【名誉回復措置請求の実例(市史事件・石垣写真事件)】
1 名誉回復措置請求(総論)
著作権や著作者人格権の侵害に対して、金銭ではなく、名誉を回復する措置の請求が認められることもあります。名誉回復措置請求の基本的事項については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|著作権・著作者隣接権侵害に対する名誉回復措置請求(基本)
本記事では、名誉回復措置請求について判断された裁判例を紹介します。
2 論文盗用による謝罪広告肯定事例(市史事件)
論文の盗用に対して謝罪広告の請求が認容(肯定)された事例です。
論文盗用による謝罪広告肯定事例(市史事件)
あ 被害者・著作物
Xは大学院の博士課程に在学していた
Xは市史に掲載するための論文を執筆した
い 加害者・著作権侵害の内容
市史の編集委員Y
Yは、Xの論文の一部を改変した
これをY単独名義の論文として発表した
う 裁判所の判断(行為と結果の評価)
ア 先行性の重要性学術論文として先行性が重視される
イ 侵害の態様・内容Yは、故意に、著作者人格権のいずれも侵害した
侵害内容=氏名表示権・公表権・同一性保持権
Yは、さらにXの著作権の帰属を争った
ウ 真相の周知の程度この紛争はマスコミ・市議会で取り上げられた
ある程度真相が公衆に伝わった
しかし、これだけでは著作者がXであることが周知されたとは言えない
え 裁判所の判断(結論)
次の2つの請求を認めた
ア 損害賠償イ 謝罪広告の掲載※東京高裁平成8年10月2日;市史事件
3 写真盗用による謝罪広告否定事例(石垣写真事件)
写真の盗用に対する謝罪広告の請求が認められなかった事例です。ただし、盗用した者が『本来の場所とは異なる場所の風景である』という説明をしていました。この点で侵害の程度は大きいとして慰謝料請求は認められています。
写真盗用による謝罪広告否定事例(石垣写真事件)
あ 被害者・著作物
Xが熊野地方の石垣の写真を撮影した
Xは写真の著作者である
い 加害者・著作権侵害の内容
ア 基本的事項YはXに無断でこの写真を書籍に掲載した
次のような説明を付けてあった
イ 説明内容『津軽中山に存在したとされる邪馬台城跡の写真である』
う 裁判所の判断(侵害権利)
著作者人格権の侵害である
侵害内容=公表権・氏名表示権
慰謝料請求を認めた
え 裁判所の判断(謝罪広告)
慰謝料の支払によって
Xの名誉回復の措置としては十分である
→謝罪広告の請求は認めなかった
※仙台高裁平成9年1月30日;石垣写真事件
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。


