【遅刻の罰金・ペナルティ|1日の賃金の半分・1か月の10%までは設定可能】

1 遅刻へのペナルティの分類

『遅刻のペナルティ』のルールを導入している会社もあります。
ここで法律的な性格は3つに分類できます。

遅刻へのペナルティ|法律的な性格の分類

あ ノーワークノーペイ

『時刻時間分』の給与を差し引く(支給しない)→OK

い 減給・罰金

ルールで決めた金額を差し引く
ア 一定の限度内→『減給』=OKイ 一定の限度を超えた→『罰金』=NG

内容については順に説明します。

2 ノーワークノーペイの原則

遅刻や早退などの『ロスタイム』は『労働時間』に当たりません。
給与などの『賃金』支給の前提を欠きます。
就業規則で『不払い』というルールを規定しなくても『支給しない』のが原則です。

遅刻×ノーワークノーペイの原則

『労働の提供がなかった時間』に相当する賃金を支給しないことは『減給の制裁』に該当しない
※通達;昭和63年3月14日基発150号

『減給の制裁』というルールについては後述します。
なお、法律上『休暇・休業』の取得が強制されている制度でも『賃金支給』は強制されていません。
ノーワークノーペイの原則が当てはまるのです。

育児休業|基本|給与の有無・給付金・不利益取扱い・間接差別
詳しくはこちら|職場の妊婦・母の保護|つわり休暇・軽易業務転換・降格の有効性|マタハラ判例

3 『減給』のルール設定は適法だが『上限』がある|減給の制裁

『実際のロスタイム』以上に『給与を減らす』という場合は『減給』にあたります。
まずは『就業規則における設定』が必要です。
さらに、上限が規定されています。

『減給の制裁』の上限

あ 減給の制裁の前提

就業規則で規定しておく

い 減給の上限額

次のどちらも超えてはいけない
ア 1回ごとの上限平均賃金1日分の半額
イ 賃金支払期の合計の上限賃金の総額の10分の1
※労働基準法91条

この中で使われる『平均賃金』については別に説明しています。
詳しくはこちら|平均賃金|計算方法・除外される賃金

4 『減給の制裁』を超えると『賠償予定の禁止』に違反となる

『減給の制裁』の上限を超えてペナルティを設定すると違法となります。
『労働契約の不履行』についての『違約金・損害賠償額の予定』に該当するのです。
※労働基準法16条
逆に言えば、『減給の制裁』の範囲内であれば、形式的に『違約金』ですが違法とはならない、ということです。

5 『減給の制裁』の規定を設定・変更する場合は不利益変更禁止の原則に注意

『減給の制裁』はプラス・マイナスの両方の側面があります。
就業規則で設定する『義務』はありません。
労働基準法の範囲内であれば、新たに設定する・変更する、という裁量があるのです。
この点、『従前の状態からの変化』については要注意です。
『従業員に不利益な方向』であれば『不利益変更禁止の原則』に違反する可能性があるのです。
詳しくはこちら|不利益変更禁止の原則は例外も多い・同一労働同一賃金は法規範ではない

6 遅刻のペナルティの設定の妥当性|労働マーケットが決める

『遅刻のペナルティ』については会社に裁量があります。
設定する/しない、どのような内容で設定するか、というようなことです。
この点、遅刻のペナルティはプラス・マイナスの効果があるので、一概・一律に『これが最適』という解はありません。

遅刻のペナルティの影響

あ プラス効果

ア 従業員が責任を持つようになるイ 『言い訳を考えぬく』という無用な作業を排除できる

い マイナス効果

ア ギスギスするイ 『成果・仕事内容』が評価されないという感覚を生じる→官僚化(社内ラッダイト)につながる

マーケットの既得権者が全体最適妨害|元祖ラッダイト→ネオ・ラッダイト

この設定方法によって『生産性』に影響が出る、というよりも、労働マーケットの選択、という側面があるでしょう。
特定の設定方法・内容を批判するとか、単に模倣する、というのはナンセンスです。

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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