【離婚意思を欠く離婚届の処理と対応・予防策(無効確認訴訟・不受理申出)】

1 離婚意思を欠く離婚届の処理と対応・予防策
2 役所での離婚届の受理手続における本人の意思確認(なし)
3 離婚届の受理後における届出の撤回の可否(否定)
4 不受理申出による離婚届受理の防止
5 不受理申出をすることに伴うリスク
6 離婚意思の不存在の記録化の具体例

1 離婚意思を欠く離婚届の処理と対応・予防策

離婚届を役所に提出しても,夫婦の一方の離婚意思がないと離婚は無効となります。
詳しくはこちら|離婚意思の内容(形式的意思)と離婚意思が必要な時点(離婚届の作成・提出時)
しかし,実際に離婚届が提出された時に,役所では意思確認をせずに受理し,戸籍への記録が行われます。戸籍を修正するには,後から裁判を起こして無効の判決を獲得する必要があります。
そこで,離婚届の受理を防止する方法として不受理申出があります。また,記録を残しておくことで,後からの無効確認訴訟に役立てることもできます。
本記事では,このような離婚意思を欠く離婚届の処理と対応策や予防策を説明します。

2 役所での離婚届の受理手続における本人の意思確認(なし)

役所で離婚届を受け取った(受付)後,一定のチェックが行われ,その後受理という扱いとなり,戸籍に協議離婚と記載されます。
役所では,離婚届を受理する際,夫婦の意思の確認は行われません。例えば,職員から当事者(夫,妻)に連絡して本心で離婚する気持ちがあるかどうかを確認するということはないのです。
結局,離婚届の形式的に問題がなければ受理されます。
逆に,戸籍に離婚が記録されたからと言って,協議離婚が(有効に)成立したとは限らないのです。

3 離婚届の受理後における届出の撤回の可否(否定)

前記のように,法的には離婚は無効でも,戸籍に協議離婚が記録されてしまうことがあります。
この場合,仮に夫婦が揃って役所に申告したとしても離婚を抹消してもらうことはできません。
これを解消するためには,家庭裁判所を通した手続が必要となります。無効であると認める判決か審判が必要になるのです。(戸籍法114条)。
詳しくはこちら|離婚無効審判・訴訟|『無効』の離婚届受理の撤回→審判or訴訟が必要

4 不受理申出による離婚届受理の防止

離婚届が受理されるリスクを回避する方法として不受理申出という手続があります。これは,離婚届の受理自体を防止するものです。
既に離婚届への署名・押印が終わった時点で,離婚する気持ちが失われたケースや,もともと離婚届への署名や調印を行っていないけれど,相手が離婚届を偽造するおそれがある場合には非常に有用な手段です。
詳しくはこちら|不受理申出|協議離婚届提出を阻止できる・報告的届出は対象外

5 不受理申出をすることに伴うリスク

不受理申出はとても有用で強力なのですが,状況によっては弱点もあります。
不受理申出をしたことを相手が知ってしまう可能性があるのです。これによって相手が暴力や違法行為に走ることが想定される場合は,不受理申出をするという方針自体を避けることもありえます。

<不受理申出をすることに伴うリスク>

あ 相手方への刺激を避ける

相手方の暴力傾向が非常に強い
→不受理申出をしたことが発覚すると危険な自体となるおそれがある
→極力相手方を刺激することを避けたい

い 相手方の不当な行為を避ける

不受理申出をしたことが発覚した場合,相手が不当な行為をするおそれがある
例えば,違法な証拠収集への意欲を掻き立ててしまうなど
→不受理申出をしなければ相手が油断する
詳しくはこちら|夫婦間の証拠争奪戦と違法収集証拠(メール・手紙など)

6 離婚意思の不存在の記録化の具体例

前記のように,不受理申出をしない場合には,別のリスクが生じます。
仮に離婚届が提出されてしまうと,戸籍に協議離婚の記録がなされます。その後家庭裁判所に離婚は無効であると判断してもらう必要が出てきます。
この時点で,不受理申出をしていなかったことにより,離婚意思の撤回が明らかになったとはいえないと判断され,離婚を無効とする判決を獲得できないことにつながるかもしれません。
そこで,不受理申出以外の方法によって,離婚意思がない(なくなった)ことを記録にしておくことが好ましいです。できる限りしっかりとした(否定されない)記録にしておくべきです。
具体的には内容証明郵便確定日付のある公正証書が有用です。

<離婚意思の不存在の記録化の具体例>

あ 離婚意思撤回の通知+記録化

離婚意思を撤回した(存在しない)ということを相手方に内容証明郵便で送付する

い 離婚意思撤回の記録化(通知なし)

離婚意思を撤回した(存在しない)という内容の確定日付公正証書を作成しておく

本記事では,離婚意思が欠けているケースで離婚届が役所に提出された時の扱いやこのような自体に対応,予防する方法について説明しました。
実際には,個別的な事情によって法的な扱い(判断)は違ってきます。
実際に離婚届に関する問題に直面されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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