【民泊サービス代行業の検挙事例(平成28年7月ピクセルC事件)】

1 民泊周辺サービスへのエントリー
2 捜査開始と撤退
3 書類送検
4 理論的な問題点(村八分システム)

1 民泊周辺サービスへのエントリー

民泊サービスには違法なものも存在しています。当然,行政・警察は摘発・検挙を行っています。
詳しくはこちら|違法民泊サービスの旅館業法違反での検挙事例
検挙の事例の中に,民泊の運営代行業者を対象とする珍しいケースがあります。
本記事では,ピクセルC事件について紹介します。
まずは,ピクセルカンパニーズが民泊の周辺サービスに算入する経緯をまとめます。

<民泊周辺サービスへのエントリー>

あ 民泊サービスへのエントリー表明

平成28年2月16日
ピクセルカンパニーズは民泊ビジネスへの参入を表明した
JASDAQに上場している企業である
運営は子会社が行う
子会社=ハイブリット・ファシリティーズ

い 表明した民泊ビジネスの内容

ア 特区民泊の運用イ リノベーションの提案ウ 民泊の周辺サービスの提供 例;清掃・メンテナンス・運営代行
※共同通信平成28年7月13日

2 捜査開始と撤退

運営を代行している民泊サービスについて,警察の捜査が行われました。そこで,ピクセルカンパニーズは事業撤退を表明しました。

<捜査開始と撤退>

あ 捜査開始

平成28年6月
警視庁が捜査(捜索・差押)を開始した
被疑事実=旅館業法違反

い 事業撤退表明

ピクセルカンパニーズは次の表明をした
民泊に関連する事業から撤退する
※共同通信平成28年7月13日

3 書類送検

最終的に,関係する会社と個人(役員)が書類送検されました。

<書類送検>

あ 書類送検の実行

平成28年7月13日
書類送検がなされた
無許可の民泊で代行業者が摘発された初めてのケースである

い 書類送検の対象者

ア ハイブリッド・ファシリティーズ(運営会社)イ ピクセルカンパニーズ(親会社)ウ 『ア・イ』の役員(男女)6人 ※共同通信平成28年7月13日

4 理論的な問題点(村八分システム)

この事件の被疑者とされた者が『代行』のサービスをしていたに過ぎなかったはずです。
ところで旅館業法違反となるのは宿泊サービスの提供をした者,つまり事業主です。これに関するいろいろな作業・業務はそれだけでは『宿泊サービス』とは言えません。
詳しくはこちら|行政刑罰(事業主処罰規定)の『事業主』の判断基準
もちろん実際の仕組みによっては『宿泊サービス提供』に多くの者が関与していることが多いです。関わり方の評価によって『サービス提供者』の判断は異なります。
詳しくはこちら|プラットフォーム/原サービス販売者の判定と実費の扱いの違い
この事件でも仮にしっかりと主張・立証をすれば旅館業法違反に該当しないという判断に至るかもしれません。
しかし,被疑者が上場企業とその関係者であるため,捜査や検挙自体が大きなダメージです。そこで,戦略的に『戦うことを回避する』という傾向があるでしょう。
捜査や検挙・逮捕は不当と思われるケースが実際によく生じます。
詳しくはこちら|レンタカー料金の分担による逮捕事例と不当逮捕・捜査の実情
不当な捜査があっても,その後,裁判で被告人側が徹底的に争い,裁判所が判断を示せば,その後役立つ判断基準が作られます。
しかし,不起訴となるとか被疑者が妥協して略式命令に応じることにより正式裁判に至らないことが多いです。
結局,刑事裁判の判例として今後役立つ基準ができるということは期待しにくいのです。このような現象は,古くから判例でも指摘される官僚統治システムとほぼ同様のものと言えましょう。
詳しくはこちら|レピュテーション・リスク|村八分システム×無法地帯→官僚統治

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【隣地使用権の訴訟法的な整理(訴訟物・請求原因)】
【特区民泊に関する平成28年10月国家戦略特区法施行令改正】

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