【内縁関係への夫婦間の契約取消権の適用の有無】

1 内縁関係と夫婦間の取消権の適用
2 内縁者間の贈与契約の取消を否定した事例
3 内縁と法律婚との違いのまとめ(概要)

1 内縁関係と夫婦間の取消権の適用

夫婦間の契約については取消権の規定があります。
詳しくはこちら|夫婦間の契約取消権の基本的事項(背景・趣旨・実害・条文削除意見)
この点,正式な法律婚ではなく『内縁関係』の2人でも『後悔する契約』が締結されるケースは多いです。この場合に夫婦間の契約取消権を主張するニーズがあります。
これについて,一般的には適用は否定されています。

<内縁関係と夫婦間の取消権の適用>

あ 判例の共通する見解(※1)

夫婦間の取消権(民法754条)について
→内縁関係には適用(準用)しない
※大判昭和10年3月12日

い 裁判例が示す理由

内縁関係は妻の法的地位が不安定=保護が薄い
→さらに弱めるのは妥当ではない
※高松高裁平成6年4月19日

う 反対説

内縁関係にも夫婦間の契約取消権を準用する
※青山道夫ほか『新版注釈民法(21)』有斐閣p386

『内縁』は,大部分が『婚姻(法律婚)』と同様に扱われています。
『取消権』は,その例外の1つとされているのです。

2 内縁者間の贈与契約の取消を否定した事例

内縁関係に夫婦間の契約取消権の適用を否定した裁判例を紹介します。

<内縁者間の贈与契約の取消を否定した事例>

あ 事案

内縁関係の2人が飲食店を共同経営していた
2人が不動産について贈与契約を締結した
事後的に贈与契約を取り消した

い 裁判所の判断

内縁関係には夫婦間の取消権を適用しない(上記※1)
→贈与契約の取消はできない
※高松高裁平成6年4月19日

3 内縁と法律婚との違いのまとめ(概要)

内縁は一般的に,法律婚と準じる扱いがなされています。しかし,完全に同じ扱いというわけではありません。細かい違いがいろいろとあります。
これについては別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|婚外子として子供を持つ家族(事実婚・内縁など)の普及と社会の変化

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