1 嫡出推定・誤作動|認知
2 例外的に推定が及ばないといえる特殊事情
3 嫡出推定・誤作動×認知の可否|推定が及ばない|結論

1 嫡出推定・誤作動|認知

嫡出推定が『誤作動』を生じることがあります。
この場合『真実の父』から認知することに支障が出てきます。
問題点の基本的事項をまとめます。

<嫡出推定・誤作動×認知|基本>

あ 原則

認知はできない

い 解決策

嫡出否認により『嫡出』を解消した場合
→その後は認知できる
※福岡高裁昭和26年11月29日

う 例外

一定の特殊事情がある場合
→嫡出否認の手続をしないで『認知』を実現する方法がある(後記)

2 例外的に推定が及ばないといえる特殊事情

『誤作動』の場合に『認知』はできないのが原則です(前述)。
これについて,解釈によって例外的な扱いがされることもあります。
『推定が及ばない』と呼ばれるものです。
これは,形式的には嫡出推定が適用されるけれど,実質的には夫婦間に性的関係がなかったといえるような状況のことです。

<例外的に推定が及ばないといえる特殊事情>

あ 嫡出推定の誤作動(前提事情)

他人の『嫡出推定』に該当する
=他人の『嫡出子』に該当する

い 『及ばない』といえる特殊事情

現実には『夫婦間に性的関係を持つ機会がなかった』ことが明らかである
→いわゆる『推定が及ばない』状態となる
詳しくはこちら|親子関係・手続|分類|『及ばない』|典型例・法的扱い

3 嫡出推定・誤作動×認知の可否|推定が及ばない|結論

嫡出推定が『及ばない』に該当する場合の結論をまとめます。

<嫡出推定・誤作動×認知の可否|推定が及ばない|結論>

あ 強制認知

認知請求の調停・訴訟を申し立てられる
嫡出否認の手続は不要である
※最高裁昭和44年5月29日

い 任意認知

役所は実質審査権を有しない
→認知届の提出はできない
※昭和24年10月7日民事甲2286号民事局長回答
※島津一郎ほか『新判例コンメンタール民法13』三省堂p67

う 親子関係不存在確認→認知

出生届を提出していない状態において
親子関係不存在確認の裁判が確定した場合
→母は『非嫡出子』として出生届を提出できる
→その後に『真実の父』は任意認知ができる
※昭和40年9月22日民事甲2834号民事局長回答
※加藤令造ほか『新版戸籍法逐条解説 全訂版』日本加除出版p323