特有財産を頭金にした不動産の財産分与|対象になるか・按分計算の基準

1 特有財産を頭金にした不動産の財産分与|対象になるか・按分計算の基準

離婚に伴う財産分与では、夫婦が婚姻中に協力して形成した財産(実質的共有財産)を清算します。自宅を購入するとき、夫婦の一方が婚姻前から持っていた預金、親からの援助、相続で得た資金を頭金に充てることは珍しくありません。このような場合、その不動産は財産分与の対象になるのか、対象になるとして特有財産を原資とする部分をどのように扱い、どのように按分するのかが問題になります。

出発点は民法762条1項の夫婦別産制です。夫婦財産制と財産分与の関係については、別の記事で説明しています。

夫婦財産制の性質(別産制)と財産分与の関係(「特有財産」の2つの意味)

裁判例も、夫婦の一方が婚姻中に他方の協力の下に稼働して得た収入で取得した財産は、名義がどちらであっても実質的には夫婦の共有財産だとしています。他方、婚姻前の預金や相続・贈与で得た財産は特有財産として原則対象外です。頭金の問題は、この2つが1つの不動産の中に混在する場面で生じます。財産分与の対象財産と特有財産の基本については、別の記事で説明しています。

財産分与の対象財産=夫婦共有財産(基本・典型的な内容・特有財産)

2 頭金が特有財産なら不動産の一部が対象から外れ、立証できなければ全体が対象になる

自分のケースがどう扱われるかは、次の2つの表で見当がつきます。上の表は不動産全体が清算の対象になる場合、下の表は特有財産部分が対象から外れる場合です。この表は当事務所の整理で、各行の根拠はこの記事の本文にあります。

<不動産全体が財産分与の対象になる場合>

頭金・資金の状況扱い婚姻中の収入で蓄えた預金を頭金にした実質的共有財産として全額が清算の対象頭金は特有財産だと主張するが、資金の流れを立証できない婚姻中に取得した財産として実質的共有財産と推定され、頭金部分も含めて清算の対象特有財産と婚姻中の収入を合わせて取得し、全体を対象として処理する立場(第3説)不動産全体が対象。特有財産の出捐は寄与割合で考慮

<特有財産部分が対象から外れる場合>

頭金・資金の状況扱い清算の仕方婚姻前の預金や相続・贈与で得た資金を頭金にし、通帳などで資金の流れを立証できた購入代金に占める特有財産の割合を評価額に乗じた部分は対象外(第1説・第2説)残りを寄与割合で分ける。他方が不動産全体を取得するには特有財産部分の代償を支払う親から贈与された資金(送金経路は問わない)受贈者の特有財産からの拠出として同上夫婦への贈与と見るべき事情があれば対象に含める買い換えた不動産で、前の不動産に特有財産割合が含まれていた前の不動産の特有財産割合が売却代金を通じて引き継がれる新しい不動産の特有財産割合を算定して控除特有財産部分の帰属出捐者に帰属し、財産分与で処分を命じることはできない代償の支払や別途の合意で処理

3 特有財産とは何か・立証責任

まず、特有財産の意味と、争いになったときに誰が立証するのかを確認します。頭金の特有性が争われる事件では、この立証責任の所在が結論を左右します。

(1)特有財産だと主張する側が、資金の出所と流れを立証する

特有財産(婚姻前からの財産や、婚姻中に贈与・相続で得た財産など)は、原則として分与対象になりません。特有財産であることの立証責任は、それを主張する側にあります。婚姻期間中に取得された財産は夫婦の実質的共有財産と推定されるため、頭金が特有財産であると主張する側が、資金の出所と流れを具体的に立証しなければなりません。立証できなければ、頭金部分も含めて共有財産として清算されます。

特有財産の立証責任

特有財産か否か争いがある場合は、特有財産と主張する者が、これを立証することになり、立証できない場合は、実質的共有財産として財産分与対象財産として扱うことになる。

※松本哲泓著『事例解説 離婚と財産分与』青林書院2024年 5月p95

実質的共有財産の推定

婚姻前から各自が所有していた財産や、婚姻中に各自が相続や贈与によって取得した財産など、夫婦の一方が他方と無関係に取得・形成した財産は、各自の特有財産であり、原則として分与対象財産とならない(注16)。
そのため、実務上も、ある財産が特有財産に当たるか否かが争われることが多いが、婚姻期間中(先行する内縁の期間も含む。)に取得・形成された財産は、夫婦の実質的共有財産と推定され、取得・形成の経緯等から特有性が明らかにならない限り、分与対象財産となるというべきである(注17)。

※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p5

(2)相続で得た財産は原則として対象外——例外は他方の維持への寄与

相続で得た財産についても、夫婦の協力で取得したものではないため、特段の事由がない限り分与対象に含めることは許されないとされています。もっとも、裁判例は「特段の事情」の内容として、他方配偶者がその維持に積極的に寄与し散逸を防止したことなどを挙げており、特有財産であっても他方の寄与があれば例外的に考慮される余地があります(後述の「特有財産の維持に他方が寄与した場合」で扱います)。

相続財産は原則として対象外

一般に、夫婦の一方が相続によつて得た財産は、夫婦の協力によつて取得されたものでないから、夫婦が婚姻中に取得した他の財産と同一視して、分与の対象物件に含ませることは、特段の事由がない限り、許されないというべきである。

※高松高等裁判所 1988-10-28 家月 41巻1号115頁

特有財産が対象になる「特段の事情」

宮坂の土地及び経堂の物件は控訴人の特有財産であり、被控訴人がその維持に積極的に寄与し、その散逸を防止したなどの特段の事情がない限り、財産分与の対象とすべきものではない。

