【月面や宇宙空間を利用するアイデアと国際的ルールの抵触(宇宙条約など)】

1 月面や宇宙空間を利用するアイデアと国際的ルール

以前から人類の宇宙開発は進んでいて、今後も発展することが楽しみです。
宇宙を活用する楽しいアイデアはいろいろあります。これについて、どんな国際的なルールがあるのか、ということも気になります。
本記事では、月面やそれ以外の天体や宇宙空間を利用するアイデアの具体例と、これに関する国際的ルールについて説明します。
宇宙空間の利用に関する国際的ルールの主なものは宇宙条約と月協定です。
詳しくはこちら|宇宙・天体の利用に関する国際的ルール(宇宙条約・月協定)
本記事では、主に宇宙条約の内容を元にして説明します。

2 月・火星などの星から採取物を地球に持ち帰るアイデア

アイデアの具体例として、月や火星などの星から物質を採取してこれを地球に持ち帰るというものがあります。実際に地球以外の星に存在する物質の分析が行われています。

月・火星などの星から採取物を地球に持ち帰るアイデア

月、イオ(衛星)や火星(惑星)にある物質を採取して地球に持ち帰る
→物質の分析などを行う
→研究として役立てる

3 宇宙空間に存在する物の権利

天体自体は誰(どの国家)の所有(主権)にも属さないとされています(宇宙条約2条)。
その一方で、天体・宇宙空間の科学的調査、や、天体への立ち入り、については自由とされています(宇宙条約1条)。
ですから、原則的に、月(などの天体)から土砂・塵・岩石を採取し、地球に持ち帰ること自体は禁止されていません。

4 月面のヘリウム3を地球に持ち帰るアイデア

同じように天体の物質を持ち帰るアイデアの中でも、単なる研究ではなく、経済的な目的のものもあります。一例として、月面のヘリウム3をエネルギー源として用いる発想があります。

月面のヘリウム3を地球に持ち帰るアイデア

あ ヘリウム3の活用アイデア

地球上(自然界)には、ヘリウム3はほとんど存在しない
月面にはヘリウム3が大量に存在する
月面のヘリウム3を大量に採取して地球に持ち帰る
→発電に用いる

い ヘリウム3の物理的特性

安定的なヘリウムは質量数が2である
放射性同位体で質量数が3のものもある
これをヘリウム3と呼ぶ
核融合により大きなエネルギー取り出す技術が提唱されている

5 経済的利用と国際法との抵触

天体の探査と利用については国際的に平等であることが求められ、国際法に従う必要があります(宇宙条約1条)。
経済的な利用であり、その利益も特定の国家や事業者が享受する、というスタイルは、この平等性に反することになります。
また月協定では月に存在する天然資源を人類の共同財産と宣言しており、資源開発の際には、国際制度を設立することとなっています(月協定11条1項、5項)。
行うとすれば、国家間の(国際的な)プロジェクトとして、運用者・運用方法・利益配分について明確に合意した上で遂行する、ということになりましょう。

6 天体の地表(土地)を利用するアイデア

天体から物質を持ち帰る方法以外にも、天体を利用するアイデアはあります。月面(星の土地・地表)を利用する方法はいろいろと考えられています。

天体の地表(土地)を利用するアイデア

あ 保管場所としての利用の例

月面を機材置場、倉庫として使う

い 標的としての利用の例

月面に槍を放るアイデア(プロジェクト)

7 月面利用と宇宙条約の抵触に関する見解

天体自体は誰(どの国家)の所有(主権)にも属さないとされています(宇宙条約2条)。
その上で、天体の探査・利用については平等の基礎の上で国際法に従うことが必要です(宇宙条約1条)。
月面を物資置場とするアイデアは、経済的な利用であり、その利益も特定の政府(国家)や事業者が享受する、ということになります。宇宙条約1条に反する可能性があります。
仮に月の裏側(地球から見えない位置)であれば弊害はなさそうですが、利益の独占という意味で宇宙条約に抵触する可能性があります。
現実には月面利用に関する違法性の判断(先例・判例)の蓄積がありません。いろいろな見解がありえます。

月面利用と宇宙条約の抵触に関する見解

あ 適法という見解

=『利用』に当たらない・『平等の基礎』『国際法』に反しない
ア 月面に設置(放る)物体がごく小さい→影響がほぼゼロイ 特定のエリアを占有(撤去容易)である

い 違法という見解

=『利用』に当たる・『平等の基礎』『国際法』に反する
ア 月面に設置(投下)した物体(物質)が月面の環境に影響を与える(可能性がある)イ 特定の民族・宗教における感情を害する

8 国際的な合意を得て遂行する方法の例

天体・宇宙空間の利用は平等の基礎の上に国際法に従う必要があります(宇宙条約1条)。
そこで国際的な了解のもと行うことが望ましいです。

国際的な合意を得て遂行する方法の例

国際的プロジェクトとして、運用者・運用方法・利益配分について明確に合意した上で遂行する
獲得した(研究用)観測データは国際的に共有する

9 宇宙空間と各国の法規制の限界(概要)

以上の説明は天体や宇宙空間の利用に関する国際的ルールについてのものでした。
一方、各国(特定の国家)のルール(法律)を考えると、宇宙空間には適用されません。国家の主権(統治権)の範囲外だからです。
とはいっても、例えば、人工衛星の中にあるサーバーとインターネットをつなげてオンラインカジノが行われたような場合には特定の国にいる人間の操作が関与していることになります。単純に宇宙空間で完結している行為といえるかどうか、という問題も出てくるのです。
詳しくはこちら|宇宙空間と各国の法規制の限界(月面での仮想通貨マイニングなど)
本記事では、月面や宇宙空間を利用するアイデアと、これに関する基本的な国際的ルールについて説明しました。
月の有効活用を含めて宇宙開発が進み、人類の知的探求やその他の役に立つことにつながると良いと思います。

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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