【監督者責任の具体的事例・判例|鬼ごっこ・サッカー・よもぎの矢・火遊び】

1 『鬼ごっこ』での怪我は想定内→違法性なし|子供社会の治外法権事件
2 サッカーで場外にボールが飛び出した→違法性あり|平成27年ネオ判例
3 『親子の約束』を信じた母を救済|よもぎの絆事件
4 子供の火遊び→火災→親権者は『重過失』あり|火遊びは大人も子供もダメ事件
5 監督者責任×失火責任法→『監督義務』に軽減適用(前提論点)
6 子供の自転車事故→想定外の賠償責任の傾向

本記事では『親権者の監督者責任』の具体的事例を説明します。
監督者責任の基本的事項は別記事で説明しています。
詳しくはこちら|子供と親権者の賠償責任;事理弁識能力,監督責任
詳しくはこちら|子供による被害→親の監督者責任|否定方向に基準変更|平成27年ネオ判例

1 『鬼ごっこ』での怪我は想定内→違法性なし|子供社会の治外法権事件

『鬼ごっこ』のプレイ中にプレイヤーが怪我をしたケースを紹介します。
結果的に,通常のプレイで想定されるリスク,という考え方が採用されています。

<『鬼ごっこ』中の負傷→違法性なし>

あ 当事者
加害者 小学2年生の児童
被害者 小学1年生の児童
い 事故の内容

『鬼ごっこ』中に被害者が加害者を背負い,走ろうとした
→被害者が転倒した→被害者が右上腕部骨折の負傷をした

う 裁判所の判断

『鬼ごっこ』は一般に容認される遊戯である
→違法性がない
※最高裁昭和37年2月27日

2 サッカーで場外にボールが飛び出した→違法性あり|平成27年ネオ判例

サッカー少年が校庭で蹴ったボールが『学校の外』に飛び出した事故がありました。
サッカーについては『一般に認容される遊戯』と言えます。
しかし『ボールが公道に飛び出すリスク』があるため,違法性は肯定されています。
このケースでは『監督義務』の判断について,従来の判例を変更するビッグニュースが飛び出しました。
別記事で説明しています。
詳しくはこちら|子供による被害→親の監督者責任|否定方向に基準変更|平成27年ネオ判例

3 『親子の約束』を信じた母を救済|よもぎの絆事件

子供同士の『インディアンごっこ』で失明する,という痛ましい事故が生じました。
危険性が高い一方で『親子で矢を使わない約束』をしていました。
この『親子の約束・絆』を重視して,結果として監督者責任を否定した判例です。

<よもぎで作った矢を放った→失明→監督者の責任否定>

あ 当事者

加害者=小学2年生
被害者=未就学;6歳

い 使われたウェポン

ア 手製の弓 古竹を割り,これに紐を張って作製した
長さ約50センチメートル
イ 手製の矢 よもぎの枯茎の先端を削って作製した
先端は尖っている
長さ約50センチメートル

う 加害者の母の関与|ゲーム開始経緯

子供(加害者)が弓・矢を持っていることを現認した
子供に対し外出することを止めた
子供は外で遊ぶことを切望した
母は『弓・矢を使用を禁じた』上で外出を許した
子供は母に対し『弓・矢を使用しないこと』を約束した
母は弓・矢を取り上げることはしなかった
→子供が外出し『インディアンごっこ』開戦となった

え 『インディアンごっこ』のシステム

攻撃チームが弓・矢を持って,逃走チームを追いかける
攻撃チームは弓・矢で逃走チームを攻撃する

お 事故発生

加害者が,被害者から約4メートルの位置から矢を放った
矢が被害者の左眼に当たった
被害者は左眼を失明するに至った

<裁判所の判断>

あ 行為の違法性

矢を放つことは危険性が高い
→行為自体についての違法性あり

い 監督義務

加害者は小学2年生であった
→『母の命令・母との約束を理解していた』と信じることは相当である
→母は親権者としての『監督義務』を果たした

う 結論

母の監督者責任を否定した
※最高裁昭和43年2月9日

4 子供の火遊び→火災→親権者は『重過失』あり|火遊びは大人も子供もダメ事件

子供の火遊びは生じがちです。
火災に発展したケースを紹介します。

<火遊び→火災発生→監督者の『重過失』あり>

あ 加害者

加害者=小学生;10歳

い 事案内容

コンビニでライターを買った
自宅から1日分の新聞紙を持ってきた
駐車場の土部分に穴を掘った
穴の中で新聞紙に着火し,燃やした
隣接する建物に延焼し,火災に至ってしまった

<裁判所の判断>

あ 行為自体の違法性

火遊びは危険性が高い
→違法性あり

い 親権者が指導・教育すべき内容

『火遊びそのものが危険であり,建物の直ぐ側で火遊びをすれば火災という重大な結果が発生し得ること』

う 子供の認識

このような火遊びが許されないことは理解することができた

え 監督者の『重過失』(※1)

ア 過失あり 監督義務を怠ったことのより生じた結果である
イ 『重過失』が肯定される 『火遊びをさせない』義務は基本的で重大な結果と直結している
→義務を怠ったことは『重大な過失』に該当する

お 監督者責任

賠償責任を認めた
※東京地裁平成20年8月26日

この判例の中で使われている法的な理論については次に説明します。

5 監督者責任×失火責任法→『監督義務』に軽減適用(前提論点)

一般的に火災については『失火責任法』で責任が軽減されています。
『監督者責任』としての火災の責任,についての解釈論については最高裁で統一されています。

<監督義務者の責任×失火責任法→責任軽減あり(上記※1)>

責任無能力者の監督者責任に失火責任法は適用される
監督について『重過失』がある場合のみ『監督者責任』が生じる
※最高裁平成7年1月24日

詳しくはこちら|建物の瑕疵や火災による近隣の損害|工作物責任・失火責任法

6 子供の自転車事故→想定外の賠償責任の傾向

親権者の監督者責任が具体化する典型として『自転車事故』があります。
自動車のように『強制保険(自賠責保険)』の制度がありません。
そこで,想定外の『高額の賠償』が生じて『加害者にも災難』というダブル悲劇が生じがちです。
これについては別記事で説明しています。
詳しくはこちら|子供と親権者の賠償責任;事理弁識能力,監督責任

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