【労働者性・判断事例|外回り・配送系|セールス・契約取次・集金・配達】

1 判例|食品販売外交員→労働者と認定
2 NHK受信契約取次業務→労働者ではない
3 証券会社の外務員→労働者ではない
4 判例|配達・集金・受注業務→労働者と認定
5 通達|新聞配達人→労働者と認定
6 通達|バイク便→労働者と認定
7 判例|トラック運転手→労働者ではない

1 判例|食品販売外交員→労働者と認定

『労働者』に該当するかどうかが判断された事例を紹介します。
本記事では配達やセールス・外回りに関する業種についてまとめます。

<食品販売外交員→労働者と認定>

あ 『外交員』契約の内容・業務内容

ア パンなどを外交員として販売する(単純な販売業務)イ 販売実績に応じて販売手数料などが支払われる 歩合手数料・半期手数料・退職慰労金
ウ 新規開拓顧客は,会社の顧客名簿に登録される+外交員契約終了時に会社に引き継がれる

い 契約書の条項不足

『独立の事業主』として扱う内容の条項はなかった

う 裁判所の判断

労働者にあたる
『外交員契約』は,販売委託契約ではなく,『労働契約』である
※名古屋地裁平成6年6月3日

2 NHK受信契約取次業務→労働者ではない

<NHK受信契約取次業務→労働者ではない>

あ 業務

放送受信契約の取次業務

い 業務従事の条件

ア 就業規則が適用されないイ 業務の遂行時間・場所・方法等は自己裁量であるウ 受信料の収納等について中心的業務はあらかじめ具体的に限定されているエ NHKからの指示について拒否する自由があるオ 報酬にNHK職員の給与規定は適用されないカ 収入を確定申告しているキ 業務の再委託や兼業も自由である

う 裁判所の判断

労働者にはあたらない
契約関係は(準)委託契約と請負契約の混合契約である
※仙台高裁平成16年9月29日;NHK盛岡放送局事件

3 証券会社の外務員→労働者ではない

<証券会社の外務員→労働者ではない>

あ 業務の種類

外務行為・証券外務員

い 業務内容

証券会社の顧客から株式・有価証券の売買・委託の媒介・取次・代理の注文を受ける
これを会社に取り次ぎ,売買その他の証券取引を成立させる
会社は報酬として出来高に応じて賃金を支払う
会社は,外務員がなした有価証券の売買委託を受理する

う 裁判所の判断

労働者にはあたらない
委任or委任類似の契約である
※最高裁昭和36年5月25日

4 判例|配達・集金・受注業務→労働者と認定

<配達・集金・受注業務→労働者と認定>

あ 事案

ア 勤務時間 午前9時〜午後5時30分
配達が終わっても,午後5時30分までは加工作業の補助など指示されることもある
イ 業務内容 毎日会社の配車係から配達先・配達内容などの指示を受ける
荷物を積み込み,配達を行う
集金・注文取りなどの業務も行う
配達には,会社の助手が付くこともある
逆に会社の自動車の助手になる・自己以外の自動車を運転することもある
ウ 他の従業員との比較 報酬→他の従業員に比べて高くはなかった
ロッカーの配置・使用など→他の従業員と同じ扱いであった

い 裁判所の判断

労働者にあたる
雇用契約に自動車貸借契約を含んだ混合契約である
※富山地裁昭和49年2月22日

5 通達|新聞配達人→労働者と認定

<新聞配達人→労働者と認定>

あ 結論

新聞配達人は労働者にあたる

い 理由

販売店と配達人との間には使用従属関係がある
『配達部数に応じた報酬』は『賃金の支払形態』に過ぎない
※通達;昭和22年11月27日基発400

6 通達|バイク便→労働者と認定

(1)『労働者』該当性×通達|バイク便|概要

<『労働者』該当性×通達|バイク便|概要>

あ 業務の概要

バイシクルメッセンジャー・バイク便の配送業務

い 形式的な契約関係

従業者と事業者の契約
→『運送請負契約』を締結している
形式的には『業務請負』という形態である
※バイク便通達(後記)

