1 事例|死亡順序が問題になる状況
2 事例|死亡順序による結果の違い
3 同時死亡の推定|基本
4 同時死亡の結果|具体例
5 同時死亡の推定|典型=災害・事故
6 同時死亡の推定|災害・事故×脳死

1 事例|死亡順序が問題になる状況

『死亡の順序』が曖昧であると法的扱いに不都合が生じます。
救済措置として『同時死亡の推定』という規定があります。
具体的事例を用いて説明します。
まずは具体的事例の内容をまとめます。

<事例|死亡順序が問題になる状況>

夫婦が,飛行機事故や大災害で両方とも亡くなった
夫婦の間に子は居ない(孫以降も存在しない)
夫婦ともに,両親とも居ない
夫婦ともに,兄弟は健在
夫は10億円相当の資産を持っている
妻は資産を持っていない(ゼロ)

2 事例|死亡順序による結果の違い

上記事例において『死亡順序』が大きな違いにつながります。
これをまとめます。

<事例|死亡順序による結果の違い>

あ 夫が死亡→妻が死亡

ア 夫の相続
夫の遺産のうち4分の3を妻が承継する
=7億5000万円相当
イ 妻の相続
妻の財産すべてを『妻の兄弟』が承継する

い 妻が死亡→夫が死亡

夫の遺産を,すべて『夫の兄弟』が承継する
結果的に,妻の兄弟は一切承継しない

3 同時死亡の推定|基本

死亡順序が判明しない場合の救済措置があります。
基本的な内容をまとめます。

<同時死亡の推定|基本>

あ 前提事情

次の両方に該当する
ア 複数の者が亡くなった
イ 死亡の前後が分からない

い 同時死亡の推定

『同時に死亡した』ものと推定する
→原則的にこのように扱う
※民法32条の2

なお,一般的な『死亡の認定・判定基準』は別に説明しています。
(別記事『死亡認定・3徴候説』;リンクは末尾に表示)

4 同時死亡の結果|具体例

同時死亡の推定を使った結果の具体例をまとめます。

<同時死亡の結果|具体例>

あ 前提事情

夫婦が同士に死亡した

い 考え方

夫が死亡した時点で,妻は既に死亡している

う 相続・結果
相続のルート ◯or☓
夫→妻(→妻の相続人)
夫→子供(妻以外の相続人)

5 同時死亡の推定|典型=災害・事故

同時死亡の推定を使う典型例をまとめます。

<同時死亡の推定|典型=災害・事故>

あ 典型的な状況

多くの方が『近い時間帯』に亡くなる状況
死亡時刻の特定の手がかりがほとんどない場合
→『死亡時刻・死亡順序』が判別不能になりやすい

い 死亡時刻・特定の手がかり|例

外傷で死亡に至る原因・要因が正確に特定できるケース

う 同時死亡の推定

死亡時刻の正確な特定ができない場合
→積極的に『同時死亡の推定』を適用する

6 同時死亡の推定|災害・事故×脳死

『脳死』については,特に『死亡時刻』が不明確になりがちです。
『同時死亡の推定』を使うことが多くなります。

<同時死亡の推定|災害・事故×脳死>

あ 脳死認定|特徴

『脳死』は『脳機能の喪失』で判断する
=外見上から認定できない
→医師が検査をするまで『死亡の認定』ができない
→医師の検査のタイミングによって認定時刻が変わる

い 災害×脳死認定

複数の『脳死者』が近いタイミングで発生する
→医師の検査の順序によって『死亡時刻の前後』が変わる
→不合理である

う 同時死亡の推定

積極的に『同時死亡の推定』を適用する