【寄与分|事業に関する労務提供・財産給付】

1 事業に関する貢献×寄与分|内容・典型例
2 事業に関する労務提供×寄与分|判断基準
3 事業に関する貢献×寄与分|具体例
4 家業に従事×民法組合→不公平解消(概要)

1 事業に関する貢献×寄与分|内容・典型例

寄与分の類型の中に事業に関する貢献があります。
詳しくはこちら|寄与分|該当性=要件・判断基準|基本
本記事では事業に関する貢献の判断について説明します。
事業に関する貢献の典型的な内容をまとめます。

<事業に関する貢献×寄与分|内容・典型例>

あ 労務提供

相続人が被相続人とともに自営業を営んできた

い 財産給付

相続人から被相続人へ資金を提供した
例;出資・貸付
→事業が発展した

2 事業に関する労務提供×寄与分|判断基準

判例を元にした判断基準をまとめます。

<事業に関する労務提供×寄与分|判断基準>

あ 特別性・無償性

ア 基準 本来有償で第三者を雇用して従事させるような行為
→該当する方向性
イ 具体例 ・給与を受けて労務提供する従業員と同程度の労務提供
・世間一般の給与と比較して著しく低い給与しか受けていない
例;小遣い銭程度しかもらっていなかった
→無償性が認められる可能性が高い

い 無償性×例外

同居し被相続人が相続人の生活費の負担をしていた場合
→無償性否定方向

う 継続性

数年程度継続していたかどうか
※大阪高裁平成2年9月19日など

3 事業に関する貢献×寄与分|具体例

事業に関する貢献で寄与分が認められるケースは多いです。
判例が多く蓄積されています。
まとめて紹介します。

<事業に関する貢献×寄与分|具体例>

あ 医療法人の経営

医療法人の経営への貢献
→寄与分として3割を認めた
※大阪高裁昭和54年8月11日

い 食品販売業に従事

次の業務に従事した
内容=精米販売・種物販売・パンの製造販売業
→寄与分として10%を認めた
※福岡家裁小倉支部昭和56年6月18日

う 左官業に従事

左官業に従事した
→寄与分として10%を認めた
※東京家裁昭和61年3月24日

え 養豚業に従事

養豚業に従事した
→土地建物の維持・形成につながった
→寄与分として1000万円を認めた
※前橋家裁高崎支部昭和61年7月14日

お 就業による家計維持

妻が12年9か月就業した
妻は夫の3分の1〜2分の1の収入を得ていた
→被相続人の家計を支えていた
→寄与分として遺産の3分の1を認めた
※神戸家裁伊丹支部昭和62年9月7日

か 農業後継者としての従業

農業後継者として家業に従事した
被相続人の扶養にも関わった
→寄与分として1000万円を認めた
=遺産の約3.6%
※千葉家裁一宮支部平成3年7月31日

き 薬局経営

薬局経営を中心的に行った
→経営規模を拡大した
→寄与分として3000万円を認めた
=遺産の約3割
※福岡家裁久留米支部平成4年9月28日
※東京高裁平成3年12月24日;上記判例の前の『差戻』

4 家業に従事×民法組合→不公平解消(概要)

家業従事に関する不公平は寄与分で解消されます(前記)。
同様の事案について,別の制度により解決した判例があります。
ちょっとマイナーな解釈論です。

<家業に従事×民法組合→不公平解消(概要)>

あ 事案概要

親Aの家業を子夫婦Bが手伝っていた
→相続時に貢献度の清算が問題となった

い 解釈論|概要

家業を民法上の組合として認めた
→Bへの残余財産の分配を行った
→この分配金は相続財産から除外した
※東京高裁昭和51年5月27日

う 実質面|寄与分との類似性

『い』の解釈は寄与分の適用と同じ結果と言える
詳しくはこちら|民法上の組合の共同事業と共有物の共同使用の判別(基準と判例の集約)

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