1 労働基準法・労働組合法の趣旨・目的の違い→労働者の定義
2 労基法と労組法の『労働者の定義』比較
3 『収入によって生活する』の緩和的解釈
4 労働組合法の『労働者』判断の原則|使用従属性は緩和する
5 労働組合法の『労働者』|判断要素の枠組み
6 労働組合法の『労働者性・使用従属関係』|基本的判断要素
7 労働組合法の『労働者性・使用従属関係』|補充的判断要素
8 労働組合法の『労働者性・使用従属関係』|消極的判断要素

1 労働基準法・労働組合法の趣旨・目的の違い→労働者の定義

労働組合法における『労働者』は,労働基準法などの『労働者』とは別の概念・定義です。
(別記事『労働者の定義・種類全体』;リンクは末尾に表示)
まず,2つの法律(のグループ)は趣旨・目的が違います。
労働基準法では『労働者』の扱いについて『使用者』に一定の基準を『強制』します。
労働組合法の『労働者』は主に『使用者との交渉』を確保するものです。
労働組合法の方が『規制内容が薄い』ため,これに対応して『労働者』も広めに認められます。
具体的に判断された事例は別記事で説明しています。
(別記事『労働組合法・労働者・事例』;リンクは末尾に表示)

2 労基法と労組法の『労働者の定義』比較

労働基準法・労働組合法では,条文上の『労働者の定義』が違います。

<労基法と労組法の『労働者の定義』比較>

あ 労働基準法9条

職業の種類を問わず,事業又は事務所に使用される者で,賃金を支払われる者

い 労働組合法3条

職業の種類を問わず,賃金,給料その他これに準ずる収入によつて生活する者

3 『収入によって生活する』の緩和的解釈

労働組合法の労働者の定義には『収入によって生活する』という条件があります。
しかしこの『経済的な依存性』は緩和して解釈されます。

<『収入によって生活する』の緩和的解釈>

家計のサポートとしての主婦のパートタイマー
生活費の一部のみを稼ぐ学生アルバイト
→労組法の『労働者』にあたる
※外尾健一『労働団体法』筑摩書房p32
※東京大学労働法研究会『注釈労働組合法上巻』p227,448
※中山和久ほか『注釈労働組合法・労働関係調整法』p77

4 労働組合法の『労働者』判断の原則|使用従属性は緩和する

労働組合法の『労働者の定義』では『使用される者』が抜けています。
労働基準法の労働者の定義における『支配従属関係』に相当する文言です。
労働組合法の『労働者性』に関する判例では『支配従属関係』は必要としつつ,緩和する,という方法が取られています。

<労働組合法の『労働者』判断の原則>

『使用従属性(関係)』によって判断する
労働基準法の『労働者』よりは緩和される
※東京大学労働法研究会『注釈労働組合法上巻』p227

5 労働組合法の『労働者』|判断要素の枠組み

判例などによって,『使用従属関係』の判断の枠組みも形成されています。
要するに,労働組合法の『労働者』の判断要素・枠組みです。

<労働組合法の『労働者』|判断要素の枠組み>

あ 基本的判断要素

ア 事業組織への組み入れ
イ 契約内容の一方的・定型的決定
ウ 報酬の労務対価性

い 補充的判断要素

エ 業務の依頼に応ずべき関係
オ 広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束

う 消極的判断要素

カ 顕著な事業者性
※労働委員会・判例など

この基準は厚生労働省がまとめているものを元にしています。
外部サイト|厚生労働省|労働組合法上の労働者性の判断基準について
また判例でも同様の基準が採用されています。
(別記事『労働組合法・労働者・事例』;リンクは末尾に表示)

