【施行令改正・趣旨|違法状態の追認・公認|平成28年当時の議論の記録】

1 平成28年の施行令改正をめぐる当時の議論

平成28年4月に旅館業法施行令が改正され、簡易宿所営業の客室の延床面積の基準が緩和されました。この記事は、その改正がどういう趣旨で行われ、当時どう受け止められていたかを記録したものです。

以下は平成28年当時の記録です。引用も当時のもので、当時この記事が挙げていた出典のリンクは、いずれも現在では当該ページへ到達しません(3 本はサイトのトップページへ転送され、1 本は404です。2026年9月に確認しました)。そのためリンクは外し、出典の名称・日付だけを残しています。また、民泊をめぐる法制度はその後大きく変わっています(末尾)。

改正そのものの内容は、別の記事で説明しています。

平成28年4月改正施行令・通達|基本|簡易宿所・延床面積基準緩和

2 改正の趣旨——違法な民泊を適法な枠組みへ移す

厚生労働省は、改正に先立つパブリックコメントの結果の中で、改正の趣旨をこう説明していました。

改正に伴う通達も同じ運びでした。許可を得ないまま民泊が広がっている現状があり、これに早急に対応することが求められている。そこで客室の延床面積の基準を緩和し、簡易宿所の枠組みを活用して許可の取得を促す——という組み立てです。あわせて、住民への周知と事業者への指導を徹底することも自治体に要請されていました。

改正の趣旨(厚生労働省のパブリックコメント回答)

今回の改正は、簡易宿所営業の許可を取得しやすくすることで、現在、旅館業法の許可を取得せずに行われている違法な民泊をできる限り、適法なルールの下での実施につなげようとするものです。
※旅館業法施行令の一部を改正する政令案に対する主な御意見と御意見に対する当省の考え方(厚生労働省医薬・生活衛生局生活衛生・食品安全部生活衛生課・平成28年3月30日結果公示)

3 方法論への疑問——違法行為の追認になっていないか

この組み立てには、当時から引っかかる点がありました。違法な状態が広がっていることを確認したうえで、その解消の手段として規制の緩和を選んでいる、という構造です。結果として、許可を取らずに営んできた側が事実上追認され、ルールを守ってきた側が損をする形になります。遵法の姿勢をくじく方向に働く、という問題です。

背景には、違法状態が急速に広がったのに取り締まりが追いつかないという構造的な事情がありました。この構造そのものについては、別の記事で説明しています。

シェアリング|ゲリラマーケット|基本|膨大×ミニマムコンプライアンス

4 厚生労働省の位置づけ——「当面の対応」

パブリックコメントでは、簡易宿所は法律上「多数人で共用する」施設で相部屋が基本であり民泊とは違う、むしろ旅館・ホテル営業の側の部屋数や面積を緩和すべきだ、という意見も出ていました。これに対する厚生労働省の答えは、民泊には様々な利用形態が想定されるとしたうえで、「当面の対応」として簡易宿所の枠組みで対応する、というものでした。この改正が暫定的な位置づけのものだったことが、ここに表れています。

旅館業法の規制緩和がどの方向へ向かっていたかは、別の記事で説明しています。

旅館業法×規制緩和|全体・方針|緩和の方向性・アイデア|ゲリラ性

5 当時の事業者・論者の見解

規制の内容が妥当かどうかと、決まったルールを守るかどうかは別の問題である——当時、宿泊業の側からも同じ指摘が出ていました。2 人の発言を当時の記録として残します。

(1)星野リゾート代表・星野佳路氏——規制への賛否とルール順守は別

規制の合理性と遵法とを分けて考えるべきだ、という指摘です。星野氏は宿泊サービスの多様化の重要性も述べており、その点は厚生労働省の説明(前述)と同じ向きでした。

星野リゾート代表・星野佳路氏

現在の民泊はその多くが違法の疑いのあるままサービスを実施しています。

私は民泊の規制に反対ですが、だからといって決まったルールを守らないのは民泊を含めた宿泊業界の健全な成長にとって問題です。

ルール順守を徹底してほしいと思います。
※日経カレッジカフェ 経営者ブログ「シェアリングエコノミーが地域と業界を変える」平成28年4月27日

(2)堀江貴文氏——規制緩和が進むからこそ取り締まりは厳しくなる

平成28年4月に大阪で無許可営業の検挙事例があり、それを受けたコメントです。

ここでも規制緩和と取り締まりが切り離されています。取り締まりの対象がどう選ばれるかについては、検挙例と、行政処分の不公平をめぐる考え方を別の記事で説明しています。

違法民泊サービスの旅館業法違反での検挙事例

比例原則・平等原則|行政処分は不公平だと無効となる|取消訴訟

堀江貴文氏

Airbnbなどを使った民泊の無許可営業の実態はこんなもんじゃないだろう。

規制緩和の動きはあるものの、だからこそ逆に無許可営業を厳重に取り締まっていこうという流れでまずは規模が大きなところからこうやって摘発されていく。

警察は「目立っていて、儲かっていて、違法なもの」は堂々と取り締まることができるので、このような事例はこれから増えていくはず。

無許可でやっている人は止める、もしくは合法状態になるような措置をしないと痛い目を見ますね……。
※『堀江貴文のブログでは言えない話』Vol.328

6 その後——民泊には住宅宿泊事業法という別の枠組みができた

この記事が書かれたあと、民泊については住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号)が作られました。平成29年6月16日に公布され、届出の受付が平成30年3月15日から、全面的な施行が平成30年6月15日です。旅館業の許可を取るか特区の認定を受けるかの二択だった状況は、ここで変わっています。同じ日には旅館業法自体の改正(平成29年法律第84号)も施行され、ホテル営業と旅館営業が「旅館・ホテル営業」へ統合されました。

住宅宿泊事業法の条文は、別の記事で説明しています。

住宅宿泊事業法(平成29年民泊新法)の条文の全文

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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【平成28年4月改正施行令・通達|基本|簡易宿所・延床面積基準緩和】
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