【住民票・戸籍の情報の取得方法(閲覧・証明書交付請求)と開示される者の範囲】
1 住民票・戸籍の情報の取得方法(閲覧・証明書交付請求)と開示される者の範囲
住民票や戸籍の情報は、誰でも取れるわけではありません。本人や身内のほかは、法律が定める事由に当たる場合に限られます。
本記事では、住民票関係の証明書と戸籍関係の証明書について、誰がどの条文で請求できるのかを整理します。弁護士などの士業による職務上請求は要件が別に定められているので、要点だけを示して別の記事へ送ります。
2 請求できる者は本人等・国等・第三者・士業の4ルートに分かれる
住民票・戸籍の情報を請求できる4つのルート
あ 本人等
住民票=住民基本台帳法12条
戸籍=戸籍法10条1項(本人・配偶者・直系尊属・直系卑属)
い 国または地方公共団体の機関
住民票=住民基本台帳法12条の2
戸籍=戸籍法10条の2第2項
う 本人等以外の第三者
住民票=住民基本台帳法12条の3第1項
戸籍=戸籍法10条の2第1項
3つの事由(自己の権利行使・義務履行/国等への提出/正当な理由)のいずれかに当たる場合に限られる
え 特定事務受任者(弁護士などの士業)
住民票=住民基本台帳法12条の3第2項
戸籍=戸籍法10条の2第3項から第5項まで
職務上請求と呼ばれる
3 住民基本台帳法は住民票・除票・戸籍の附票・附票の除票の4面を別の条で開く
住民基本台帳法は、住民票・除票・戸籍の附票・戸籍の附票の除票という4つの面について、それぞれ別の条を置いています。4つはいずれも同じ形で、本人等・国等・第三者・特定事務受任者の順に開かれています。
(1)本人等の請求には事由の提示が要らない
本人と、本人と同一の世帯に属する者は、請求事由を示さずに住民票の写しの交付を請求できます。
住民票の写し等の交付を請求できる本人等
市町村が備える住民基本台帳に記録されている者(当該市町村の市町村長がその者が属していた世帯について世帯を単位とする住民票を作成している場合にあつては、当該住民票から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされ、かつ、当該記載が消除された者を除く。)を含む。次条第一項において同じ。)は、当該市町村の市町村長に対し、自己又は自己と同一の世帯に属する者に係る住民票の写し(第六条第三項の規定により磁気ディスクをもつて住民票を調製している市町村にあつては、当該住民票に記録されている事項を記載した書類。以下同じ。)又は住民票に記載をした事項に関する証明書(以下「住民票記載事項証明書」という。)の交付を請求することができる。
※住民基本台帳法12条1項
(2)第三者の申出は3つの事由のいずれかに当たるときに限られる
本人等以外の第三者は、3つの事由のいずれかに当たる場合に限って申出ができます。交付されるのは市町村長が申出を相当と認めたときです。
本人等以外の者が申出をできる3つの事由
市町村長は、前二条の規定によるもののほか、当該市町村が備える住民基本台帳について、次に掲げる者から、住民票の写しで基礎証明事項(第七条第一号から第三号まで及び第六号から第八号までに掲げる事項をいう。以下この項及び第七項において同じ。)のみが表示されたもの又は住民票記載事項証明書で基礎証明事項に関するものが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出をする者に当該住民票の写し又は住民票記載事項証明書を交付することができる。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために住民票の記載事項を確認する必要がある者
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある者
三 前二号に掲げる者のほか、住民票の記載事項を利用する正当な理由がある者
※住民基本台帳法12条の3第1項
(3)除票・戸籍の附票・附票の除票も同じ3事由と士業の形で開く
除票・戸籍の附票・戸籍の附票の除票についても、同じ3つの事由と、特定事務受任者の申出という形が置かれています。除票と戸籍の附票の除票が法律に明記されたのは令和元年の改正です。
除票=特定事務受任者の申出