6 労働組合法の『労働者性・使用従属関係』|基本的判断要素

この判断要素は,文字どおり『労働者性判断』の主なものです。

<事業組織への組み入れ;上記『ア』>

あ 判断基準

労務供給者が相手方の事業遂行に不可欠or枢要な労働力として組織内に確保されているか

い 肯定される事情の例

ア 労働力を確保する目的で契約が締結されている
イ 不可欠or枢要な労働力として組織に組み入れられている
ウ 第三者に対して相手方の組織の一部として扱っている
例;制服の着用・名刺・身分証の携行などにより『組織名』を表示している
いるなど、第三者に対して相手方が労務供給者を自己の組織の一部と
エ 受託業務に類する業務を事実上,相手方以外から受託できない

う 労働基準法の『労働者』との比較

労働基準法では通常適用されない

<契約内容の一方的・定型的決定;上記『イ』>

あ 判断基準

契約の締結の態様から,労働条件や提供する労務の内容を相手方が一方的・定型的に決定しているか

い 肯定される事情の例

ア 労働条件が一方的に決定され,事実上,個別交渉の余地がない
イ 定型的な契約様式が使用されている

う 労働基準法の『労働者』との比較

労働基準法では通常適用されない

<報酬の労務対価性;上記『ウ』>

あ 判断基準

労務供給者の報酬が労務供給に対する対価orそれに類するものとしての性格を有するか

い 肯定される事情の例

ア 報酬が仕事の完成に対するものというより,業務量や時間に基づいて算出されている
イ 一定額の支払いが保証されている

う 労働基準法の『労働者』との比較

労働基準法でも同様の基準はある
労働組合法には条文上『その他これに準ずる収入』が付加されている
→より広く認められる

7 労働組合法の『労働者性・使用従属関係』|補充的判断要素

以下の『判断要素』は上記『基本的判断要素』の補足・補充する,という関係です。

<業務の依頼に応ずべき関係;上記『エ』>

あ 判断基準

労務供給者が,相手方からの個々の業務の依頼に対して,基本的に応ずべき関係にあるか

い 肯定される事情の例

ア 個別の業務の依頼の拒否に対して不利益取り扱いの可能性がある
イ 実際上個別の業務の依頼を拒否できない
ウ 個別の業務の依頼を拒否する者がほとんど存在しない

う 労働基準法の『労働者』との比較

労働基準法の基準にも『業務の内容及び遂行方法に対する指揮命令の有無』がある
労働組合法はこれよりも大幅に緩和されている
前述の『事業組織への組み入れ』を補強する程度で足りる

<広い意味での指揮監督下の労務提供・一定の時間的場所的拘束;上記『オ』>

あ 判断基準

労務供給者が,相手方の指揮監督の下に労務の提供を行っていると広い意味で解することができるか
労務の提供にあたり日時や場所について一定の拘束を受けているか

い 肯定される事情の例

ア 労務供給の態様について詳細な指示がなされている
イ 定期的に報告等が要求されている
ウ 業務量や労務を提供する日時・場所について裁量の余地がない
エ 一定の日時に出勤や待機等が必要である
オ 実際に一定程度の日時を当該業務に費やしている

う 労働基準法の『労働者』との比較

労働基準法の基準にも『指揮監督』がある
労働組合法はこれよりも大幅に緩和されている

8 労働組合法の『労働者性・使用従属関係』|消極的判断要素

これは『労働者性を否定する』方向に働く事情です。
あくまでも総合評価なので,該当したら即否定される,というわけではありません。

<顕著な事業者性;上記『カ』>



あ 判断基準

労務供給者が,恒常的に自己の才覚で利得する機会を有し自らリスクを引き受けて事業を行う者とみられるか

い 肯定される事情の例

ア 自己の才覚で利得する機会がある
イ 業務における損益を負担している
ウ 他人労働力を利用する可能性がある
エ 他人労働力を利用する実態がある
オ 他に主たる事業を行っている
カ 機材・材料の経費を負担している

う 労働基準法の『労働者』との比較

労働基準法の基準でも『事業者性の有無』がある
労働組合法の方が,やや『労働者性を否定しない方向性』がある