※東京高等裁判所 1995-03-13 家月 48巻8号72頁
判タ 891号233頁

(3)小遣いを原資とする財産は特有財産にならない

一方、原資が「小遣い」など婚姻中の生活費から出ている場合は、特有財産とは認められません。奈良家裁の裁判例は、小遣いで購入した万馬券の換金資金で取得した自宅について、小遣いは生活費の一部として家計に含まれることなどを理由に特有財産性を否定しつつ、臨時収入の射倖性を取得への寄与として評価し、分与割合で調整しました。特有財産か否かの判断と、寄与度による調整は別の問題です。

小遣いを原資とする財産は特有財産にならない

相手方は、本件物件は相手方が自分の小遣いで購入した万馬券を換金して得られた資産が原資であるから、相手方の特有財産として財産分与の対象にならないと主張するが、この万馬券は夫婦の婚姻中に購入されたものであるし、本件物件はもともと夫婦及び家族の居住用財産として購入され、現に12年もの間夫婦の生活の本拠として使用されてきたものであること、万馬券というのは射倖性の高い財産で必ずしも相手方の固有の才覚だけで取得されたものともいえないこと、万馬券が相手方の小遣いで購入されたものであるとしても、小遣いは生活費の一部として家計に含まれると考えることができること、これらの理由から本件物件を相手方の特有財産とみるのは相当ではない。

※奈良家庭裁判所 2001-07-24 家月 54巻3号85頁

取得への寄与で調整した例

しかしながら、本件物件を相手方の特有財産とみることはできないとしても、万馬券という射倖性の高い臨時の収入については相手方の運によるところが大きいので、本件物件取得については相手方の寄与が大きいことを認めるべきである。

※奈良家庭裁判所 2001-07-24 家月 54巻3号85頁

4 頭金の特有性の立証(資金の流れの追跡)

特有財産の立証で最も重要なのは、資金の流れの追跡です。婚姻前の預金や相続で得た資金が、どの口座を経て購入代金に充てられたのかを、通帳などの客観的資料で示さなければなりません。

(1)通帳と時系列表で資金の流れを示す

実務書の事例では、古い通帳がすべて残っていたため、時系列表と矢印で資金の流れを説明して特有部分の認定を得ています。その結果、購入代金3,700万円のうち原告250万円(6.7%)、被告719万円(19.4%)が特有財産の拠出と評価されました。特有財産の「金額」だけでなく、購入代金に対する「割合」として確定される点が、後述の按分計算につながります。

立証のポイント

不動産の購入資金に特有財産が含まれている場合は、金銭の流れを丹念に追って、特有財産であることを立証する必要がある。

※森公任ほか編著『2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与算定・処理事例集』新日本法規出版2018年p70

時系列表による資金の流れの説明

訴訟手続の中では、古い通帳を書証として提出するとともに、時系列表を作成し、お金の流れを矢印で結んで、特有財産が、どのような流れで頭金に充てられたかを裁判所に説明した。
本事例では、古い通帳が全て残っていたことから、お金の流れを丁寧に裁判所に説明し、頭金に特有財産が含まれていると裁判所に認定してもらうことができた。

※森公任ほか編著『2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与算定・処理事例集』新日本法規出版2018年p77

追跡の結果として認められた特有部分(和解案)

④そうすると、マンションを3,700万円で購入するに当たり、原告は、特有財産として250万円(6.7%)を、被告は、特有財産として719万円(=370万円 349万円)(19.4%)をそれぞれ拠出したと評価するのが相当である。

※森公任ほか編著『2分の1ルールだけでは解決できない 財産分与算定・処理事例集』新日本法規出版2018年p75

(2)口座の開設時期と預入時期から特有性を判断した例

裁判例も同じ発想です。大阪高裁の判決は、口座の開設時期(結婚の翌年)と預入時期(毎年のボーナス時期)から、その解約金の全額が婚姻後の収入で形成されたと認定し、特有財産と認められる金額を証拠のある1,681万円に限定しました。結婚前の積立金についても、基準時にそのまま残っていたことの証明がないとしています。

口座の開設時期・預入時期からの認定

上記認定事実によれば,自宅マンションの購入資金とされた被控訴人名義の三菱信託銀行梅田支店の貸付信託(ビッグ)の解約金1486万5624円は,その口座が結婚の翌年である平成元年9月に開設され(乙26),その後,毎年12月のボーナス時期に多額の預入れがされていることからすれば(乙25,26),その全額が,被控訴人の給与・ボーナス等の収入を原資として婚姻後に形成された財産であると認めるのが相当である。

※大阪高等裁判所 2007-01-23 判タ 1272号217頁

特有財産と認められた範囲

以上のとおり,自宅マンションの購入資金として被控訴人の特有財産が充てられた金額は,ワイドの解約金1681万円(1万円未満切捨)に限られ,ほかに,これを認めるべき証拠はない。

※大阪高等裁判所 2007-01-23 判タ 1272号217頁

婚姻前資産の残存が証明されない例

いずれにしても,積立額の推移に照らせば,結婚前の積立金がそのまま平成3年1月時点で残っていたことの証明はないといわざるを得ない。

※大阪高等裁判所 2007-01-23 判タ 1272号217頁

(3)相続した預金は、振替の経過を追跡できた範囲で認められる

相続で得た預金も、追跡できるかどうかで結論が分かれます。東京家裁の審判は、相続した預金が口座に入金され基準時の残高に残っていたことの裏付けがない部分は否定し、振替の経過を追跡できた部分だけを特有財産と認めました。

残存の裏付けがない相続預金(否定例)

この点,資料(乙19)によれば,相手方が,平成20年○月○日に死亡した相手方の父から,計2882万7500円の預金を相続したことが認められるが,この相続した預金が番号2-1ないし2-5の各預金の口座に入金され,基準時における残高の中に残存していたことを裏付ける資料はないから,相手方の主張は採用できない。

※東京家庭裁判所 2021-11-25 判タ 1510号204頁<参考収録・原審>
ウエストロー・ジャパン

振替経過を追跡できた相続預金(肯定例)

