1 代襲相続|基本的具体例|被相続人の孫が相続人となる
2 代襲相続が適用される範囲|『子』は無制限・『兄弟』は1世代のみ
3 『遺贈』については『代襲相続』は適用されない
4 『相続させる』遺言×代襲相続|問題となる典型事例
5 『相続させる』遺言×代襲相続|解釈論=『適用されない』
6 『相続させる』遺言×代襲相続|登記実務=『適用しない』扱い
7 『相続させる』遺言×代襲相続|例外=遺言への記載など
8 代襲相続×民法改正|相続発生時によってルールが異なる

1 代襲相続|基本的具体例|被相続人の孫が相続人となる

<代襲相続|具体例>

あ 事案

Aが亡くなった
A(被相続人)の子が既に亡くなっていた

い 原則=法定相続人

『子』がいない場合
→被相続人Aの両親が相続人となる

う 例外=代襲相続人

被相続人Aの子の子=Aの孫がいる場合
→Aの孫が相続人となる
これを『代襲相続(人)』と言う
※民法887条

原則的には,『子』がいない場合,両親が法定相続人になります。
(別記事『法定相続人・基本』;リンクは末尾に表示)
しかし,例外的な代襲相続という制度があります。
被相続人の子が既に亡くなっている場合,子の子=孫が相続人になります。
世襲・リレーのような動き,と言えます。
代襲相続となる場合は『被相続人の親』は相続人になりません。

2 代襲相続が適用される範囲|『子』は無制限・『兄弟』は1世代のみ

<代襲相続が適用される範囲>

あ 被相続人の『子』が亡くなっていた場合

その『子』さらにその『子』・・・と適用される
2回パスされる場合を再代襲と言う
それ以上でも制限はない
※民法887条2項本文

い 被相続人の『兄弟』が亡くなっていた場合

『兄弟の子=被相続人の甥・姪』だけが適用される
※民法887条2項但書

う 両親が亡くなっていた場合

代襲相続は適用されない
『両親の子』は『被相続人の兄弟』ということになってしまう
兄弟は元々相続人なので『代襲相続』として認める意味はない

3 『遺贈』については『代襲相続』は適用されない

『遺贈』と『代襲相続』の関係をまとめます。

<受遺者が既に死亡→代襲相続なし>

あ 具体例

父が亡くなった
遺言に『Aに遺贈する』という記載があった
父が亡くなるより前にAが亡くなっていた

い 結論

Aの子供Bは『代襲相続』の対象ではない
→遺産を受け取ることができない
※民法994条1項

『遺贈』については『代襲相続』が適用されないと規定されています。
受遺者の配偶者・子供などの血縁者が『代わりに承継する』ことはできません。
受遺者というのは『遺贈を受けられたはずの者』のことです。

4 『相続させる』遺言×代襲相続|問題となる典型事例

『相続させる』遺言と『代襲相続』の関係が問題となることがあります。
まずは具体的な典型事例を示します。

<『相続させる』遺言×代襲相続|事例>

あ 事例

父が亡くなった
遺言に『Aに相続させる』と記載してあった
Aは遺言者(父)の長男である
父が亡くなるより前にAは亡くなっていた

い 結論

Aの子供Bは『代襲相続』の対象ではない
→遺産を受け取ることができない

5 『相続させる』遺言×代襲相続|解釈論=『適用されない』

『相続させる』遺言と代襲相続に関する判例の理論をまとめます。

<『相続させる』遺言×代襲相続|解釈論>

あ 『相続させる』遺言の解釈

『遺産分割方法の指定』として扱われる
※民法908条
詳しくはこちら|『相続させる』遺言の法的性質や登記申請・対抗関係の法的解釈

い 『相続させる』遺言×代襲相続|平成23年判例

ア 平成23年より前
代襲相続が適用されるか否かの解釈は統一されていなかった
イ 平成23年判例
原則的に代襲相続が『適用されない』解釈に統一された
※最高裁平成23年2月22日

6 『相続させる』遺言×代襲相続|登記実務=『適用しない』扱い

不動産登記の実務における登記先例を紹介します。

<『相続させる』遺言×代襲相続|登記実務>

代襲相続を適用しない扱いがなされている
平成23年判例より以前よりこの扱いがなされていた
※昭和62年6月30日民三3441号民事局第3課長回答

7 『相続させる』遺言×代襲相続|例外=遺言への記載など

平成23年の判例(前記)では一定の例外が認められています。
実際に『代襲相続を適用する』というニーズもあります。
これについてまとめます。

<『相続させる』遺言×代襲相続|例外>

あ 平成23年の判例の解釈×例外

例外的に代襲相続を『適用する』場合もある

い 例外となる条件

遺言者が次の意思を有していたと認められる場合
『先に(特定の)相続人が死亡していた場合は別の者に相続させる』

う 例外|具体例

ア 遺言に『代わりの承継者』記載
・遺言に(特定の)相続人が死亡していた場合の承継先(指定)を明記しておく
・『代襲相続の適用を希望する』旨を記載しておく
イ 遺言以外の記録
遺言とは別に『代襲相続の適用を希望する』ことを記録しておく
例;手紙など
ウ 日常の関係・会話
遺言者と近親者との日常の関係・会話から
→『代襲相続の適用を希望する』気持ちが読み取れる

『気持ちの推測』が必要な場合は,相続人間の見解の違いが生じやすいです。
亡くなった後にトラブルとなる可能性が高いでしょう。
結果的に,遺言者の希望・気持ちとは違った結果に至る可能性もあります。
遺言自体に明記しておく方法がベストです。

8 代襲相続×民法改正|相続発生時によってルールが異なる

代襲相続の制度は,民法の改正によって内容が変化してきました。
現在でも数世代の相続について放置されている状態がトラブルになることがあります。
専門的には『未分割=遺産共有の状態』ということになります。
過去にさかのぼって,時期によって異なるルールを適用する必要があるのです。
時系列に沿って,代襲相続のルールの変化を整理します。

<代襲相続×民法改正|〜昭和22年5月>

あ 旧民法|昭和22年以前

兄弟姉妹に代襲相続は適用されない
※旧民法994条,99条

い 対象期間

相続発生が昭和22年5月2日以前→旧民法

<代襲相続×民法改正|〜昭和22年12月>

あ 経過措置|応急措置法

対象期間中は『旧民法』の規定が適用される
→兄弟姉妹に代襲相続は適用されない
※応急措置法8条1項,2項3号(※1)
※最高裁昭和43年11月22日

い 応急措置法・対象期間

相続発生が昭和22年5月3日〜昭和22年12月31日
昭和22年5月3日=日本国憲法施行日

う 応急措置法・正式名称(上記※1)

日本国憲法の施行に伴う応急的措置に関する法律

<代襲相続×民法改正|〜昭和55年12月>

あ 昭和22年新民法

兄弟姉妹に代襲相続が認められる
再代襲も『無制限』に認められる
→現行法の直系卑属と同様の扱いである

い 対象期間

相続発生が昭和23年1月1日〜昭和55年12月31日

<代襲相続×民法改正|〜現在>

あ 現行民法|昭和55年改正後

兄弟姉妹の再代襲は認められていない
→兄弟姉妹はその『子のみ』が代襲相続の対象となっている
=甥・姪までということになる

い 対象期間

相続発生が昭和56年1月1日〜