1 特別受益の副作用(不都合の発生)
2 持戻し免除の規定(基本的な方法と効果)
3 持戻し免除の意思表示の方法・方式
4 持戻し免除の黙示の意思表示の認定基準
5 黙示の持戻し免除の意思表示の認定事例(概要)
6 持戻し免除の意思表示の確実な方法

1 特別受益の副作用(不都合の発生)

特別受益は,相続の不公平を回避する制度です。しかし,状況によっては,被相続人の意図の実現を妨害する弊害を生じることもあります。いわば副作用と言えるような状況についてまとめます。

<特別受益の副作用(不都合の発生)>

あ 特別受益の制度(概要)

遺産分割において
一定の生前贈与・遺贈は特別受益に該当する
相続分の算定上『持ち戻し』が行われる
不公平を修正する趣旨・目的である
詳しくはこちら|特別受益の基本的事項(趣旨・持戻しの計算方法)
※民法903条

い 特別受益の副作用(不都合発生)

次のような結果になってしまうことがある
被相続人(遺言者)の考えによる調整が妨害される
=被相続人の希望が実現しない
この不都合を解消する方法がある(後記※1)

2 持戻し免除の規定(基本的な方法と効果)

前記のような不都合を回避する方法として持戻し免除というものがあります。まずは条文で規定されている根本的な内容をまとめます。

<持戻し免除の規定(基本的な方法と効果;※1)>

あ 条文の規定内容

被相続人が持戻しを免除する意思表示をした場合
→遺留分に関する規定に違反しない範囲内で効力を有する
※民法903条3項

い 持戻し免除の効果

特別受益の対象として扱わない
=持戻しの計算を行わない

3 持戻し免除の意思表示の方法・方式

持戻し免除の意思表示の現実的な方法や方式についてまとめます。

<持戻し免除の意思表示の方法・方式>

あ 持戻し免除の方式

方式に制限はない
※高松家裁丸亀支部昭和37年10月31日

い 意思表示の種類

明示・黙示の両方を含む
黙示の意思表示の判断をする実例も多い(後記※1)
※能見善久ほか『論点体系 判例民法10相続』第一法規出版p90

4 持戻し免除の黙示の意思表示の認定基準

被相続人の死後,持戻し免除の意思表示が明確に残っていないケースも多いです。その場合でも,暗黙(黙示)の意思表示として認定することもよくあります。
持戻し免除の黙示の意思表示の認定の基準をまとめます。

<持戻し免除の黙示の意思表示の認定基準(※1)>

あ 持戻し免除の意思表示の認定

黙示の意思表示の認定について
→次のような事情を総合的に考慮して判断する

い 判断要素

ア 贈与をした経緯
イ 贈与の趣旨
ウ 被相続人が受贈者から利益を得ていたか
※能見善久ほか『論点体系 判例民法10相続』第一法規出版p90,91

5 黙示の持戻し免除の意思表示の認定事例(概要)

実際に黙示の持戻し免除の意思表示が判断されるケースは多いです。これを認めた裁判例も数多く存在します。
裁判例については別の記事で紹介しています。
詳しくはこちら|持戻し免除の意思表示を認定した裁判例

6 持戻し免除の意思表示の確実な方法

持戻し免除の意思表示と認めるかどうかについて見解が対立することは多いです(前記)。ですから,生前に持戻し免除を希望する方は意思表示として明確に記録を残すことが望ましいです。

<持戻し免除の意思表示の確実な方法>

あ 理想的な方法の基本

書面に記述しておく
→記録として残る

い 具体的な方法の例

ア 遺言の中に記述する
公正証書遺言は特にメリットが大きい
<→★遺言作成時の注意点
イ 手紙として贈与を受けた者に送る(渡す)
ウ 記載した書面を保管しておく
例;貸金庫で保管する