1 夫婦財産契約によって余分な所得税・贈与税がかかる
2 夫婦共有に属する夫婦財産契約と所得税の扱い
3 夫婦共有に属する夫婦財産契約と贈与税の扱い
4 財産の帰属に関する夫婦財産契約と税務上の扱い(まとめ)

1 夫婦財産契約によって余分な所得税・贈与税がかかる

夫婦財産契約(婚前契約)として,夫婦の間で財産に関するルールを約束することができます。
詳しくはこちら|夫婦財産契約(婚前契約)によって夫婦間のルールを設定できる
夫婦財産契約はとても便利なのですが,思わぬ税金が課されるという落とし穴もあります。
本記事では,夫婦財産契約によって生じる所得税や贈与税について説明します。

2 夫婦共有に属する夫婦財産契約と所得税の扱い

夫婦財産契約で,夫婦の一方が得た財産の帰属を決めることができます。
典型例は,夫か妻が得た収入を夫婦で2分の1ずつの共有とするというような取り決めです。
税務上は2段階に分けて考えます。
1段階目で例えば,100%が夫の所得となります。
ここで得た金額の全額について,夫に所得税が課せられます。
課税された後に,2段階目として,このうち50%が妻に移転するのです。これについては次に説明します。

<夫婦共有に属する夫婦財産契約と所得税の扱い>

あ 夫婦財産契約の条項(前提)

『夫及び妻が婚姻届出の日以後に得る財産は,夫及び妻の共有持分2分の1の共有財産とする』

い 2分2乗方式の適用はない

『あ』の夫婦財産契約があっても
所得が原始的に夫・妻の共有に属するわけではない
=2分2乗方式は適用されない

う 夫婦間の財産の移転

まずは夫or妻が所得を取得する
その後,当該財産が夫婦2人の共有or合有に移行する
※東京地裁昭和63年5月16日;通過所得説

え 民事的な解釈(参考)

民事的にも夫婦間の財産の移転として解釈する方向である
詳しくはこちら|夫婦財産契約(婚前契約)で決めることができる内容(条項)と有効性

3 夫婦共有に属する夫婦財産契約と贈与税の扱い

前記の例では,2段階目として,夫が収入として得た金額の50%が,夫から妻に移転することになりました。
これは無償での財産の移転なので,みなし贈与として扱われるのです。

<夫婦共有に属する夫婦財産契約と贈与税の扱い>

あ 夫婦財産契約の条項(前提)

『夫及び妻が婚姻届出の日以後に得る財産は,夫及び妻の共有持分2分の1の共有財産とする』

い みなし贈与の一般論

民法上の贈与に該当しないものであっても,財産上の利益の供与があった場合にはみなし贈与として課税する

う みなし贈与の適用

夫婦財産契約の履行によって得た利益は,相続税法第9条の規定により贈与税の課税の対象になる
外部サイト|国税庁|夫婦財産契約と贈与税

4 財産の帰属に関する夫婦財産契約と税務上の扱い(まとめ)

以上の説明のように,夫婦財産契約で得た財産の帰属を夫婦で共有するような取り決めをすると,想定外の(余分な)課税が生じるのです。
いったん法定財産制どおりの財産の帰属があったとして解釈されるためです。
つまり法定財産制と違う内容の取り決めがあると,余分な課税が発生するのです。
逆にいえば,法定財産制と抵触しない夫婦財産契約の条項であれば,新たな課税関係は生じません。

<財産の帰属に関する夫婦財産契約と税務上の扱い(まとめ)>

あ 課税関係の発生

法定財産制から変更した場合
=法定財産制と異なる財産の帰属を夫婦財産契約で定めた
→課税の対象となることがある

い 課税関係が生じない内容の例

ア 確認的な条項
夫婦財産の所有関係を明確化する条項
法定財産制を逸脱するものではない
イ 婚姻解消時の清算
例=離婚の際の清算関係(妻の内助の功である家事所得の評価)
※『THINK 司法書士論業115号』日本司法書士会連合会2017年p143,144

余分な税金が生じることによって,夫婦財産契約の普及にブレーキがかかっているといえます。
詳しくはこちら|夫婦財産契約が普及しない現状・原因・米国との比較や利用される典型的状況

本記事では,夫婦財産契約によって生じる課税について説明しました。
実際に夫婦財産契約の内容を考える際には,このような課税についてもしっかり配慮しないと,後から後悔することになります。
実際に夫婦財産契約のご利用を検討されている方は,みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。