以上の事実経過からすると,相手方名義の番号2-6の預金口座の定期預金の基準時の残高のうち,⑤の404万4335円及び⑨の570万5540円の計974万9875円は,相手方が相手方の父から相続した預金が継続して維持,増殖されてきたものであると認められるから,相手方の特有財産とすることが相当である。

※東京家庭裁判所 2021-11-25 判タ 1510号204頁<参考収録・原審>
ウエストロー・ジャパン

(4)婚姻前からの口座を生活口座として使い続けた場合

なお、婚姻前から持っていた預貯金口座を婚姻後も生活口座として使い続け、入出金が繰り返されている場合には、婚姻時の残高を特有財産として控除する必要はないとする見解があります。婚姻前の資金が頭金に充てられた経過は、口座が分けて保管されていたか、送金の記録が残っているかで、立証の成否が大きく変わります。

婚姻前から継続している預貯金の扱い

オ 婚姻前から継続している預貯金
婚姻前から保有する預貯金については、夫婦生活中に当該預貯金において入出金が繰り返されていたのであれば、婚姻時の残高を控除する必要はない。

※岡口基一著『要件事実マニュアル5 第5版』ぎょうせい2017年p160

5 特有財産を原資とする不動産は対象になるか(3つの考え方)

頭金の特有性が立証できたとして、次に問題になるのが、その不動産全体が財産分与の対象になるのか、それとも特有財産部分は対象から外れるのかという「対象性」の問題です。『事例解説 離婚と財産分与』は、この点について3つの考え方を整理しています。

(1)3つの考え方——特有財産部分を切り分けるか、寄与割合で調整するか

整理すると、第1説は特有財産部分を出捐者の固有の持分として対象から外す考え方、第2説は不動産全体を対象としつつ実質的共有部分を特有財産割合を除いた部分とする考え方、第3説は全体を対象財産として特有財産の出捐を寄与割合で考慮する考え方です。第1説と第2説は特有財産部分を切り分ける点で共通し、第2説では特有財産部分の帰属を財産分与で変更できる点が異なります。第3説では不動産について2分の1ルールをそのまま適用できません。近時の実務のように財産一覧表の合計に2分の1ルールを適用する場合には、第1説・第2説が使いやすいと指摘されています。

3つの考え方と実務の使い分け

特有財産と婚姻中の収入とを合わせて不動産を取得した場合の考え方としては次の3説がある。
第1説は、特有財産によって取得した財産は特有財産であるとのルールから、特有財産を原資とする部分を出捐者の固有の持分とする考え方である。
第2説は、実質的な共有部分は、特有財産からの出捐部分(特有財産割合)を除く部分であるが、不動産全体を財産分与の対象とする。
第1説との違いは、特有財産部分も財産分与の対象財産であるから、その部分の帰属を財産分与を理由に変更できる点にある。
第3説は、財産全体を財産分与の対象財産とし、特有財産からの出捐は寄与割合で考慮するとの考え方である。
この説は、不動産については、2分の1ルールを適用できない。
実務は、事案により、これらを使い分けるが、最近の財産分与の実務は財産一覧表に対象財産及びその評価を列挙してその合計について2分の1ルールを適用することが多いので、そのような方法をとる場合には第1説、第2説が利用しやすい。

※松本哲泓著『事例解説 離婚と財産分与』青林書院2024年 5月p99〜100

(2)実務家・裁判官の解説は全体を対象として寄与度で調整する

実務家や裁判官の解説には、第3説の立場をとるものが多く見られます。『要件事実マニュアル5 第5版』は、固有財産と共有財産の共有になるのではなく全部を共有財産としたうえで寄与度の問題とすべきとし、『家庭裁判月報』の論稿も、特有財産を原資の一部とする財産は基本的に分与対象財産として評価算入し、特有財産が原資である点は寄与度の問題と捉えれば足りるとします。

全部を共有財産として寄与度で処理

ウ 夫婦の一方の特有財産を用いて取得した夫婦共有財産
例えば、夫の固有の財産を頭金として夫婦で購入した不動産などである。
この場合、「固有財産」と「共有財産」との共有になるのではなく、全部を共有財産とした上で、寄与度の問題とすべきである

※岡口基一著『要件事実マニュアル5 第5版』ぎょうせい2017年p160

特有財産を原資とする財産の評価算入

また、一方配偶者の特有財産を原資の一部として取得・形成された財産の取扱いが問題とされることも少なくないが、このような財産も基本的には分与対象財産として評価算入すべきであり、特有財産が原資となっている点は寄与度の問題ととらえれば足りると思われる(後記第5参照)(注19)。

※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p5

「特有財産部分」の法的性質

この場合も当該財産の全部が分与対象財産となるのであって、購入価格に占める特有財産出資額の割合を寄与度の認定の際に考慮しているに過ぎないというべきである

※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p20

(3)東京高裁平成7年判決——特有財産の換価代金を充てた不動産も共有財産

東京高裁の平成7年判決も、特有財産の換価代金を購入代金の大部分に充てた別荘地について、夫婦の共有財産と見たうえで、その点を財産分与にあたって斟酌するとしました。同判決は、婚姻中に配偶者名義で購入し贈与税を支払った財産についても、財産分与の関係では特有財産とみなすのは相当でないとしています。

特有財産の換価代金を充てた不動産も共有財産

しかし、予め用意されていた現金が全て控訴人の特有財産の換価代金であったことを的確に認めることのできる証拠はなく、給料等による蓄えの部分がなかったと断定できないし、また、この○○○○の別荘地の購入に際しては、被控訴人が特段の貢献をしていることは前記のとおりであるので、この○○○○別荘地は、夫婦の共有財産と見るのが相当であり、ただ、購入代金の大部分が控訴人の特有財産の換価代金によったものと推認されることを財産分与に当たって斟酌する。