市町村長は、前三項の規定によるもののほか、当該市町村が保存する除票について、第十二条の三第三項に規定する特定事務受任者から、受任している事件又は事務の依頼者が前項各号に掲げる者に該当することを理由として、同項に規定する除票の写し又は除票記載事項証明書が必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定事務受任者に当該除票の写し又は除票記載事項証明書を交付することができる。
※住民基本台帳法15条の4第4項
戸籍の附票=特定事務受任者の申出
市町村長は、前三項の規定によるもののほか、当該市町村が備える戸籍の附票について、第十二条の三第三項に規定する特定事務受任者から、受任している事件又は事務の依頼者が前項各号に掲げる者に該当することを理由として、同項に規定する戸籍の附票の写しが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定事務受任者に当該戸籍の附票の写しを交付することができる。
※住民基本台帳法20条4項
戸籍の附票の除票=特定事務受任者の申出
市町村長は、前三項の規定によるもののほか、当該市町村が保存する戸籍の附票の除票について、第十二条の三第三項に規定する特定事務受任者から、受任している事件又は事務の依頼者が前項各号に掲げる者に該当することを理由として、同項に規定する戸籍の附票の除票の写しが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該特定事務受任者に当該戸籍の附票の除票の写しを交付することができる。
※住民基本台帳法21条の3第4項
4 戸籍は10条と10条の2が身内と身内以外を分ける
戸籍については、戸籍法10条が本人と身内の請求を定め、10条の2がそれ以外の者の請求を定めています。
(1)戸籍謄本等を事由なく請求できるのは本人・配偶者・直系尊属・直系卑属
戸籍に記載されている者と、その配偶者・直系尊属・直系卑属は、請求事由を示さずに戸籍謄本等の交付を請求できます。兄弟姉妹は直系ではないので、ここには入りません。
戸籍謄本等の交付を請求できる本人と身内
戸籍に記載されている者(その戸籍から除かれた者(その者に係る全部の記載が市町村長の過誤によつてされたものであつて、当該記載が第二十四条第二項の規定によつて訂正された場合におけるその者を除く。)を含む。)又はその配偶者、直系尊属若しくは直系卑属は、その戸籍の謄本若しくは抄本又は戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「戸籍謄本等」という。)の交付の請求をすることができる。
※戸籍法10条1項
(2)身内以外の者の請求は3つの場合に限られ、明らかにすべき事項も各号が定める
身内以外の者は、3つの事由のいずれかに当たる場合に限って請求できます。請求にあたっては、各号が定める事項を明らかにしなければなりません。
身内以外の者が請求できる3つの場合と明らかにすべき事項
前条第一項に規定する者以外の者は、次の各号に掲げる場合に限り、戸籍謄本等の交付の請求をすることができる。この場合において、当該請求をする者は、それぞれ当該各号に定める事項を明らかにしてこれをしなければならない。
一 自己の権利を行使し、又は自己の義務を履行するために戸籍の記載事項を確認する必要がある場合 権利又は義務の発生原因及び内容並びに当該権利を行使し、又は当該義務を履行するために戸籍の記載事項の確認を必要とする理由
二 国又は地方公共団体の機関に提出する必要がある場合 戸籍謄本等を提出すべき国又は地方公共団体の機関及び当該機関への提出を必要とする理由
三 前二号に掲げる場合のほか、戸籍の記載事項を利用する正当な理由がある場合 戸籍の記載事項の利用の目的及び方法並びにその利用を必要とする事由
※戸籍法10条の2第1項
(3)除籍・改製原戸籍には12条の2が10条から10条の4までを準用
現在の戸籍に載っていない情報は、除籍や改製原戸籍から取ります。これらについては戸籍法12条の2が10条から10条の4までを準用しています。
除籍謄本等への準用
第十条から第十条の四までの規定は、除かれた戸籍の謄本若しくは抄本又は除かれた戸籍に記載した事項に関する証明書(以下「除籍謄本等」という。)の交付の請求をする場合に準用する。
