【債権回収不能や債務免除→みなし贈与・貸倒処理・連帯納付義務】

1 債務免除は贈与税の対象となる
2 債務免除を含めて,贈与税は受贈者だけでなく,贈与者連帯納付義務を負う
3 債務免除→贈与税連帯納付義務,に配慮したの条項作成上の工夫
4 債務免除→『資力喪失』が理由→みなし贈与の例外
5 債権が回収不能となったら,貸倒れとして,所得税,消費税の控除ができる

1 債務免除は贈与税の対象となる

<事例設定>

個人間のお金の貸し借りに関して,トラブルになり,最終的に話し合いで解決した
そして,『和解書』として,取り決め内容を記録にした
条項の1つに『債務を免除する』というものがある

債務免除ということは,免除した方は損失を被り,免除を受けた方は利益を得る,という利益状況です。
利益が無償で移転したと言えます。
つまり,無償での財産移転贈与,と同じ構造です。
そこで,税務上は贈与と同様に扱われることになります。
みなし贈与という制度です(相続税法8条)。

2 債務免除を含めて,贈与税は受贈者だけでなく,贈与者連帯納付義務を負う

贈与税の納税義務者は受贈者です。
無償で利益を得た者が,得た利益の中から納税する,という,合理的な制度です。
ところが,落とし穴があります。
利益を失った者(=贈与者)についても,連帯納付義務を負わされます(相続税法34条4項)。
利益を失った上,さらに納税義務も負わされる,ということが生じ得るのです。
みなし贈与の制度をまとめておきます。

<みなし贈与の適用;まとめ>

・貸主=免除する者=利益を失った者=贈与者に該当→連帯納付義務
・借主=免除を受けた者=利益を得た者=受贈者に該当→納税義務

3 債務免除→贈与税連帯納付義務,に配慮したの条項作成上の工夫

<発想>

債務免除をしただけでも損する(譲歩した)
これに加え,仮に相手が納税しないと,贈与税の連帯納付義務を負うとダブルショックとなる
贈与税連帯納付義務は回避したい

仮に,贈与税納税を(停止)条件として債務免除をするとしたいところですが,この場合,納税前は債務免除がまだ不確定です。
債務免除が不確定なので,みなし贈与もまだ不確定の状態です。
つまり,贈与税が発生していない,ということになります。
結局,納税できない状態ということです。
納税を条件とするは無理な条件,ということになります。
そこで,条件の方向を逆にします。

<連帯納付義務を回避した和解条項>

『仮に免除後の一定期間内に納税しなかったら,免除を撤回する』
法的には贈与税納税を解除条件とするという意味です。

これであれば,納税しない限りは債務免除をキャンセルできることになります。

4 債務免除→『資力喪失』が理由→みなし贈与の例外

債務者が無資力のため,現実的に払ってもらえない=債務免除するしかない,という状況もビジネスの世界では生じます。
この場合に,債権者としては経済的なダメージを受けます。
ここで,債務免除→みなし贈与→贈与税の連帯納付義務,という流れで,債権者が,さらに納税義務,というダメージを受けるのは非常に不合理です。
そこで,債務者の資力喪失が原因であれば,みなし贈与,は適用されないことになります(相続税法8条ただし書)。

5 債権が回収不能となったら,貸倒れとして,所得税,消費税の控除ができる

所得税,消費税は,発生主義です。
債権として発生した時点で課税されるのです。
つまり,代金を実際にもらったか,まだもらっていないか,ということは原則として関係ないのです。
そうすると,正常に代金を回収できたら問題無いですが,事後的・結果的に回収できなかった,という場合に不合理な状態となります。
『もらっていない金銭』の一定割合を納税する,という状態です。
そこで,このような場合には,一定の手続きにより,所得税,消費税の算定上,売上から回収不能額を控除できることとなっています(所得税法51条2項,64条1項,所得税基本通達51−10〜51−13,消費税法39条,消費税法施行令59条,消費税法施行規則18条,19条,消費税法基本通達14−2−1)。

条文

[相続税法]
第8条 対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で債務の免除、引受け又は第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合においては、当該債務の免除、引受け又は弁済があつた時において、当該債務の免除、引受け又は弁済による利益を受けた者が、当該債務の免除、引受け又は弁済に係る債務の金額に相当する金額(対価の支払があつた場合には、その価額を控除した金額)を当該債務の免除、引受け又は弁済をした者から贈与(当該債務の免除、引受け又は弁済が遺言によりなされた場合には、遺贈)により取得したものとみなす。ただし、当該債務の免除、引受け又は弁済が次の各号のいずれかに該当する場合においては、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。
1.債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、当該債務の全部又は一部の免除を受けたとき。
2.債務者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その債務者の扶養義務者によつて当該債務の全部又は一部の引受又は弁済がなされたとき。

