【金融商品取引法の『業』の解釈(従前の法律の『営業』からの変化や違い)】

1 金融商品取引法の『業』の解釈
2 金商法制定前の法律における『営業・業』の用語
3 金商法の『金融商品取引業』の定義の条文規定
4 『金融商品取引業』の定義の『業』の趣旨
5 金融審議会の中間整理(営利性排除提言)
6 金融法委員会『中間論点整理』のソース

1 金融商品取引法の『業』の解釈

いろいろな法律(業法)で,規制の対象として『業』という用語が登場します。『業』については,ほぼ共通した解釈があります。
詳しくはこちら|業法の『業・事業・営業』の基本的な解釈(反復継続意思・事業規模・不特定多数)
業法の中で金融商品取引法(金商法)の中の『業』については,制定前の法律との違いがあります。このことは,『業』の解釈を理解するヒントになります。
本記事では,金商法の中の『業』という用語や,金商法以前の同種の法律からの変化について説明します。

2 金商法制定前の法律における『営業・業』の用語

金商法はそれまでのいくつかの法律を統合する法律として,平成19年に施行されました。金商法以前の法律では,規制対象となるサービスの定義の中に『営業』と『業』の両方が登場していました。

<金商法制定前の法律における『営業・業』の用語>

あ 証券取引法・投資信託法

従前の証券業や投資信託委託業などは『営業』とされていた
※証券取引法2条8項,投資信託及び投資法人に関する法律6条(改正前)

い 金融先物取引法

従前の金融先物取引法では『業』とされていた
(平成19年施行の金商法の一部として再構成されて廃止された)
※金融先物取引法2条12項

3 金商法の『金融商品取引業』の定義の条文規定

金商法が規制対象とするサービスである『金融商品取引業』の定義の規定では,『営業』ではなく『業』という用語が使われています。

<金商法の『金融商品取引業』の定義の条文規定>

この法律において『金融商品取引業』とは、次に掲げる行為(その内容等を勘案し、投資者の保護のため支障を生ずることがないと認められるものとして政令で定めるもの及び銀行、優先出資法第二条第一項に規定する協同組織金融機関(以下『協同組織金融機関』という。)その他政令で定める金融機関が行う第十二号、第十四号、第十五号又は第二十八条第八項各号に掲げるものを除く。)のいずれかを業として行うことをいう。
※金商法2条8項柱書

4 『金融商品取引業』の定義の『業』の趣旨

前記の,『金融商品取引業』の定義の中の用語として『業』が選ばれた経緯には,営利性を必要としないという積極的な意図がありました。
逆にいえば,『営業』の意味には営利性が含まれていて,一方,『業』の意味には営利性が含まれないのです。日本語としてこれは当然の前提となっています。

<『金融商品取引業』の定義の『業』の趣旨>

金商法では,営利性が業(金融商品取引業)の要件とされていない
金融審議会の中間整理の提言(後記※1)を踏まえて,金商法2条8項では,営利性を金融商品取引業の要件から除く趣旨で,従前の『営業』ではなく『業として』との文言としたものである
※金融法委員会『中間論点整理』平成24年9月15日p1脚注4(後記※2
※松尾直彦稿『金融商品取引法における業規制』/『ジュリスト1368号』有斐閣2008年12月p15

5 金融審議会の中間整理(営利性排除提言)

金商法の規制対象となるサービスとして営利性を排除した理由は,以前から問題とされていた問題にあります。無登録業者による詐欺的な金融商品の販売を,確実に規制対象に含めるという社会的なニーズです。

<金融審議会の中間整理(営利性排除提言・※1)>

詐欺的な金融商品の販売を行っている者の多くが無登録業者であり,その販売行為が『営業』に該当するか明らかではない場合が多いのではないかとの指摘を踏まえれば,業として規制の対象とする範囲について,営利性などを要件とせず可能な限り広くとらえるなどの措置を検討していくことが望ましい
※金融審議会金融分科会第1部会『中間整理』平成17年7月7日(第1分科会報告p10)

6 金融法委員会『中間論点整理』のソース

前記の説明で出てきた,金融法委員会による『中間論点整理』は,オンライン上で公開されています。ソースをまとめておきます。

<金融法委員会『中間論点整理』のソース(※2)

あ 作成者・日付

金融法委員会
平成24年9月15日

い タイトル

金融商品取引業における『業』の概念についての中間論点整理

う 資料のURL

外部サイト|金融法委員会|中間論点整理・平成24年9月15日

本記事では,金商法の中の『業』という用語や,金商法以前の同種の法律からの変化について説明しました。
実際には,具体的なサービスの内容や仕組みによって『業』に該当するかどうかが違ってきます。
実際にサービスを作る段階の方や,既にあるサービスの適法性の問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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