※東京高等裁判所 1995-04-27 家月 48巻4号24頁

配偶者名義で購入し贈与税を払っても特有財産ではない

婚姻中に配偶者名義で購入したものは、仮に贈与税の支払をしたとしても、財産分与の関係では、特有財産とみなすことは相当でない。

※東京高等裁判所 1995-04-27 家月 48巻4号24頁

(4)学説——現存しない過去の特有財産の出資は寄与度の問題

学説上も、現存しない過去の特有財産の出資は、遺産分割における財産出資型の寄与分と同様に、分与対象財産の問題ではなく寄与度の問題として理解すべきとする見解があり、東京高裁平成7年判決の判示を「実務的には通常の感覚」と評しています。もっとも、第3説をとっても、購入価格に占める特有財産出資額の割合を寄与度の認定で考慮する以上、計算の出発点は第1説・第2説と同じく頭金が購入代金に占める割合です。3説の違いは、特有財産部分を対象から外すか、対象に含めたうえで割合で調整するかという処理方法の違いであり、後述の「按分計算の基準」につながります。

過去の特有財産の出資は寄与度の問題

元来は、各当事者の有していた特有財産が、いわば元手として出資されて形成されたのであるから、あたかも遺産分割において財産出資型の寄与分が認められているように、現存しない過去の特有財産の出資もまた分与対象財産の問題としてではなくて、財産分与の基準としての寄与度の問題として理解すべきであろう(注13)。

※沼田幸雄稿『財産分与の対象と基準』/野田愛子ほか編『新家族法実務大系 第1巻』新日本法規出版2008年p490

東京高判平7.4.27の位置づけ

(注13)この点、東京高裁平成7年4月27日判決(家月48・4・24)は「特有財産の換価代金と婚姻中に蓄えられた預金等を併せて取得した財産も夫婦の共有財産に当たるもので、財産分与の対象となるものであり、ただ、財産分与の判断をするに当たって、その財産形成に特有財産が寄与したことを斟酌すれば足りるものと言うべきである。」
と判示するが、これが実務的には通常の感覚であろう。

※沼田幸雄稿『財産分与の対象と基準』/野田愛子ほか編『新家族法実務大系 第1巻』新日本法規出版2008年p505〜506

6 按分計算の基準

按分計算の基本は、特有財産の拠出額が購入代金(取得価額)に占める割合を求め、その割合を離婚時の評価額に乗じて特有財産部分を切り出す方法です。大阪高裁の判決は、この計算式を明示しています。

特有財産割合を控除する計算式

したがって,自宅マンションの評価額から,取得価額に占める被控訴人の特有財産が原資とされた割合を控除して夫婦の実質的共有財産部分を算出すれば,自宅マンションの評価額のうち財産分与の対象とみるべき額は,次の計算式のとおり2517万円となる。
3785万円×(1−1681万円÷5020万円)=2517万円(1万円未満切捨)

※大阪高等裁判所 2007-01-23 判タ 1272号217頁

(1)購入代金に占める特有財産の割合を出し、残りを寄与割合で分ける

東京家裁の平成6年審判も同じ区分方式です。購入代金1億2,268万円のうち相手方の特有財産6,724万円の割合を55%と算定し、残りの45%を清算対象としたうえで、その45%を寄与割合6対4で分け、申立人27%・相手方73%という実質的持分を導いています。特有財産割合の算定は購入時の代金ベース、その後の按分は寄与割合という二段階の構造です。

購入代金に占める特有財産の割合(55%/45%)

そうすると、本件土地本件建物の購入代金が1億2268万4840円(6538万4840円+5730万円)であるから、本件土地本件建物のうち55パーセント〔式、6724万9000円÷1億2268万4000円(1000円未満切り捨て)×100 = 55(1パーセント未満四捨五入)〕について相手方が特有財産となる持分を有していることになる
(なお、本件土地本件建物の購入代金の一部に当事者双方の各400万円の負担金の一部が含まれているが、当事者双方の負担割合が不明であるので、それに相当する本件土地本件建物の割合部分については観念的に共有として、清算の対象財産に含まれる。)。

したがって、本件土地本件建物の45パーセントが清算の対象財産となる。

※東京家庭裁判所 1994-05-31 家月 47巻5号52頁

実質的持分の算出

したがって、本件土地本件建物の45パーセントを申立人と相手方が6対4の割合で分けることになり、本件土地本件建物の申立人の実質的持分は27パーセント(式、45×6÷10 = 27)、相手方の実質的持分は73パーセント(式、45×4÷10+55 = 73)となる。

※東京家庭裁判所 1994-05-31 家月 47巻5号52頁

(2)頭金部分を除いた部分が清算の対象という区分方式

この区分方式は従来の裁判例と同様と評されており、評釈は、購入資金を一方が多く負担した場合を清算割合が問題になる場面として挙げています。解説書も、頭金が他方配偶者の特有財産から支出されている場合は頭金部分を除いた部分が清算の対象とされると説明しています。

区分方式は従来の裁判例と同様(評釈)

他方自宅の土地・建物については、その取得経過、購入資金の出所等から特有財産部分と共有財産部分を認定した上、全体のうち四五パーセントが清算の対象となるとした。
夫婦間で購入資金や増改築費用の負担の異なる不動産について、清算の対象となる範囲を区分したものであるが、このような判断方法は従来の裁判例と同様である。

※『判例タイムズ主要民事判例解説913号』p140〜

購入資金の負担差と清算割合(評釈)

問題となるのは、夫婦の一方の特殊の才覚や専門的知識によって多額の資産が形成された場合(福岡高判昭和44.12.24判時五九五号六九頁参照)や、不動産の購入資金を一方が多く負担したような場合、あるいは専業主婦の場合である。

