【調停・訴訟上の和解における協議離婚条項の効力や実用性】

1 調停・訴訟上の和解における協議離婚条項(効力・実用性)
2 調停・訴訟上の和解の協議離婚条項の内容と実用性
3 調停・訴訟上の和解における協議離婚条項の意図
4 調停・訴訟上の和解の協議離婚条項の効力
5 調停・訴訟上の和解による離婚成立(法改正)

1 調停・訴訟上の和解における協議離婚条項(効力・実用性)

夫婦で離婚をするという約束(離婚の予約)をしても無効です。
詳しくはこちら|協議離婚の予約(離婚する合意)は無効である
この点,調停や訴訟上の和解の中でも同じように離婚届を出す約束をすることがあります。協議離婚条項と呼びます。
本記事では,協議離婚条項の効力や実用性について説明します。

2 調停・訴訟上の和解の協議離婚条項の内容と実用性

調停や訴訟上の和解の条項に離婚するとストレートに記載するとそれだけで離婚が成立します。
しかし,敢えて離婚するとは記載せずに離婚届を役所に提出すると記載することもあります。これが協議離婚条項です。
協議離婚条項は法的効力がありません。調停や訴訟上の和解ではしっかりと離婚を成立させる方法があるのですから,敢えて効力がない条項を作ることは本来望ましいものではありません。

<調停・訴訟上の和解の協議離婚条項の内容と実用性>

あ 協議離婚条項の内容

当事者間に離婚の合意がされた
しかし,条項には一定の期日までに離婚の届出をする旨を記載する

い 協議離婚条項の実用性

協議離婚条項には法的効力がない(後記※1
→好ましいものではない

う 調停離婚・裁判離婚(参考)

調停や訴訟上の和解で離婚するという条項を作成した場合
→これにより直接的に離婚成立の効果が生じる(後記※2
※島津一郎ほか編『新版 注釈民法(22)親族(2)』有斐閣2008年p18,19,22

3 調停・訴訟上の和解における協議離婚条項の意図

調停や訴訟上の和解の中で協議離婚条項を敢えて使う意図にはいくつかのパターンがあります。
戸籍上の記載に調停裁判という言葉を残したくないという意図や,金銭の支払と離婚成立を同時交換的にしたいという意図が典型です。

<調停・訴訟上の和解における協議離婚条項の意図>

あ 戸籍上の記載への配慮

当事者が戸籍上に『調停離婚・裁判離婚』という記録がなされることを嫌う

い 即時の効力発生の回避

ア 離婚すること自体の熟慮 内面的には離婚の意思が不安定である
→熟慮期間(冷却期間・待機期間)を設けたい
イ 金銭授受との同時履行 財産分与・慰謝料の支払を確保したい
金銭の授受とともに協議離婚届を提出させる

う 法律上の制限(法改正前・参考)

以前は,調停・訴訟上の和解によって離婚が成立することはなかった
法改正により現在では調停・訴訟上の和解による離婚成立が可能となっている(後記※2

4 調停・訴訟上の和解の協議離婚条項の効力

調停や訴訟上の和解の中で,離婚届を提出することを条項にしても,法律的に離婚が成立するわけではありません。さらに,離婚届を作成・提出することを強制することもできません。

<調停・訴訟上の和解の協議離婚条項の効力(※1)

あ 協議離婚条項による離婚成立(否定)

一定の期日の到来によって離婚が成立するわけではない
※昭和24年4月6日民事甲436号回答

い 離婚届提出の請求(否定)

当事者の一方が離婚届に署名捺印することを拒んだ場合
→離婚届の作成・提出を強制することはできない

う 不受理申出の回避(否定)

離婚届の不受理申出をすること
詳しくはこちら|不受理申出|協議離婚届提出を阻止できる・報告的届出は対象外
→自由である(回避することはできない)
※島津一郎ほか編『新版 注釈民法(22)親族(2)』有斐閣2008年p18,19,22

5 調停・訴訟上の和解による離婚成立(法改正)

調停や訴訟上の和解の協議離婚条項については,平成16年の法改正で状況が大きく変わりました。
実は改正の前は協議離婚条項にせざるを得なかったのです。現在は離婚成立の効果が即時に発生することが認められているので,古い方式(協議離婚条項)をとる必要は基本的になくなっているのです。

<調停・訴訟上の和解による離婚成立(法改正・※2)>

あ 法改正前

従前は調停・訴訟上の和解の調書上の離婚では離婚が成立しなかった
協議離婚条項を使わざるを得なかった

い 調停・和解調書による離婚の法改正(概要)

立法により従来の問題点を解決した
調停・訴訟上の和解により直ちに離婚が成立する
※家事事件手続法268条1項
※人事訴訟法37条1項,民事訴訟法267条
詳しくはこちら|離婚の形式の4種類(協議・調停・審判・裁判離婚)と成立時点

本記事では,調停や訴訟上の和解の中で離婚届を提出すること(協議離婚条項)を決めた場合の法的効力や実務での活用例を説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的扱い(解釈)や最適な手段の選択は違ってきます。
実際に調停や訴訟の和解による離婚に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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