※戸籍法12条の2
5 士業の職務上請求は依頼者の事由を理由とする申出(概要)
弁護士・司法書士・土地家屋調査士・税理士・社会保険労務士・弁理士・海事代理士・行政書士は、特定事務受任者として、受任している事件または事務の依頼者が前記の3つの事由に当たることを理由として、住民票の写し等や戸籍謄本等の交付を求めることができます。職務上請求と呼ばれる手続です。
要件は依頼者の側の事由と受任者の側の業務の2つが重なる形になっており、戸籍については紛争処理の代理業務と刑事弁護人等の業務について別のレーンが置かれています。別の記事で説明しています。
弁護士等の職務上請求の要件(受任している事件又は事務と依頼者の事由)
6 住民票は自治事務なので市町村長の判断範囲が戸籍より広い
戸籍と住民票では、交付の事務の性格が違います。この違いが、市町村長の判断の幅の違いとして現れます。
戸籍は国からの法定受託事務・住民票は市町村の自治事務
戸籍関連業務は国から委託された法定受託事務ですから、「地方公共団体の手数料の標準に関する政令」にもとづき手数料は全国一律です。
一方、住民票関連業務については市町村の自治事務ですので、各自治体の定める手数料条例に従います。)
※西岡攻稿/証明書交付請求研究会編著『実用 各種証明書のとり方』日本法令2021年p36
自治事務なので市町村長の判断範囲が広い
住民票関連業務は市町村の自治事務ですので、市町村長の判断範囲が戸籍関連に比べ広範囲です。
※西岡攻稿/証明書交付請求研究会編著『実用 各種証明書のとり方』日本法令2021年p35
7 市町村長は不当な目的が明らかなときは請求を拒める
要件に当たるように見えても、請求が不当な目的によることが明らかなときは、市町村長は請求を拒めます。戸籍と住民票の両方に同じ規定が置かれています。
戸籍=不当な目的が明らかなときの拒絶
市町村長は、前項の請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
※戸籍法10条2項
住民票=不当な目的が明らかなときの拒絶
市町村長は、第一項の規定による請求が不当な目的によることが明らかなときは、これを拒むことができる。
※住民基本台帳法12条6項
どのような目的が「不当な目的」に当たるかは条文からは読み取れません。文献は、交付を拒むべき場合の先例として2件を挙げています。
文献が挙げる戸籍謄本等の交付拒否の先例
〇戸籍謄本等の請求を拒むことができる不当な目的とは、プライバシーの侵害につながるもの、あるいは差別行為につながるもの等戸籍の公開制度の趣を逸脱して謄本等を不当に利用する目的をいう(昭和51年11月5日民二―5641号通達)
〇貸金債権者からの「失踪宣告申立のため」との請求事由により、債務者の戸籍謄本の請求があっても応じるべきではない(平成2年7月12日民二―2939号通達)
※西岡攻稿/証明書交付請求研究会編著『実用 各種証明書のとり方』日本法令2021年p36
8 偽りその他不正の手段で交付を受けた者は30万円以下の罰金
偽りその他不正の手段で交付を受けた者には、罰金が定められています。戸籍と住民票で別の条ですが、法定刑はどちらも30万円以下の罰金です。
戸籍=不正な手段による交付を受けた者の罰則
偽りその他不正の手段により、第十条第一項若しくは第十条の二第一項から第五項までの規定による戸籍謄本等の交付、第十二条の二の規定による除籍謄本等の交付若しくは第百二十条第一項の規定による戸籍証明書若しくは除籍証明書の交付を受けた者、第百二十条の三第二項の規定による戸籍電子証明書提供用識別符号若しくは除籍電子証明書提供用識別符号の発行を受けた者又は同条第三項の規定による戸籍電子証明書若しくは除籍電子証明書の提供を受けた者は、三十万円以下の罰金に処する。
※戸籍法135条
住民票・除票・戸籍の附票・附票の除票=不正な手段による交付を受けた者の罰則
次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 第十一条の二第十一項若しくは第三十条の三十九第一項の規定による報告をせず、若しくは虚偽の報告をし、又は同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した者