※『判例タイムズ主要民事判例解説913号』p140〜

頭金部分を除いた部分が清算の対象

不動産取得にあたり、頭金が他方配偶者の特有財産から支出されている場合などは、頭金の部分を除いた部分が清算の対象とされる(東京家審平6.5.31家月47巻5号52頁、LEX/DB文献番号28019163)。

※大杉麻美稿『将来の退職金と離婚時の財産分与』/『新・判例解説Watch10巻』日本評論社2012年4月p84

(3)特有財産で返済した住宅ローンも割合に反映される

東京家裁の令和3年審判は、頭金だけでなく、相続した特有財産で支払った住宅ローン返済分(約240万円)についても、不動産のさらに5%を特有財産として上乗せし、残る45%を分与対象として評価額に乗じています。ローン返済の原資が特有財産であれば、頭金と同様に割合として反映されることが分かります。

相続持分と相続預金によるローン返済の按分

番号1-1ないし1-3の各不動産に係る住宅ローンの一部につきもっぱら相手方が相手方の父から相続した特有財産によって支払われていたものと認められる。平成21年3月から平成24年5月までの間に,240万円程度(6万0292円が22回,6万2996円が17回で計239万7356円)が支払われていたことなどに鑑み,番号1-1ないし1-3の各不動産のうち,さらに5パーセントに当たる部分について相手方の特有財産とすることが相当である。
そうすると,番号1-1ないし1-3の各不動産のうち,分与対象となるのは45パーセントに当たる部分であり,その評価額は,1059万5250円となる(2354万5000円×0.45=1059万5250円)。

※東京家庭裁判所 2021-11-25 判タ 1510号204頁<参考収録・原審>
ウエストロー・ジャパン

(4)実際の数字で見る——各説の扱いと計算方式の一例

実際の数字で見ると、頭金500万円を親族の贈与で賄った事例では、第1説・第2説はその拠出割合(購入代金の6分の1)を特有財産として対象財産を6分の5とし、第3説は6分の1を拠出者の寄与、残りを各2分の1の寄与として扱うため、寄与割合は12分の7対12分の5になります。東京家裁の計算方式の一例として紹介されている方法も、頭金とローン返済額の合計を分母に、各自の固有財産の拠出額と実質共有部分の2分の1の合計を分子として、現在の実質価値(時価からローン残高を引いた額)を按分するものです。実務では、頭金を2分の1ルールの修正要素として寄与度で考慮する方法と、頭金部分を対象から除外する方法の2つが併用されており、計算の方式は裁判官の裁量に委ねられ画一的ではありません。分与割合の原則と貢献度による修正については、別の記事で説明しています。

財産分与割合は原則として2分の1だが貢献度に偏りがあると割合は異なる

事例へのあてはめ(頭金500万円の各説の扱い)

本件事例に各説を当てはめると、頭金500万円はXの親族の贈与によるので、この部分はXの特有財産からの拠出であり、第1説では、この拠出による6分の1の持分は、Xの特有財産であり、財産分与対象財産は、6分の5である。
第2説も、6分の1の持分は、Xの特有財産と扱い、財産分与対象財産は、6分の5である。
第3説は、6分の1はXの寄与、残部はXY各2分の1の寄与と扱い、不動産全体について、Xの寄与は12分の7、Yの寄与は12分の5と扱うことになる。

※松本哲泓著『事例解説 離婚と財産分与』青林書院2024年 5月p100

東京家庭裁判所の計算方式の一例

同居期間中の住宅ローンの既払分は、原則夫婦が平等の割合で返済に貢献したとされる(東京高判平10・2・26家月50巻7号84頁等)。
ただし、計算の方式は、裁判官の裁量に委ねられ画一的ではない。
東京家庭裁判所の計算方式の一例を紹介する。
〔不動産の財産分与計算の一例〕
マンション購入価格3000万円、現在時価2500万円、現在ローン残1500万円
現在の不動産の実質価値 2500万円-1500万円=1000万円
購入資金内訳
頭金 夫の婚姻前の預金より 500万円 固有財產
妻の父からの贈与 400万円 固有財產
婚姻後夫婦が蓄えた預金 100万円 実質共有財産
ローン 夫名義 2000万円
同居中のローン返済額(利息込み) 600万円
別居後の夫によるローン返済額(利息込み) 80万円
計算式
(500万 100万÷2 600万÷2 80万)
夫の取得分 = 1000万円× ————————————————————  ≒  553.6万
(頭金1000万 ローン返済計680万)
(400万 100万÷2 600万÷2)
妻の取得分 = 1000万円× ——————————————————  ≒  446.4万
(頭金1000万 ローン返済計680万)
価額算定にあたり、利息込みのローン返済金で評価する場合と返済金のうち元本返済部分のみで評価する場合があり、いずれであるかは裁判官の裁量による。

※二宮周平ほか著『離婚判例ガイド 第3版』有斐閣2015年p104

2つの処理方法(寄与割合の修正/対象部分からの除外)

(4)ところで、甲は、本件マンションを購入した際、婚姻前の預金から500万円を払い戻し、これを本件マンションの頭金にしていますが、この500万円は甲の特有財産です。
このような場合の取扱いについては、2つの方法があります。
1つは、他の要素(財産分与の対象財産の形成に甲と乙がどのような貢献・寄与をしているのか。他に財産分与の対象となる財産があるか、また、その価額はいくらかなど)をも考慮して、2分の1ルールの修正要素とする(事情によっては、修正しないということもあります)というものです。
もう1つは、この500万円を本件マンションの財産分与の対象部分とはしないとするものです。

※秋武憲一著『離婚調停 第3版』日本加除出版2018年p347

7 計算の分母・諸費用・住宅ローン返済の扱い

按分の分母は、離婚時の評価額ではなく購入価格です。特有財産の拠出額を購入価格で割った割合を求め、それを離婚時の評価額(またはローン残高を引いた実質価値)に乗じます。仲介手数料や登記費用などの諸費用は、特有財産部分と実質共有部分の割合を決める際には考慮しないのが通常です。

