【取引相手の属性調査(反社チェック)の実務(弁護士を活用した効率的方法)】

1 取引相手の属性調査(反社チェック)の実務(弁護士を活用した効率的方法)

いろいろな取引で相手方の属性の調査が求められています。いわゆる反社チェックです。その方法にはいろいろなものがあります。本記事では、反射チェックの方法の全体像を説明します。

2 反射チェックが必要とされる背景

全国の都道府県で「暴力団排除条例」が施行され、事業者には取引相手が暴力団等であるかどうかの「属性確認の努力義務」が課されています。相手が暴力団等と判明した場合は、取引を中止する法的義務も生じます。
詳しくはこちら|暴排条例による契約書条項の改良、利益供与禁止
条例上は「知らなかった」場合に責任はないとされていますが、実際には「知らなかったこと」の立証が困難なリスクがあります。そのため、取引相手の属性調査が必要となるのです。

3 属性調査の主な方法とその比較

(1)調査会社への依頼

専門知識と独自ネットワークを活用した調査が可能です。費用は数万円から数十万円で、数日から数週間かかります。確実性は高いですが、コストがかかり時間もかかる傾向があります。

(2)信用調査機関の活用

企業の財務状況と合わせて反社リスクも評価できます。一件あたり数万円程度で、比較的短期間で結果が得られます。ただし、反社チェックに特化していない場合もあります。

(3)警察への照会

公的機関の信頼性の高い情報にアクセスできますが、厳格な条件があり、本人照会では情報開示されにくい傾向があります。費用はかかりませんが、数週間から数か月を要する場合もあります。

4 警察への照会の基本原則

警察は暴力団の情報をデータベースとして保有・管理しており、情報開示のルールも定められています。
警察が情報開示に応じる条件は「必要性」と「情報の悪用・目的外利用のおそれがない」ことです。「必要性」とは契約書に暴排条項が含まれていることであり、「情報の悪用・目的外利用のおそれがない」とは開示請求者の属性・組織から情報管理上の問題がないと認められることを意味します。警察照会には、契約書に暴排条項が含まれていることが前提条件となります。
この開示ルールの内容については別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|警察への暴力団情報照会(反社チェック)(要件・開示内容・手続など)

5 本人による警察照会の課題

本人が直接警察に照会する場合、所轄の警察署に相談し、照会対象者の基本情報や根拠資料を提出する必要があります。実務上の困難点として、専門知識のない一般企業にとって手続きの負担が大きいことが挙げられます。「情報の目的外利用」リスクにより審査が厳格化され、情報管理体制への信頼が得られにくいという課題もあります。そのため、調査期間が長期化したり開示拒否されたりするリスクも高まります。誓約書を提出しても、それだけでは警察の懸念を完全に払拭できないことが多いのです。

6 弁護士を通じた警察照会のメリット

弁護士を通じて警察に照会する場合、弁護士が依頼者の代理人として手続きを行います。弁護士会照会という制度を利用することで、警察はより高い信頼性を評価し、情報開示に応じやすくなります。なお、調査自体を依頼(受任)した場合には弁護士会照会は使えません。契約書作成を含む業務の依頼が前提となります。
詳しくはこちら|弁護士会照会の基本(公的性格・調査対象・手続の流れ)
「情報管理の適正」をアピールする方法として、弁護士は照会書に職務遂行目的を明記し、依頼者との間で秘密保持契約を締結することもあります。
弁護士は、警察から開示された情報を依頼者に直接開示せず、調査報告書の形で結果を伝えるという提案も効果的です。弁護士を通じた照会では、本人照会より迅速に対応される傾向があり、数週間程度で回答が得られることもあります。

7 弁護士名義の調査報告書

弁護士名義の調査報告書には、表題、作成日、作成者、依頼者、調査対象、調査目的、調査方法、調査期間、調査結果、分析・評価、結論、免責事項などが記載されます。
報告書に記載される情報には、開示可能なものと制限されるものがあります。インターネット検索や公開情報は開示可能ですが、警察から弁護士会照会により得た情報には制限があります。内容によって(特に個人の犯罪歴や前科は慎重な取り扱いが求められ)、弁護士から依頼者には間接的に報告することがあります。
報告書自体に法的拘束力はありませんが、企業が合理的な注意義務を果たした証拠となります。新規取引先選定時、M&A時のデューデリジェンス、上場審査など様々な場面で活用され、契約解除の根拠にもなり得ます。

8 属性調査のタイミングと実務上の対応

属性調査は原則として契約締結前に行うことが重要です。契約後に反社関係が判明すると、契約解除の困難さや企業イメージの低下などのリスクが生じます。新規取引では相手企業だけでなく、経営者や役員、主要株主なども調査対象とすべきです。
また、一度調査した後も定期的な調査が推奨され、1年に1度または2〜3年に1度程度の頻度が目安です。反社との関係は流動的で、過去に問題なかった取引先が後に関わる可能性もあります。契約更新時や役員変更時なども再調査するとよいでしょう。
調査結果が曖昧な場合は追加調査を行い、非協力的な取引先には慎重な判断が求められます。必要に応じて契約書に反社条項を盛り込むなどの対策も重要です。

本記事では、取引相手の属性調査(反社チェック)について説明しました。
実際には、個別的事情により法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。
実際にいろいろな取引の適法性の確認に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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