二 偽りその他不正の手段により、第十二条から第十二条の三まで(これらの規定を第三十条の五十一の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する住民票の写し若しくは住民票記載事項証明書の交付を受け、第十二条の四(第三十条の五十一の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する住民票の写しの交付を受け、第十五条の四(第三十条の五十一の規定により読み替えて適用する場合を含む。)に規定する除票の写し若しくは除票記載事項証明書の交付を受け、第二十条に規定する戸籍の附票の写しの交付を受け、又は第二十一条の三に規定する戸籍の附票の除票の写しの交付を受けた者
※住民基本台帳法46条
なお、住民基本台帳の一部の写しの閲覧については別の仕組みが置かれています。市町村長が措置を勧告し、従わないときに命令を出し、その命令に違反した者に刑が科されるという順序です。勧告と命令の規定は11条の2第8項から第10項までにあり、命令違反の罰則は45条です。閲覧そのものの不正と目的外利用には、50条が30万円以下の過料を定めています。
閲覧=命令違反の罰則
第十一条の二第九項又は第十項の規定による命令に違反した者は、六月以下の拘禁刑又は三十万円以下の罰金に処する。
※住民基本台帳法45条
9 平成18年改正までは誰でも住民基本台帳を閲覧できた(参考)
平成18年の改正まで、住民基本台帳の一部の写しは何人でも閲覧できるとされていました。正当な理由があるときに限って拒絶できるという形だったので、ダイレクトメールなどの営業目的での閲覧が多くを占めていました。
改正後は、閲覧できるのは公益性が高いと認められる活動などに限られています。
現在の閲覧制度=公益性が高い活動等に限られる
市町村長は、次に掲げる活動を行うために住民基本台帳の一部の写しを閲覧することが必要である旨の申出があり、かつ、当該申出を相当と認めるときは、当該申出を行う者(以下この条及び第五十条において「申出者」という。)が個人の場合にあつては当該申出者又はその指定する者に、当該申出者が法人(法人でない団体で代表者又は管理人の定めのあるものを含む。以下この条及び第十二条の三第四項において同じ。)の場合にあつては当該法人の役職員又は構成員(他の法人と共同して申出をする場合にあつては、当該他の法人の役職員又は構成員を含む。)で当該法人が指定するものに、その活動に必要な限度において、住民基本台帳の一部の写しを閲覧させることができる。
一 統計調査、世論調査、学術研究その他の調査研究のうち、総務大臣が定める基準に照らして公益性が高いと認められるものの実施
二 公共的団体が行う地域住民の福祉の向上に寄与する活動のうち、公益性が高いと認められるものの実施
三 営利以外の目的で行う居住関係の確認のうち、訴訟の提起その他特別の事情による居住関係の確認として市町村長が定めるものの実施
※住民基本台帳法11条の2第1項
10 固定資産税評価証明書は地方税法382条の3が別に定める(参考)
不動産の固定資産税評価額を知りたいという場面があります。これは住民票や戸籍とは別の台帳で、地方税法が請求できる者を政令に委ねています。
固定資産課税台帳の記載事項の証明書の交付
市町村長は、第二十条の十の規定によるもののほか、政令で定める者の請求があつたときは、これらの者に係る固定資産として政令で定めるものに関して固定資産課税台帳に記載をされている事項のうち政令で定めるものについての証明書を交付しなければならない。ただし、当該証明書に記載されている住所が明らかにされることにより人の生命又は身体に危害を及ぼすおそれがあると認められる場合その他当該証明書を交付することが適当でないと認められる場合には、当該証明書に総務省令で定める措置を講じたものを交付することができる。
※地方税法382条の3
本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。
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