何が固有財産部分で何が実質共有部分かは、購入資金の内訳ごとに整理します。親からの贈与、婚姻前に蓄えた預貯金や贈与・相続で得た資金は固有財産部分、婚姻中に各自が稼働して蓄えた預金による頭金は実質共有部分です。住宅ローンの返済も同じ区分で、同居開始から別居時までに返済した部分は実質共有部分、同居前または別居後に一方が返済した部分は固有財産部分として扱われます。頭金だけでなく、ローン返済の時期と原資も按分に影響します。住宅ローンが残る不動産の取得額の計算については、別の記事で説明しています。

住宅ローンのある不動産の財産分与における夫・妻の取得額の計算方法

実務の傾向としては、夫婦の一方が特有財産から頭金を出していても、住宅ローンを家計費から返済していれば不動産全体を財産分与の対象としたうえで、頭金を寄与度として考慮する処理が多いとされています。取得代金に占める頭金の割合を離婚時の評価額に乗じて対象から外す方法も併存しており、いずれの処理をとるかは事案ごとの評議に委ねられています。どちらの方法でも、頭金の額と購入価格の割合、ローン返済の原資と時期を証拠で固めておくことが前提になります。

分母は購入価格・諸費用は考慮しない

なお、不動産の場合、特有財産を頭金にして、ローン部分を夫婦の収入で支払うという場合も多いが、特有財産部分は購入価格に対する割合として考慮する。
取得のために要した費用には、代金部分のほか、仲介手数料、登記手続のための費用等が生じるが、この費用の出捐は、特有財産と実質共有部分の割合を決定する場合には、考慮しないのが通常である。

※松本哲泓著『離婚に伴う財産分与』新日本法規出版2019年p92

固有財産部分と実質共有財産部分の内訳

〔購入資金の内訳〕
固有財産部分の例
・親からの贈与
・夫婦の一方が婚姻前に蓄えた預貯金、贈与や相続で得た資金
・住宅ローン返済分のうち同居前または別居後離婚時までに一方が返済した部分
実質共有財産の例
・婚姻中に各自が稼働して蓄えた預金等による頭金
・住宅ローン返済のうち、同居開始から別居時までに返済した部分

※二宮周平ほか著『離婚判例ガイド 第3版』有斐閣2015年p103

実務の傾向(寄与度として考慮)

不動産の取得に際して、取得代金の頭金を特有財産(固有財産)から出している場合があります。
実務では、このような場合、夫婦の一方が頭金を出したとしても、住宅ローンについて家計費から返済していれば、この不動産を財産分与の対象としたうえで、頭金については、財産の形成又は維持に関する寄与度(貢献度)として考慮していることが多いようです(後記(7)①エ参照)。
なお、取得代金に占める頭金の割合を計算して、離婚時の評価額にこれを乗じたものを財産分与の対象とするという方法もありますので、評議してください。

※秋武憲一著『離婚調停 第3版』日本加除出版2018年p324

8 親族からの援助・不動産の買換え

頭金の原資として最も多いのが、親からの援助です。親族からの贈与は、贈与を受けた夫または妻の特有財産であり、不動産の購入に充てられた部分はその者の特有財産からの拠出になります。

親族が拠出した購入資金の帰属

夫婦が住居とする不動産の購入に対する援助として親族が拠出した場合、これが贈与としてされる場合は、やはり、親族である夫又は妻への贈与であり、不動産の購入に充てられた部分はその者の特有財産からの拠出ということができる。
代金として支払われる過程が、贈与者の親族を経由している場合でも、その配偶者を経由している場合でも、贈与者から不動産売主に直接送金された場合でも同じである。

※松本哲泓著『事例解説 離婚と財産分与』青林書院2024年 5月p96

(1)送金の経路は受贈者を変えない

送金の経路は結論を変えません。贈与者の親族を経由しても、配偶者の口座を経由しても、贈与者から売主に直接送金されても、受贈者は同じです。頭金が相手方配偶者の預金口座に振り込まれていても、それは単なる送金手続であり、受贈者が相手方になるわけではありません。もっとも、実務では、円満な婚姻生活の維持を目的とする贈与など、実質的に夫婦に対する贈与と見て分与対象とすべき場合も多いと指摘されており、贈与の趣旨や経緯が争点になります。

送金経路は受贈者を変えない

なお、頭金の贈与は、Yの預金口座に振り込まれたものであるが、この点は、単なる送金手続にすぎず、これによって受贈者がYとなるものではない。

※松本哲泓著『事例解説 離婚と財産分与』青林書院2024年 5月p100

親族からの贈与の扱い

実務上、夫婦の一方の親族から贈与された財産について特有財産の主張がなされることがあるが、円満な婚姻生活の維持を目的とする場合など、実質的に夫婦に対する贈与と見て分与対象財産とすべき場合も多いであろう。

※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p5

(2)買い換えた場合、特有財産の割合は次の不動産へ引き継がれる

不動産を買い換えた場合は、元の不動産に含まれていた特有財産の割合が、売却代金を通じて次の不動産の頭金に引き継がれます。東京家裁の平成6年審判は、婚姻前に代金の4分の3を支払っていた旧土地について、売却代金の4分の3にあたる6,724万円を婚姻前からの特有財産と認め、前述の「按分計算の基準」で見たとおり、これを新しい不動産の特有財産割合(55%)の算定に用いました。解説書も、元の不動産の売却代金における双方の寄与を計算して、現在の不動産の形成への寄与に組み込むと説明しています。

