【一般建物解体・行政代執行|建築基準法の除却・代執行】
1 空家問題解消×行政|勧告
2 空家問題解消×行政|勧告からの措置命令
3 空家問題解消×行政|ストレート措置命令
4 空家問題解消×行政|解体|行政代執行
5 行政による空家解体|略式代執行|趣旨
6 行政による空家解体|略式代執行|内容
1 空家問題解消×行政|勧告
本記事では,放置された空家の解消に向けたの対応を説明します。
法的な制度としては,最初の段階では『勧告』を行います。
『勧告』の手続についてまとめます。
<空家問題解消×行政|勧告>
あ 劣化
建築物・敷地・建築設備の劣化が進んでいる
例示=損傷,腐食など
い 危険・有害のおそれ
放置すれば次のいずれかとなる『おそれ』がある
ア 著しく保安上危険となるイ 著しく衛生上有害となる
う 勧告
ア 概要
『あ・い』の両方に該当する場合
→『特定行政庁』は次の『勧告』をできる
イ 勧告の内容
除却・移転・改築・使用中止・使用制限など
ウ 勧告の相手
建築物・敷地の所有者・管理者・占有者
※建築基準法10条1項
2 空家問題解消×行政|勧告からの措置命令
空家に関する『勧告』の次のステップとして『措置命令』があります。
<空家問題解消×行政|勧告からの措置命令>
あ 前提事情
次のすべての事情に該当する
ア 勧告の相手が勧告内容の措置を取らないイ 正当な理由がないウ 勧告内容を実現する『特別な必要性』がある
い 措置命令
行政は『措置命令』ができる
内容は『勧告』と同じものである
例;除却命令
※建築基準法10条2項
措置命令の内容は『勧告』と同じです。
いくつか種類があります。
具体的には『除却命令』や『使用中止命令』ということになります。
3 空家問題解消×行政|ストレート措置命令
行政は『勧告の後に措置命令』を出すのが通常です(前記)。
この点,例外的に『勧告なしで措置命令を出す』方法もあります。
これについてまとめます。
<空家問題解消×行政|ストレート措置命令>
あ 前提事情
建築物・敷地・建築設備が次のいずれかに該当する
ア 著しく保安上危険であるイ 著しく衛生上有害である
い 措置命令
ア 概要
『あ』に該当する場合
→特定行政庁は次の『措置命令』ができる
事前の『勧告』は不要である
イ 措置命令の内容
除却・移転・改築・使用禁止・使用制限など
ウ 措置命令の相手
建築物・敷地の所有者・管理者・占有者
※建築基準法10条3項
4 空家問題解消×行政|解体|行政代執行
空家問題解消のための行政の制度として『行政代執行』があります。
最終的に行政が自ら『建物解体』をするというものです。
行政代執行についてまとめます。
<空家問題解消×行政|解体|行政代執行>
あ 不履行
『措置命令』の相手がこれに応じない
い 実現可能性・公益性
次のいずれにも該当する
ア 他の手段によつてその履行を確保することが困難であるイ その不履行を放置することが著しく公益に反する
う 行政代執行
『あ・い』に該当する場合
→行政代執行ができる
※行政代執行法2条,3条
詳しくはこちら|行政代執行|基本・手続|『命令』が前提・裁判所不要・罰則との関係
5 行政による空家解体|略式代執行|趣旨
空家解体などの『行政代執行』の制度には不都合もあります。
不都合を解消する簡略的な手続もあります。
簡略版の制度が作られた趣旨について最初にまとめておきます。
<行政による空家解体|略式代執行|趣旨>
あ 原則論
所有者などの所在が不明の場合
→一般的には『管理人選任』が必要となる
(別記事『妨害予防・管理人選任』;リンクは末尾に表示)
い 手続の簡略化
『あ』の方法は,一定の時間的・費用的コストを要する
→行政代執行では『簡略化した制度』が作られている
6 行政による空家解体|略式代執行|内容
行政代執行を簡略化した『略式代執行』の手続についてまとめます。
<行政による空家解体|略式代執行|内容>
あ 前提事情
次のすべてに該当する
ア 措置命令の相手を確知することができないイ 違反を放置することが著しく『公益に反する』
い 略式代執行
行政は自ら措置内容を実行することができる
『事前に措置命令を発令する』というプロセスは不要である
※建築基準法10条4項,9条11項
一般の行政代執行,略式代執行のいずれも『公益性の要件』が必要です。
これは実務上大きなハードルと言えます。
新たな制度でこのハードルが解消されています。
これについては別記事で説明しています。
(別記事『一般建物/空家解体・行政代執行・比較』;リンクは末尾に表示)