【取締役などの役員が会社に対して負う責任】

1 取締役などの役員が会社に対して負う責任
2 役員の会社に対する責任の条文規定
3 会社に対する責任が生じる任務懈怠の内容
4 競業取引・利益相反取引による任務懈怠(概要)
5 社外取締役の会社に対する責任は制限できる(概要)

1 取締役などの役員が会社に対して負う責任

取締役などの役員が不正な行為をすると,会社に損害が生じることがあります。
そして,一定の範囲で役員個人が会社に対して責任を負うことになります。
旧商法と会社法には,役員が会社に対して負う責任についての規定があります。
この規定は,単独で使われることもありますが,他の制度や手続と組み合わせて使うケースも多いです。
本記事では,役員が会社に対して負う責任について説明します。
なお,役員が会社以外の者(第三者)に対して負う責任については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|取締役などの役員が第三者(会社以外の者)に対して負う責任

2 役員の会社に対する責任の条文規定

取締役が会社に対して負う責任を規定する条文についてまとめます。

<役員の会社に対する責任の条文規定>

あ 対象となる役員

ア 取締役イ 会計参与ウ 監査役エ 執行役オ 会計監査人

い 責任発生の要件

ア 役員の任務懈怠(※1)イ 会社に損害が生じたウ 『ア』と『イ』に相当因果関係がある

う 責任の内容

役員個人が会社に対して損害賠償義務を負う
※会社法423条1項

え 旧商法の規定(参考)

会社法の規定の『任務懈怠』(前記※1)の代わりに
『法令or定款に違反する行為』と規定されていた
※旧商法266条5号

3 会社に対する責任が生じる任務懈怠の内容

前記の責任が認められる要件のうち『任務懈怠』の内容の解釈については最高裁判例があります。
広めに責任が認められるのです。

<会社に対する責任が生じる任務懈怠の内容>

あ 旧商法の『法令』の解釈

会社を名宛人とし,会社が業務を行うに際して遵守すべきすべての規定
→取締役の受任者としての一般的な義務の規定の違反を含む
※商法254条3項(民法644条),商法254条の3
※最高裁平成12年7月7日;旧商法266条5号について

い 会社法の『任務を怠る』の解釈

『任務』には『ア・イ』の両方を含む
ア 会社と取締役の委任契約に基づく任務イ 法律上当然に生じる任務 ※相澤哲編『立案担当者による新・会社法の解説』商事法務p117

う 新旧法の関係

旧商法266条1項5号から会社法423条1項への変更について
→実質を変更したものではない
※相澤哲編『立案担当者による新・会社法の解説』商事法務p117

4 競業取引・利益相反取引による任務懈怠(概要)

取締役が競業取引や利益相反取引を行うことは,会社に損害が生じるおそれがあるため,会社の承認が必要とされています。
取締役が競業取引や利益相反取引を行ったために会社に損害が生じた場合,取締役に任務懈怠があったと推定されます。これらの取引を行った取締役以外の取締役も関与の態様によっては同様に任務懈怠があったと推定されます。つまり,推定を覆さない限り賠償責任が生じるのです。
詳しくはこちら|取締役の競業取引・利益相反取引による会社に対する損害の賠償責任

5 社外取締役の会社に対する責任は制限できる(概要)

社外取締役だけは,会社に対する責任を制限することができます。
株主総会や定款によって責任の上限を設定するというものです。
優秀な経営者が関与してくれるように責任を制限するという趣旨の制度です。
詳しくはこちら|社外取締役|設置義務・定義|責任の一部免除・責任限定契約|官製マーケット創設

本記事では,取締役などの役員が会社に対して負う責任を説明しました。
実際には細かい事情によって責任の有無や範囲が違ってきます。
実際に役員の責任についての問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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