買換え前の不動産に含まれる特有財産

しかし、旧土地については、前記認定事実によれば、相手方は婚姻前に旧土地旧建物の4分の3に当たる部分の代金を支払い、婚姻期間中にその4分の1に当たる部分をローンで支払ったことが認められるので、東京都への旧土地売却代金の4分の3に当たる金6724万9000円〔式、8966万6148円×0.75 = 6724万9000円(1000円未満切り捨て)〕が、相手方が婚姻前から有する特有財産と解するのが相当である。

※東京家庭裁判所 1994-05-31 家月 47巻5号52頁

買換えの場合の考え方

(d)不動産を買い換えた場合
婚姻中に不動産を買い換え、元の不動産の売却代金を次の不動産の頭金とした場合、元の不動産の売却により得た金額における双方の寄与を計算して、現在の不動産の形成への寄与に組み込む(東京地判昭61·12·22判時1249号86頁)。

※二宮周平ほか著『離婚判例ガイド 第3版』有斐閣2015年p105

(3)買換えが連鎖する事案——各段階で寄与割合を積み上げる

買換えが連鎖する事案では、各段階で寄与割合を積み上げていきます。東京地裁の平成11年判決は、最初のマンションの頭金について双方の供述が対立し確たる証拠がないため寄与割合を平等と推認し、次のマンションでは売却代金に加えて被告固有の株式と実父からの借入(20年以上返済がなく借用証もないことから贈与と認定)が充てられたことから原告の寄与を約3分の1とし、さらに次のマンションでは売却代金5,000万円が大半を占めることから原告の寄与を4割程度としました。親からの「借入」が実質的に贈与と認定されうること、そして頭金の特有性は立証できなければ平等とされることの両方を示す例です。

頭金の特有性が立証できなかった例

最初の高円寺のマンションの購入資金ついては、原告は、結婚前に手持資金で購入したかのごとく述べる(原告本人調書一二頁)が、右部分は被告本人の供述(被告本人調書一二頁)と対比すると採用できず、一方で被告も頭金は自分が結婚前から持っていた投資信託を売却して充当したと述べているものの、ほかに確たる証拠も存しないことからすると、高円寺のマンション購入に当たっての原告と被告の寄与割合は平等と推認するのが相当である。

※東京地方裁判所 1999-09-03 判タ 1014号239頁 
判時 1700号79頁

実父からの借入を贈与と認めた例

そして、その後の門前仲町のマンションを一八〇〇万円で購入するに当たっては、右高円寺のマンションの売却代金一一五〇万円のほかは、もともと被告の固有財産であった○○証券株式会社の株式と被告の実父からの借入(なお、右借入については、既に現在まで二〇年以上経過しており、その間一切の支払いはなされておらず、借用証も作成していないというのであるから、これを実父から娘である被告に対する贈与と認める。)がこれに充てられたというのであるから、門前仲町のマンションの購入に当たっての原告の寄与の程度は、原告の負担分が高円寺のマンションの半額程度(五七五万円)であることからすると、おおむね三分の一程度の割合と認めるのが相当である。

※東京地方裁判所 1999-09-03 判タ 1014号239頁 
判時 1700号79頁

買換えの連鎖と寄与割合

そして本件マンションを五七〇〇万円で購入するに当たってもその大半が門前仲町のマンションの売却代金(五〇〇〇万円)が充てられたというのであるから、不足分に○○銀行深川支店からの借入が充てられたことを考慮しても、本件マンション購入に当たっての原告の寄与割合は、せいぜい四割程度と認めるのが相当である。

※東京地方裁判所 1999-09-03 判タ 1014号239頁 
判時 1700号79頁

9 特有財産の維持に他方が寄与した場合

前述の「特有財産とは何か・立証責任」で見たとおり、特有財産は原則として財産分与の対象になりませんが、他方配偶者がその維持に寄与した場合には、例外的に考慮されます。頭金の文脈では、特有財産で取得した不動産や借地権について、他方が維持に貢献したケースが典型です。

(1)父から譲り受けた借地権——維持への寄与を価格の1割と認めた例

東京高裁の昭和55年判決は、夫が父から無償で譲り受けた借地権について、取得自体への妻の寄与はないものの維持への寄与は明らかとして、借地権の価格の1割を妻の寄与割合と認めました。

父から譲り受けた借地権の維持への寄与

本件借地権は、控訴人が昭和四三年九月父から無償で譲り受けたものであるから、その取得そのものに被控訴人の寄与、貢献があつたとはいえないが、その維持のために被控訴人が寄与したことが明らかであり

※東京高等裁判所 1980-12-16 判タ 437号151頁

維持への寄与の割合(価格の1割)

その割合は、本件借地権についてはその価格の一割、その余の積極財産及び消極財産については、控訴人と同等と認めるのが相当である。

※東京高等裁判所 1980-12-16 判タ 437号151頁

(2)相続した借地権——価額の4分の1を分与すべきものとした例

東京地裁の平成15年判決も、父から相続した借地権は特有財産で原則として分与対象ではないとしつつ、その価額を全く考慮しないのは公平に反するとして、借地権の合計価額の4分の1に相当する価額を分与すべきものとしました。いずれも、特有財産そのものを分与対象に取り込むのではなく、維持への寄与を割合として金銭的に評価する手法です。

相続した借地権は原則として対象外

本件各借地権は、被告がその父から相続した被告の特有財産であるから、原則として、分与の対象となるものではない。

※東京地方裁判所 2003-04-11 新日本法規提供

地代の支払を続けた貢献(価額の4分の1)

以上の事情を総合すれば、本件各借地権が被告の特有財産であることをもって、その価額を財産分与に当たって全く考慮しないことは公平に反するというべきであり、本件各借地権の合計価額(ただし、本件各建物と共に分与対象財産に含まれる使用借権相当額を除く価額)の4分の1に相当する価額を、被告が原告に対して分与すべきものとするのが相当である。

