【破産管財人の権限と自由裁量と例外(裁判所の許可を要する行為)】

1 破産管財人の権限と自由裁量と例外
2 破産管財人の権限と裁量
3 裁判所の許可を要する破産管財人の行為の内容
4 要許可行為における破産者の意見聴取

1 破産管財人の権限と自由裁量と例外

破産手続において,破産管財人は破産者の財産について,大きな権限を持ちます。
一方,例外的に権限が制限され,裁判所の許可が必要とされている行為もあります。
本記事では,破産管財人の権限・自由裁量とその例外である,裁判所の許可を要する行為について説明します。

2 破産管財人の権限と裁量

破産管財人は,破産者の財産(破産財団)に関する広い管理・処分権限を持ちます。

<破産管財人の権限と裁量>

あ 財産の管理・処分権限

破産管財人は,破産財団に属する財産の管理・処分をする権限を持つ
※破産法78条1項

い 管財人の自由裁量

破産管財人は,原則として自由裁量により,破産財団に属する財産を管理・処分する
※山本克己ほか編『新基本法コンメンタール破産法』日本評論社2014年p185

う 自由裁量の限界

破産管財人は職務執行について,善管注意義務を負う
義務違反については損害賠償義務を負う
※破産法85条
詳しくはこちら|破産管財人の善管注意義務と義務違反による損害賠償責任

え 自由裁量の例外

重要な一定の行為について,裁判所の許可が必要である(後記※1

お 自由裁量の例外の例外

『え』の行為のうち一部について
100万円以下の価額であれば裁判所の許可は不要である(後記※2
※破産法78条3項1号,規則25条

3 裁判所の許可を要する破産管財人の行為の内容

破産管財人の管理処分権限の例外(制限)として,一定の重要な行為は裁判所の許可が必要とされています。

<裁判所の許可を要する破産管財人の行為の内容>

あ 許可を要する行為(条文引用;※1)

ア 不動産に関する物権、登記すべき日本船舶又は外国船舶の任意売却イ 鉱業権、漁業権、公共施設等運営権、特許権、実用新案権、意匠権、商標権、回路配置利用権、育成者権、著作権又は著作隣接権の任意売却ウ 営業又は事業の譲渡エ 商品の一括売却オ 借財カ 第238条第2項の規定による相続の放棄の承認、第243条において準用する同項の規定による包括遺贈の放棄の承認又は第244条第1項の規定による特定遺贈の放棄キ 動産の任意売却ク 債権又は有価証券の譲渡ケ 第53条第1項の規定による履行の請求コ 訴えの提起サ 和解又は仲裁合意(仲裁法(平成15年法律第138号)第2条第1項に規定する仲裁合意をいう。)シ 権利の放棄ス 財団債権、取戻権又は別除権の承認セ 別除権の目的である財産の受戻しソ その他裁判所の指定する行為 ※破産法78条2項

い 一律に許可が不要となる規模(※2)

『あ』のうち『キ』〜『ソ』の行為について
100万円以下の価額であれば裁判所の許可は不要である
債権・有価証券(ク)は券面額を基準とする
※破産法78条3項1号,規則25条
※山本克己ほか編『新基本法コンメンタール破産法』日本評論社2014年p187

4 要許可行為における破産者の意見聴取

破産管財人が,裁判所の許可が必要な行為をする場合は,原則的に事前に破産者の意見を聴取する必要があります。
破産者自身は財産の状況をよく知っているので,その意見を参考にするというものです。
あくまでも管理処分権限は管財人にあります。つまり,破産管財人は破産者の意見に拘束されるわけではありません。

<要許可行為における破産者の意見聴取>

あ 破産者の意見聴取

破産管財人は,裁判所の許可を要する行為(前記※1)をする場合
→破産者の意見を聴かなければならない

い 例外

『ア・イ』のいずれかに該当する場合
→破産者の意見を聴かなくてもよい
ア 破産者の意見聴取により遅滞を生ずるおそれがあるイ 例外的に裁判所の許可が不要である(前記※2 ※破産法78条6項

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