(連帯納付の義務等)
第34条 
1〜3(略)
4 財産を贈与した者は、当該贈与により財産を取得した者の当該財産を取得した年分の贈与税額に当該財産の価額が当該贈与税の課税価格に算入された財産の価額のうちに占める割合を乗じて算出した金額として政令で定める金額に相当する贈与税について、当該財産の価額に相当する金額を限度として、連帯納付の責めに任ずる。
5〜8(略)

[所得税法]
(資産損失の必要経費算入)
第五十一条 (略)
2  居住者の営む不動産所得、事業所得又は山林所得を生ずべき事業について、その事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権の貸倒れその他政令で定める事由により生じた損失の金額は、その者のその損失の生じた日の属する年分の不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上、必要経費に算入する。
3〜5(略)
(資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例)
第六十四条  その年分の各種所得の金額(事業所得の金額を除く。以下この項において同じ。)の計算の基礎となる収入金額若しくは総収入金額(不動産所得又は山林所得を生ずべき事業から生じたものを除く。以下この項において同じ。)の全部若しくは一部を回収することができないこととなつた場合又は政令で定める事由により当該収入金額若しくは総収入金額の全部若しくは一部を返還すべきこととなつた場合には、政令で定めるところにより、当該各種所得の金額の合計額のうち、その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。
2〜3(略)

[消費税法]
第39条 事業者(第9条第1項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が国内において課税資産の譲渡等(第7条第1項、第8条第1項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)を行つた場合において、当該課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権につき更生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたことその他これに準ずるものとして政令で定める事実が生じたため、当該課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をすることができなくなつたときは、当該領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から、当該領収をすることができなくなつた課税資産の譲渡等の税込価額に係る消費税額(当該税込価額に105分の4を乗じて算出した金額をいう。第3項において同じ。)の合計額を控除する。
2 前項の規定は、事業者が財務省令で定めるところにより同項に規定する債権につき同項に規定する事実が生じたことを証する書類を保存しない場合には、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。
3 第1項の規定の適用を受けた同項の事業者が同項の規定の適用を受けた課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部の領収をしたときは、当該領収をした税込価額に係る消費税額を課税資産の譲渡等に係る消費税額とみなしてその事業者のその領収をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額に加算する。
4 相続により当該相続に保る被相続人の事業を承継した相続人がある場合において、当該被相続人により行われた課税資産の譲渡等の相手方に対する売掛金その他の債権について当該相続があつた日以後に第1項の規定が適用される事実が生じたときは、その相続人が当該課税資産の譲渡等を行つたものとみなして、同項及び第2項の規定を適用する。
5 相続により当該相続に係る被相続人の事業を承継した相続人が当該被相続人について第1項の規定が適用された課税資産の譲渡等の税込価額の全部又は一部を領収した場合には、その相続人が同項の規定の適用を受けたものとみなして、第3項の規定を適用する。
6 前2項の規定は、合併により当該合併に係る被合併法人から事業を承継した合併法人又は分割により当該分割に係る分割法人から事業を承継した分割承継法人について準用する。

[消費税法施行令]
(貸倒れの範囲等)
第五十九条  法第三十九条第一項 に規定する政令で定める事実は、次に掲げる事実とする。
一  再生計画認可の決定により債権の切捨てがあつたこと。
二  特別清算に係る協定の認可の決定により債権の切捨てがあつたこと。
三  債権に係る債務者の財産の状況、支払能力等からみて当該債務者が債務の全額を弁済できないことが明らかであること。
四  前三号に掲げる事実に準ずるものとして財務省令で定める事実

[消費税法施行規則]
(貸倒れの範囲)
第18条   令第59条第5号 に規定する財務省令で定める事実は、次に掲げる事実とする。
(1)  法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で次に掲げるものにより債権の切捨てがあつたこと。
イ  債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ  行政機関又は金融機関その他の第三者のあつせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
(2)  債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その債務を弁済できないと認められる場合において、その債務者に対し書面により債務の免除を行つたこと。
(3)  債務者について次に掲げる事実が生じた場合において、その債務者に対して有する債権につき、事業者が当該債権の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れとして経理したこと。
イ  継続的な取引を行つていた債務者につきその資産の状況、支払能力等が悪化したことにより、当該債務者との取引を停止した時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該取引を停止した時以後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上経過した場合(当該債権について担保物がある場合を除く。)
ロ  事業者が同一地域の債務者について有する当該債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないとき。
(貸倒れの事実を証する書類及びその保存)
第19条   法第39条第1項 の規定の適用を受けようとする事業者は、 同項 に規定する債権につき 同項 に規定する事実が生じたことを証する書類を整理し、 同項 に規定する領収をすることができないこととなつた日の属する課税期間の末日の翌日から2月(清算中の法人について残余財産が確定した場合には、1月)を経過した日から7年間、これを納税地又はその取引に係る事務所、事業所その他これらに準ずるものの所在地に保存しなければならない。

