1 賭博罪の成否×法的根拠の影響|基本
2 賭博開帳罪|賭博場=取引所|レアケース
3 賭博罪の成否|法的根拠+目的による判別
4 賭博罪の成否|法規制による判別
5 金商法の規制範囲内の取引×賭博罪
6 金商法違反の取引×賭博罪
7 金融商品販売法|性格・賭博罪との関係
8 賭博罪の成否|比較|デリバティブ・公営ギャンブル・遊技

1 賭博罪の成否×法的根拠の影響|基本

デリバティブ取引は賭博罪が成立する可能性があります。
(別記事『デリバティブ取引・基本』;リンクは末尾に表示)
本記事では賭博罪の成否に関する解釈論の基本的部分を説明します。
現在,デリバティブ取引は通常,『取引所』で取引が行われています。
当然,取引所は法律の規定・根拠によって開設・運営されています。
このような『法的根拠』が賭博罪の成否に与える影響をまとめます。

<賭博罪の成否×法的根拠の影響|基本>

あ 前提事情

取引所の相場により差金の授受を目的とする
現物の授受を目的としていない

い 基本的理解

『偶然の支配による財物の得喪』が生じる
→賭博行為に該当する
詳しくはこちら|賭博罪|基本|具体的種目・賭博場開張図利罪

う 取引所における取引

取引所における取引行為
→法律が認めている
→処罰すべきではない

え 取引所以外における取引

法が許すところではない
→当然刑法上の賭博罪が成立する
※大阪高裁昭和27年11月1日
※大判大正12年11月27日

これは基本的な整理です。
詳しい解釈論は後述します。

2 賭博開帳罪|賭博場=取引所|レアケース

『取引所』での取引は適法となる傾向があります(前記)。
この点,物理的に『取引所』での取引が違法となったケースがあります。
取引が行われた場所は確かに『株式取引所の建物内』でした。
しかし,所定の方法ではなく,違法と判断されるのは当然です。
ちょっと変わっているケースなので紹介しておきます。

<賭博開帳罪|賭博場=取引所|レアケース>

あ 事案

差金の授受を目的として売買注文を受けて手数料を徴した
賭けの対象=取引所の短期取引の立会相場の高低
場所=株式取引所の参観席

い 裁判所の判断

株式取引所という場所でも賭博開帳罪が成立する
→常習賭博罪+賭博開帳罪が成立する
※大判昭和7年4月12日

3 賭博罪の成否|法的根拠+目的による判別

デリバティブ取引は賭博罪が成立するとは限りません。
『取引の目的』により,違法性を判断する,という見解があります。

<賭博罪の成否|法的根拠+目的による判別>

あ 見解内容

法律上の根拠だけでは賭博罪の成否は決まらない
『取引の目的』によって違法性の有無が判断される

い 具体例

社会経済上の理由・目的はない
単なる投機的利得を授受しようとの意思から取引がなされた場合
→違法性を阻却しない
※日弁連消費者問題対策委員会『先物取引被害救済の手引 9訂版』民事法務協会2008年p85

う 批判

『取引の目的の相当性』は幅のある解釈である
これにより刑罰法規の適用が左右されるのは望ましくない
→法律上の根拠だけで違法性を阻却するべきである
※神田秀樹ほか『金融商品取引法コンメンタール4』商事法務2011年p624

一定の範囲では,実質的に『正しい・正当』と言える,という見解です。
このように行為者の考え(主観)で判断することについては批判もあります。
主観による判断を排除する見解は次に説明します。

4 賭博罪の成否|法規制による判別

デリバティブ取引の適法性判断に『主観』を含めない見解を紹介します。

<賭博罪の成否|法規制による判別>

あ 社会的な位置付け

証券・商品取引は実質はギャンブルといえるかもしれない
=賭博罪に該当する可能性がある
特別法によって規制された方式によって運営されている
社会的に寄与する面がある
※石原一彦ほか『現代刑罰法大系4巻社会生活と刑罰』日本評論社p245

い 法的解釈論

『法令行為・正当業務行為』として違法性が阻却される方向性
※刑法35条

特別法によって規制されている,ということからストレートに適法とする考え方です。
具体的な現在の法規制とは,主に金商法のことです。
金商法が賭博罪の成否にどのように影響するか,については次に説明します。

5 金商法の規制範囲内の取引×賭博罪

金商法の規制の範囲内で取引した場合の賭博罪の成否をまとめます。

<金商法の規制範囲内の取引×賭博罪>

あ 適用除外の規定

次の『アorイ』に該当する『店頭デリバティブ取引』
→金商法上の罰則・賭博罪の適用を除外する
ア 金融商品取引業者or登録金融機関が一方当事者である
イ 金融商品取引業者or登録金融機関が『媒介・取次・代理』を行う
※金商法202条2項

い 他のクレジット・デリバティブ取引

上記『適用除外』に該当しないクレジット・デリバティブ取引
→実質的に,金商法が許容している
→違法性が阻却される
=賭博罪が成立しない(前記見解)
※刑法35条
※山下友信・神田秀樹『金融商品取引法概説』有斐閣2010年p54

まず『金商法の条文』でストレートに適法となることがあります。
これに該当しなくても刑法上の『正当業務行為』として適法となることもあります。

6 金商法違反の取引×賭博罪

金商法に基づいた取引は一般的に適法となります(前記)。
逆に『適用除外=ガード』を受けない取引は『違法』となります。
適用される罰則についてまとめます。

<金商法違反の取引×賭博罪>

あ 前提

相場による差金授受目的の取引
典型例=クレジット・デリバティブ取引
金商法の規定の範囲に含まれない

い 法的効果

次の両方の罰則の対象となる
ア 金商法202条1項の罰則
イ 刑法の賭博罪

7 金融商品販売法|性格・賭博罪との関係

金商法とは別に『金融商品販売法(金販法)』があります。
ネーミングは似ていますが内容・正確がちょっと異なります。
そのため,賭博罪の成否への影響も2つの法律は違います。
これについてまとめます。

<金融商品販売法|性格・賭博罪との関係>

あ 金融商品販売法|性格

目的=顧客の保護
性格=事業者の民事責任を規定する

い 金融商品販売法×賭博罪

『金融商品販売法の対象』である取引
→これだけで法令or正当業務行為に該当するわけではない
=違法性が阻却されるわけではない
※須藤純正『デリバティブと賭博罪の成否(1)法学志林109巻4号』p86

8 賭博罪の成否|比較|デリバティブ・公営ギャンブル・遊技

賭博罪との抵触が問題になるのはデリバティブ取引以外にもあります。
公営ギャンブルやいろいろな遊技・ゲームです。
『賭博罪を回避する基準・理論』がそれぞれ異なります。
比較できるように整理してみました。

<賭博罪の成否|比較|デリバティブ・公営ギャンブル・遊技>

あ デリバティブ取引

『偶然の支配による財物の得喪』に該当するものもある
金商法の規制範囲内の場合
→正当業務行為or金商法による適用除外となる
=『適法』という解釈が一般的である
※刑法35条
※金商法202条2項

い 公営ギャンブル

例;競輪・競馬
特別法により明文規定により『賭博罪の適用除外』となっている

う 遊技

例;まあじゃん・パチンコなど
風営法の規制・許可は『賭博罪の成否』とは関係がない
単純に『一時娯楽物』に該当することを条件に賭博罪の適用除外となっている
※刑法185条
詳しくはこちら|賭博罪|風営法許可との関係|7・8号営業・公営ギャンブルとの比較