【違憲判決・法令無効→産業化・マーケット形成=実質的立法作用|具体例】

1 違憲訴訟の終了形態|判決・却下・訴えの取下げ
2 違憲判決の効果→当事者の救済|法令違憲→全国一般に法令が無効化
3 事業規制の法令無効→産業化・マーケット形成現象|実質的立法作用
4 最高裁によるマーケット形成の例|ドラッグストア・医薬品ネット販売・過払金請求
5 違憲訴訟|訴訟中の『投了・白旗』システム

違憲を主張する訴訟の判決などの終了の場面,社会への影響についてを説明します。
憲法の『人権』の制度や違憲審査基準については別記事で説明しています。
詳しくはこちら|人権基本・違憲立法審査権|違憲審査基準|経済的自由権×目的2分論

1 違憲訴訟の終了形態|判決・却下・訴えの取下げ

『違憲を主張する訴訟=憲法訴訟』の『終了』の場面について説明します。
裁判所では,判決で決着が付く=終了する,とは限りません。
終了の形態についてまとめます。

<違憲訴訟の終了形態>

あ 判決

裁判所が判断をくだすプロセス

い 却下|法改正・行政の処分撤回

訴訟中に『法改正』『行政の処分撤回』が生じた場合
→訴訟は『訴えの利益なし』となる
→却下となる

う 訴えの取下

『法改正』『行政の処分撤回』が生じた場合
→実務上は,裁判所から『訴えの取下げ』を要請される
→原告が『訴えの取下げ』を行う

2 違憲判決の効果→当事者の救済|法令違憲→全国一般に法令が無効化

『違憲』と判断した判決の効果についてまとめます。

<違憲判決の効果>

あ 個別案件における救済
い 『法令自体が無効』となる|実質的立法作用

最高裁が『法令違憲』の判断をした場合
→一般的に・広く法令自体が無効として扱われる
=法改正(廃止)があったのと同じ効果

最高裁の『法令違憲』だけはパワーがとても大きいのです。

3 事業規制の法令無効→産業化・マーケット形成現象|実質的立法作用

最高裁が『法令違憲』の判決を下した場合,社会に大きな影響を与えることがあります。
事業を規制する法律が『無効』となった場合,マーケット形成効果があるのです。

<事業規制の法令無効→マーケット形成現象>

あ 法令違憲→ビジネスモデルがホワイト化

法律上のある規制の条文が『無効』と確定した場合
→それまで禁止されていた事業(ビジネスモデル)が実行可能になる

い 全国で事業が可能になる|最高裁によるマーケット形成

法令無効の恩恵を受けるのは,原告・被告などの当事者だけに限られない
競合他者も『便乗』できる
→最高裁によるマーケット形成

4 最高裁によるマーケット形成の例|ドラッグストア・医薬品ネット販売・過払金請求

実際に,最高裁が産業化→マーケットを切り開いたケースをまとめます。

<最高裁によるマーケット形成|例>

あ ドラッグストアの普及

マツキヨなどのドラッグストア(タイムラグあり)
※最高裁昭和50年4月30日;薬事法薬局距離制限規定違憲事件

い 医薬品のネット販売

一般用医薬品のインターネット販売を規制する厚生労働省の省令を『違法』とした
※最高裁平成24年1月11日

う 過払金請求マーケット

消費者金融などの『利息制限法オーバー金利』の返還請求を認めた
→膨大な(元)利用顧客が返還請求を行った
※規制の無効,ではないが『マーケット形成』の規模が大きいので参考として掲載
※最高裁平成19年7月13日

5 違憲訴訟|訴訟中の『投了・白旗』システム

違憲を主張する訴訟で,被告=行政サイドが白旗を上げる状況もよくあります。
ただ,形式的には『敗訴』ではない終わり方となることが多いです。

<違憲訴訟|訴えの取下げ|実質的な意味>

あ 『取下げ』の現実の要因

『裁判所が違憲・違法→法令・処分の無効』と判断される見込みが高まった
→立法が『法改正』or行政が『処分撤回』を行った

い 『取下げ』の実質的な意味

実質的な行政サイドの『逃亡・撤退』=『敗訴』と言える
『白旗』『投了』と同じ状態である
(『投了』=将棋で『負けました』と言って対局を終了すること)

う 『取下げ』×行政サイドのメリット

『取下げ』であれば『敗訴』という形式を避けられる
=『法令・行政処分の無効』という悪しき烙印を押されることを回避できる

え 『取下げ』×原告サイド弁護士のアンニュイ

訴訟を遂行した弁護士は,依頼者から『勝った』と認めてもらいにくいシーンとなる

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