【合意書の条項の種類|債権回収の減額譲歩・2種類の条項|みなし贈与→課税】
1 支払を条件とする減額譲歩→和解には2パターンの方式がある
事例設定
ある取引についてトラブルになっている
支払額について、それぞれの言い分があって、食い違いがある
Aは100万円を請求している
Bは60万円だと主張している
Aの考え
『Bがきちんと払ってくれるのであれば、60万円まで下げることに応じても良い』
『単純に金額を下げるだけ、というのはしたくない』
弁護士が扱う交渉案件において、金額について争いがある、という事例は非常に多いです。
請求側としては、早期に・スムーズに支払いがなされるのであれば、金額については譲歩(減額)しても良い、と考える状況もあります。
一方で、金額だけ譲歩させられて、その後払われないのであれば無駄な譲歩となります。
そこで、一定の工夫が必要となります。
相手方の支払いを条件として譲歩するケースにおける工夫のうち、典型的なものをまとめておきます。
支払い(履行)を条件とする譲歩、の例
あ 支払いと同時に合意(書面調印)を行う
席上交付と呼ぶこともあります。
い 書面(和解書などの条項)において、次のいずれかの方式をとる
ア 債務額が100万円であることを確認する+(一定期限までに)60万円の支払いがなされた場合に残額を免除するイ 債務額が60万円であることを確認する+(一定時期までに)60万円の支払いがない場合に、違約金40万円が生じる※条項における表現として、このまま用いるわけではありません。
2 支払を条件とする和解条項ではみなし贈与→贈与税課税となることがある
事例設定
次の和解条項により和解が成立した
『債務額が100万円であることを確認する』
『60万円の支払いがなされた場合に残額を免除する』
↓
後日和解内容どおりに60万円が支払われた
この場合、『40万円の債務免除』が生じたことになります。
一般的に、債務免除についてはみなし贈与となり、贈与税の対象となります(相続税法8条)。
しかし、質問内容のような紛争の解決としての和解の中での免除は、一般的な債務免除とは違う性質があります。
理論的に、どちらかの主張額が正しいとも言い切れない、ということが通常です。
この例では、債務額が100万円であることの確認自体が、理論的に導かれた純粋に適正な金額、というわけではありません。
むしろ、当事者が納得した金額は60万円の支払いと言えましょう。
そこで、税務上、一般的な債務免除と同列に扱うのは、却って不合理です。
一般的にはみなし贈与は適用されないことになります。
みなし贈与と認定されるリスクを完全に払拭するためには、条項を他の形式(債務額確認+違約金設定方式)とするのも1つの方法でしょう。
3 和解条項のバリエーションを整理
訴訟外でも訴訟における和解交渉でも、細かい条件設定の提案の交換が中心になります。
和解条項の種類について整理しておきます。
和解条項の類型
・効力条項
実体上の効力を有する条項
例;権利、義務の確認、発生、変更、消滅、条件、期限、特約
・任意条項
・道義条項
精神条項と言うこともあります。
効力条項の分類
あ 訴訟に限らない一般的な効力条項の例
・給付条項
・確認条項
・形成条項
・付款条項
・特約条項
・清算条項
い 訴訟上の和解プロパーの効力条項の例
・関連事件の処理条項
・訴訟費用の負担条項
付款、特約条項の分類
あ 付款条項
合意の効果を特に制限するために付加された条件や期限
・条件の例
停止条件、解除条件、懈怠約款、失権約款、先給付、引換給付、選択権の行為
・期限の例
確定期限、不確定期限
い 特約
強行法規以外の実体法に定めのない事項について当事者が合意した条項
参考情報
月報司法書士14年4月号p74
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
条文
[相続税法]
第8条 対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
1.債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
2.債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受又は弁済がなされたとき。


