【境界標(石・杭)の設置には隣地所有者の承諾が必要だが裁判もできる】

1 境界標の設置における隣地所有者の承諾
2 境界標の設置を訴訟で請求する方法
3 単独での境界標設置ができる前提条件
4 境界標の材料(材質)や大きさの判断
5 境界標設置と筆界の特定の関係

1 境界標の設置における隣地所有者の承諾

土地の境界には目印を設置することが合理的です。
通常,人工の石(杭)を設置します。これを『境界標』と呼びます。
境界標の設置の際には接する土地の所有者全員が関わる必要があります。
そのため,一部の土地の所有者が協力しない場合にはそのままでは境界標を設置できません。
そこで,民法上,境界標を設置する請求が認められています。

<境界標の設置における隣地所有者の承諾>

あ 境界標設置における承諾の必要性

境界線上に境界標を設置する場合
→隣地所有者の承諾が必要である
※民法223条の趣旨
※岡山地裁昭和35年8月23日

い 境界標設置の請求権(条文規定)

(境界標の設置)
土地の所有者は、隣地の所有者と共同の費用で、境界標を設けることができる。
※民法223条

2 境界標の設置を訴訟で請求する方法

境界標の設置を,訴訟で請求する方法については2とおりの見解があります。
境界標の設置自体を求めて提訴するという方法が一般的です。
これとは別に,訴訟をしなくても単独で境界標を設置できるという見解もあります。

<境界標の設置を訴訟で請求する方法>

あ 協力を求める訴訟による見解(※1)

訴訟において隣地所有者に協力を求める
→裁判所が境界標の材質・場所を決める
※東京地裁昭和39年3月17日

い 費用負担のみを請求する見解

一方の土地の所有者により単独で境界標を設置できる(後記※2

3 単独での境界標設置ができる前提条件

隣地所有者の関与なく,単独で境界標を設置することを認める見解があります(前記)。
この見解は,その前に境界確定訴訟の判決が確定していることを条件としています。
筆界特定手続による判断がなされた状態では,単独での境界標設置を認めていません。

<単独での境界標設置ができる前提条件(※2)

あ 境界確定訴訟の判決あり

境界確定訴訟の確定判決がある場合
→意思擬制ができる
→境界標を単独で設置する
※民事執行法174条1項
→境界標の設置費用の分担を請求する
※川島武宣ほか編『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p356参照

い 筆界特定の判断あり

『筆界特定』には確定判決のような『意思擬制』の効果はない
→原則通り,隣地所有者の承諾が必要となる
※平成17年12月6日法務省民二第2760号通達第7『129』項

う 注意

前提条件に関わらず,単独での境界標設置を認めない見解もある(前記※1

このように筆界特定制度は(境界確定訴訟と比べて)効果として不十分な点があるのです。これ以外にもいくつかの問題点があります。
詳しくはこちら|筆界特定制度|問題点|境界標設置・未確定状態|無期限・誤認誘発

4 境界標の材料(材質)や大きさの判断

一般的な見解では,境界標の設置を求める訴訟において,裁判所が境界標の設置について判断します(前記)。
判断する内容は,境界標の設置する位置や材質や大きさなどです。
特に,境界標の材質や大きさについては裁判所に広い裁量があります。

<境界標の材料(材質)や大きさの判断>

あ 協議と訴訟

境界標の材料(材質)や大きさの選択について
協議で決まらない場合は,裁判所が判決の中で定める

い 裁判所の判断要素

土地の状況,付近における慣習,費用などを考慮して適切な材料を選ぶ

う 裁判所の判断の例

花崗岩の5寸角,長さ5尺を選択した
※東京地裁昭和39年3月17日

5 境界標設置と筆界の特定の関係

境界標は,当然,決まった筆界(公法上の境界)の位置に設置します。
つまり,筆界が特定されていることが前提条件です。
逆に,境界標があっても,筆界が決まっていない(意見が食い違っている)ケースはあります。
境界標があれば,これに接する土地所有者の間で意見が一致した可能性があります。
しかし,仮に境界についての意見が一致していても,筆界が決まったとは限りません。

<境界標設置と筆界の特定の関係>

あ 境界標設置請求の前提

境界標は筆界(公法上の境界)上に設置する
→筆界が特定されている(特定済みである)ことが前提である
具体的には,筆界について争いがないor判決として確定していることである
※川島武宣ほか編『新版 注釈民法(7)物権(2)』有斐閣2007年p356

い 境界標(当事者の合意)と筆界特定の関係

隣接する土地所有者が合意して境界を定めた(境界標を設置した)
→筆界(公法上の境界)が特定するわけではない
境界標は判断材料の1つという位置づけである
※最高裁昭和31年12月28日
詳しくはこちら|境界の位置を判断(特定)する事情ごとの判断基準と立証方法

本記事では,境界標の設置の請求や承諾について説明しました。
実際には,複数の見解があり,具体的事案によって,結論が変わることがあります。
実際に土地の境界に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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