判例・参考情報

[所得税法基本通達]
(事業の遂行上生じた売掛金、貸付金等に準ずる債権)
51-10 法第51条第2項に規定する「事業の遂行上生じた売掛金、貸付金、前渡金その他これらに準ずる債権」(以下51-12までにおいて「貸金等」という。)には、販売業者の売掛金、金融業者の貸付金及びその未収利子、製造業者の下請業者に対して有する前渡金、工事請負業者の工事未収金、自由職業者の役務の提供の対価に係る未収金、不動産貸付業者の未収賃貸料、山林経営業者の山林売却代金の未収金等のほか、次に掲げるようなものも含まれる。(平11課所4-1改正)
(1) 自己の事業の用に供する資金の融資を受ける手段として他から受取手形を取得し、その見合いとして借入金を計上し、又は支払手形を振り出している場合のその受取手形に係る債権
(2) 自己の製品の販売強化、企業合理化等のため、特約店、下請先等に貸し付けている貸付金
(3) 事業上の取引のため、又は事業の用に供する建物等の賃借りのために差し入れた保証金、敷金、預け金等の債権
(4) 使用人に対する貸付金又は前払給料、概算払旅費等

(貸金等の全部又は一部の切捨てをした場合の貸倒れ)
51-11 貸金等について次に掲げる事実が発生した場合には、その貸金等の額のうちそれぞれ次に掲げる金額は、その事実の発生した日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。(昭57直所3-1、平11課所4-25、平12課所4-30、平16課個2-23、課資3-7、課法8-8、課審4-33、平18課個2-18、課資3-10、課審4-114、平22課個2-16、課法9-1、課審4-30改正)
(1) 更生計画認可の決定又は再生計画認可の決定があったこと。  これらの決定により切り捨てられることとなった部分の金額
(2) 特別清算に係る協定の認可の決定があったこと。  この決定により切り捨てられることとなった部分の金額
(3) 法令の規定による整理手続によらない関係者の協議決定で、次に掲げるものにより切り捨てられたこと。  その切り捨てられることとなった部分の金額
イ 債権者集会の協議決定で合理的な基準により債務者の負債整理を定めているもの
ロ 行政機関又は金融機関その他の第三者のあっせんによる当事者間の協議により締結された契約でその内容がイに準ずるもの
(4) 債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その貸金等の弁済を受けることができないと認められる場合において、その債務者に対し債務免除額を書面により通知したこと。  その通知した債務免除額

(回収不能の貸金等の貸倒れ)
51-12 貸金等につき、その債務者の資産状況、支払能力等からみてその全額が回収できないことが明らかになった場合には、当該債務者に対して有する貸金等の全額について貸倒れになったものとしてその明らかになった日の属する年分の当該貸金等に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入する。この場合において、当該貸金等について担保物があるときは、その担保物を処分した後でなければ貸倒れとすることはできない。(昭57直所3-1改正)
(注) 保証債務は、現実にこれを履行した後でなければ貸倒れの対象にすることはできないことに留意する。

(一定期間取引停止後弁済がない場合等の貸倒れ)
51-13 債務者について次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対して有する売掛債権(売掛金、未収請負金その他これらに準ずる債権をいい、貸付金その他これに準ずる債権を含まない。以下この項において同じ。)の額から備忘価額を控除した残額を貸倒れになったものとして、当該売掛債権に係る事業の所得の金額の計算上必要経費に算入することができる。(昭46直審(所)19、昭57直所3-1改正)
(1) 債務者との取引の停止をした時(最後の弁済期又は最後の弁済の時が当該停止をした時より後である場合には、これらのうち最も遅い時)以後1年以上を経過したこと(当該売掛債権について担保物のある場合を除く。)。
(2) 同一地域の債務者について有する売掛債権の総額がその取立てのために要する旅費その他の費用に満たない場合において、当該債務者に対し支払を督促したにもかかわらず弁済がないこと。
(注) (1)の取引の停止は、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産状況、支払能力等が悪化したため、その後の取引を停止するに至った場合をいうのであるから、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る売掛債権については、その取扱いの適用はない。

[消費税法基本通達]
(取引を停止した時の意義)
14-2-1 規則第18条第3号イ《貸倒れの範囲》に規定する「取引を停止した時」とは、継続的な取引を行っていた債務者につきその資産の状況、支払能力等が悪化したためその取引を停止するに至った時をいうのであるから、例えば、不動産取引のようにたまたま取引を行った債務者に対して有する当該取引に係る債権について同号に規定する経理を行ったとしても、法第39条第1項《貸倒れに係る消費税額の控除等》の規定は適用されない。(平21課消1-10により改正)

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【合意書の条項の種類|債権回収の減額譲歩・2種類の条項|みなし贈与→課税】
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