(2)『労働者』該当性×通達|バイク便|使用従属性

<『労働者』該当性×通達|バイク便|使用従属性>

あ 仕事の依頼・指示に対する諾否の自由

契約上は諾否の自由が認められている
実態は指示を拒否できない

い 指揮命令・管理

日常,営業所長の指示により配送業務に従事している
配送経路は『最短距離』が指示されている
携帯電話の保持・配送指示の受領・メールでの報告発信が義務付けられている
営業所長の指示により,内勤スタッフの業務を手伝うことがある
→事業者からの指揮・管理は強い

う 拘束性

出勤日・出勤時間が各従業者ごとに定められている
配送業務1件あたりの配送処理時間が定められている
配送後は『その場で待機』が指示されている
営業所への出所と帰所が義務付けられている
出勤簿により日々の出退勤時刻が管理されている
→時間的・場所的拘束性がある

え 代替性

契約上,再委託が禁止されている
業務を行う者は,所定の研修を受けて承認された者に限定されている
→代替性はほぼない

お 報酬の労務対償性

報酬は完全歩合制を採用されている
月末締め切り,翌月15日支払と定期的である
欠勤・皆勤によって,歩合率には増減がある
→出勤日・勤務時間に応じた報酬算定と言える
=労務対償性がある
※バイク便通達(後記)

(3)『労働者』該当性×通達|バイク便|事業者性

<『労働者』該当性×通達|バイク便|事業者性>

あ 機械・器具などの負担関係

自転車・バイク・携帯電話は従業者負担である
いわゆる『持ち込み』である

い 報酬の額

日額換算=1万円~1万5000円程度である

う 商号の使用

従業者独自の商号の使用は認められていない
配達員用バッグ・荷箱には事業者(企業)名が表示されている
従業者には,これらの使用が義務付けられている

え 専属性

契約上,他社の業務に従事することは制約されていない
しかし,事実上兼業は困難である
※バイク便通達(後記)

(4)『労働者』該当性×通達|バイク便|判断・結論

<『労働者』該当性×通達|バイク便|判断・結論>

あ 使用従属関係

肯定される事情が多い

い 事業者性

肯定される事情は少ない

う 総合判断=結論

労働基準法の『労働者』に該当する
※バイク便通達(後記)

(5)バイク便通達|日付・番号

<バイク便通達|日付・番号>

厚生労働省労働基準局長
平成19年9月27日
基発第092703号
基発第0927004号

7 判例|トラック運転手→労働者ではない

(1)トラック運転手×労働基準法・労災保険上の『労働者』|事案

<トラック運転手×労働基準法・労災保険上の『労働者』|事案>

あ 業務の遂行に関する指示

原則的に運送物品,運送先,納入時刻に限られていた
運転経路,出発時刻,運転方法には及ばなかった
複数の運送業務の間の時間
→運送以外の別の仕事が指示されることはなかった

い 勤務時間

始業時刻・及終業時刻が定められていなかった
当日の運送業務+翌日の運送業務の準備が完了すれば帰宅できた
翌日は出社せずに,直接最初の運送先への運送業務を行っていた

う 報酬

運賃表により出来高が支払われていた
運賃の算定要素=トラックの積載可能量・運送距離

え 経費負担

すべて従業者が負担していた
ア 従業者所有のトラックの購入代金イ 修理費ウ ガソリン代・運送の際の高速道路料金

お 従業者への報酬の支払の態様

所得税の源泉徴収・社会保険・雇用保険の保険料控除はされていなかった
従業者は報酬を事業所得として確定申告をしていた
※最高裁平成8年11月28日

(2)トラック運転手×労働基準法・労災保険上の『労働者』|事案

<トラック運転手×労働基準法・労災保険上の『労働者』|事案>

あ 裁判所の判断|評価

従業者の危険と計算の下に運送業務が遂行されていた
事業者は当然に必要な指示だけを行っていた
業務遂行に関するそれ以外の特段の指揮監督を行っていない
一般の従業員と比較して時間的・場所的な拘束の程度がはるかに緩やかであった
報酬の支払方法・公租公課の負担は『労働者』と整合しない

い 裁判所の判断|結論

従業者は労働基準法・労災保険上の労働者に該当しない
※最高裁平成8年11月28日

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