※東京地方裁判所 2003-04-11 新日本法規提供

(3)どこまで評価するかは裁判所の合理的裁量に委ねられる

もっとも、他方配偶者の寄与によって維持された範囲を厳密に認定することは難しく、分与対象として評価算入すべき価額は裁判所の合理的裁量に委ねられると指摘されています。これらの裁判例で1割や4分の1という割合が採られているのも、この裁量的判断の表れです。頭金の按分(前述の「按分計算の基準」)のように購入価格に対する割合を計算できる場面とは異なり、維持への寄与は事実関係の丁寧な主張立証が求められます。

維持への寄与の評価

なお、夫婦の一方の特有財産であっても、他方配偶者がその維持に寄与した場合には、分与対象財産として評価する余地がある(注22)。
もっとも、他方配偶者の寄与によって維持された範囲の厳密な認定は困難であり、分与対象財産として評価算入すべき価額は、裁判所の合理的裁量によって決するほかないと思われる(注23)。

※山本拓稿『清算的財産分与に関する実務上の諸問題』/『家庭裁判月報62巻3号』最高裁判所事務総局2010年p6

10 特有財産部分の帰属と清算方法

最後に、特有財産部分の帰属と、実際の清算方法を整理します。特有財産部分を分与対象から切り分ける立場(第1説・第2説)では、その部分は出捐者に帰属します。したがって、他方が不動産全体を取得するには、分与対象部分の清算とは別に、特有財産部分の代償を支払う必要があります。

特有財産部分の取得には代償が必要

自宅マンションの評価額のうち,財産分与の対象価額を超える部分は,被控訴人の特有財産を原資としているから,控訴人は,これを取得するためには,その代償をも支払うべきであるからである。

※大阪高等裁判所 2007-01-23 判タ 1272号217頁

(1)特有財産部分の処分を財産分与で命じることはできない

逆に、特有財産部分について財産分与を理由にその処分を命じることは相当でないとされます。東京家裁の令和3年審判は、相手方の特有財産である不動産持分について、分与を求める請求を認めませんでした。特有財産部分は、財産分与の枠外で、代償の支払や別途の合意によって処理することになります。

特有財産の処分は命じられない

番号1-1及び1-3の各持分2分1,番号1-2の持分36分の1は相手方の特有財産であり,相手方に特有財産の処分を命じるのは相当でないから,この請求は認めることができない。

※東京家庭裁判所 2021-11-25 判タ 1510号204頁<参考収録・原審>
ウエストロー・ジャパン

(2)清算金の算出と、移転登記・清算金支払の同時履行

他方、不動産全体を対象として固有財産の出捐を寄与割合で考慮する立場(第3説)では、清算金の算出は次のように進みます。東京高裁の平成10年判決は、婚姻期間や生活状況、各人が出捐した固有財産の額などを考慮して寄与割合を4対6と認め、時価3,500万円から残債務約1,030万円を控除した約2,469万円にその6割を乗じ、相手方名義の債務残額を加えるなどして清算金を1,600万円としました。そのうえで、相手方の持分全部の移転登記手続と清算金の支払を同時履行としています。不動産を一方が取得し他方に清算金を支払う場合、登記と支払の同時履行を定めておくことが、履行確保の実務上の要点です。不動産の分与方法の選択肢については、別の記事で説明しています。

マイホームの財産分与の方法(選択肢)は裁判(審判・訴訟)と和解で異なる

固有財産の出捐を寄与割合で考慮した例

前記認定の控訴人と被控訴人との婚姻期間及びその間の生活状況、控訴人と被控訴人とが本件不動産を購入するに当たって出捐した各人固有の財産額、その他諸般の事情を考慮すれば、本件不動産取得についての寄与の割合は、控訴人4割、被控訴人6割と認めるのが相当である。

※東京高等裁判所 1998-02-26 家月 50巻7号84頁

清算金の算出

前記のとおりの本件不動産の取得に対する当事者双方の寄与の割合、残債務の状況、本件不動産の時価は前記のとおり3500万円程度と認められるが、本件不動産取得のために控訴人及び被控訴人が借り入れた前記認定の債務の残元金の合計額1030万7802円を控除した金額は2469万2198円であり、
その6割である1481万5318円(1円未満切捨て。)に、
被控訴人名義で○○組合から借り受けた債務の残元金84万5178円を加算した金額は1566万0496円となること、なお、前記○○公庫から借り受けた債務は控訴人と被控訴人の連帯債務となっているが、その残債務については、控訴人は財産分与の結果本件不動産を全部取得することが認められたときは、全部自己の負担において支払う意思を明らかにしていること、その他諸般の事情を考慮すると、控訴人が被控訴人に対し支払うべき額は1600万円とするのが相当である。

※東京高等裁判所 1998-02-26 家月 50巻7号84頁

移転登記と清算金の同時履行

本件財産分与の方法としては、被控訴人は控訴人に対し、本件不動産についての被控訴人の持分全部を分与してその移転登記手続をすべきものとし、控訴人は被控訴人に対し、1600万円を支払うべきものとし、右不動産の持分の移転登記手続と右1600万円の支払とは同時に履行すべきものとするのが相当である。

※東京高等裁判所 1998-02-26 家月 50巻7号84頁

11 おわりに

特有財産を頭金にした不動産の財産分与は、頭金の特有性を資金の流れで立証できるか、不動産の対象性をどの考え方で処理するか、購入価格に占める割合をどう按分するか、特有財産部分をどう帰属させ清算するか、の順に判断が進みます。いずれの段階でも、出発点になるのは通帳や送金記録で裏づけられた資金の流れです。もっとも、これらを一人で見極める必要はありません。どの考え方で主張を組み、どの証拠を揃えるかは、代理人が事案に応じて判断していきます。財産分与の全体像(手続の流れ・財産調査・住宅ローンの扱い)については、別の記事で説明しています。

離婚時の財産分与の総合ガイド(法的理論・手続・実務上の問題の全体像)

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