp73〜

5 私人が公有地を占有する状況の典型例

私人が公有地を占有するケースはある程度パターンがあります。
なお,時効取得が認められるかどうかは別問題です(前述)。
ここでは『私人による占有』が生じやすいシーンを整理します。

<私人が公有地を占有する状況の典型例>

あ 概要

私人が公有地を取り込んで占有する

い 占有の態様|例

ア 田畑
イ 家屋の敷地

う 公有地|例

ア 里道
イ 公共用水路
ウ 公道のうち舗装されていない部分
エ 斜面
法面・崖地

6 畦道から駐車場への変化による公用廃止(肯定裁判例)

実際に公用廃止が認められた具体的事案はとても参考になります。
裁判例の事案と判断を紹介します。

<畦道から駐車場への変化による公用廃止(肯定裁判例)>

あ 20年間の占有継続

Aが甲土地を所有していた
乙土地は甲土地に隣接して,国が所有していた
乙土地は,田畑の耕作のための公共用通路や旧道と一体とした通路(畦道)として利用されていた
Aは,甲土地・乙土地を一体として,自己の所有地であると思って,駐車場として利用していた
Aが乙土地を占有してから20年が経過した

い 現実的な公用(機能)の判断

乙土地は畦畔としての形態・機能を喪失していた
周辺の土地の利用状況から考えても原状回復は困難だった

う 公用廃止の判断

黙示の公用廃止があった
→取得時効の成立を認める
※東京地裁平成21年9月15日

本記事では,公道や公有地の時効取得について説明しました。
実際には個別的な事情によって公用廃止の判断が大きく違ってきます。
実際に公道や公有地の時効取得の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。