1 解雇の制限=解雇権濫用の法理
2 解雇権濫用法理;有効性判断基準
3 解雇権濫用;解雇の合理性

1 解雇の制限=解雇権濫用の法理

一般的に解雇については,客観的に合理的な理由,が必要です。
形式的に,従業員の態度が就業規則などで規定する解雇の理由に該当したとしても,解雇が有効にできるわけではありません。
解雇は,従業員やその家族への影響が非常に大きいので,一定の制限がかけられるのです。
当初は,昭和50年に,最高裁において解雇権濫用の理論が示されました(日本食塩製造事件;最高裁昭和50年4月25日;後掲)。
この理論を解雇権濫用の法理と呼びます。

<最高裁判例の要旨>

客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合

権利の濫用として解雇が無効になる
その後,平成15年の労働基準法改正により,判例上の理論であった解雇権濫用が条文化されました。
さらにその後平成19年に労働契約法が制定されました。
この時,解雇権濫用が労働基準法→労働契約法,と移されました。
現在は条文としては,労働契約法16条に規定されている状態です。

2 解雇権濫用法理;有効性判断基準

解雇権が権利濫用とされ無効となるかどうか,については,多くの要素が考慮されます。
目的・手続に不当な点がないかが重要です。

多くの裁判例で解雇権濫用についての判断がなされています。
それぞれの事案について,個別的な事情が考慮されています。
蓄積された裁判例の判断内容をまとめると次のとおりです。

<解雇の有効性(解雇権濫用)の判断要素>

ア 解雇に合理性や相当の理由が存在するか(後記
イ 解雇が不当な動機や目的からされたものではないか
ウ 解雇理由とされた非行・行動の程度と解雇処分とのバランスが取れているか
エ 同種又は類似事案における取扱いとバランスが取れているか
オ 一方の当事者である使用者側の対応が信義則上問題はないか(非常識なことはないか)
カ 解雇は相当の手続きが踏まれたか

なお,↑は解雇一般における基準です。
解雇の中でも典型的な解雇については,類型化して解釈論が展開されています。

3 解雇権濫用;解雇の合理性

解雇の有効・無効を判断する基準の1つである合理性について説明します。

おおまかに言うと解雇もやむを得ないなと言える事情のことです。
実際の判断においては多くの要素が判断材料となります。
多くの裁判例で考慮されている事情をまとめると,次のようになります。

<解雇の合理性の判断要素>

ア 傷病等による労働能力の喪失・低下
イ 労働者の能力不足・適格性の欠如
ウ 労働者の非違行為
エ 使用者の業績悪化等の経営上の理由(整理解雇)
オ ユニオンショップ協定に基づく解雇

なお,平成15年の労働基準法改正により,『解雇の事由』を文書で明示しなくてはならなくなりました(労働基準法22条1,2項)。
まさに,訴訟などにおいて,合理性の判断材料とされます。

条文

[労働契約法]
(解雇)
第十六条  解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
[最高裁判所第2小法廷昭和43年(オ)第499号雇傭関係存在確認請求事件昭和50年4月25日(抜粋)]
使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には、権利の濫用として無効になると解するのが相当である。

[労働基準法]
(退職時等の証明)
第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。
○2 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。
(略)