1 不貞行為(不倫)の証拠(不倫・浮気が発覚する経緯)
2 不貞配偶者の自白
3 デジタルツール上の情報
4 メッセージの証拠価値
5 サイエンス系の証拠
6 アナログなアイテム
7 調査会社による行動調査結果(2人の写真)
8 被害者が作った記録
9 不貞の証拠とテクノロジーの進化
10 違法な証拠獲得の抑止力はか弱い(違法収集証拠)
11 不貞相手(氏名・住所)の特定の必要性・方法(概要)

1 不貞行為(不倫)の証拠(不倫・浮気が発覚する経緯)

不貞行為(不倫)をした2人は、不法行為として、他方の配偶者に対して慰謝料を支払う義務を負います。
詳しくはこちら|不倫の慰謝料の理論(破綻後・既婚と知らないと責任なし・責任を制限する見解)
実際に不貞慰謝料を請求する状況では、どのような証拠をつかむ必要があるか、ということが重要になってきます。本記事では、不貞を裏付ける証拠について説明します。

2 不貞配偶者の自白

例えば、夫が妻以外の女性(不貞相手)と性的関係をもっている疑いがある状況で、妻が問い詰めて、夫が隠しきれなくなり、正直に不貞行為をしたことを白状する、ということがよくあります(もちろん夫と妻が逆でも同じですが、以下の説明ではこれを前提とします)。
このような状況で、妻が、夫の白状(自白)録音する、あるいは、夫に紙に書かせるということがよく行われます。妻としては、「動かぬ証拠だ」と思ってしまいますが、これは大きな落とし穴なのです。後から、「その場をおさめるために真実ではないけど認める発言をした」、「真実ではないけどサインした」と言われることが多いです。
そして裁判所は、そのような夫の自白は決定打にはならないと判断する傾向が強いのです。

不貞配偶者の自白

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
配偶者の自白があっても、不貞行為の存在を認定できないとした事例が多く存在する。
配偶者の自白、メール、疑わしい言動などを総合して不貞行為が認定できる場合もある。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p54

3 デジタルツール上の情報

次に、不貞の証拠としてとてもよく登場するのが、いろいろなデジタルツールです。要するに、スマホやパソコンで記録したデータ、ということになります。
メールやLINE上の会話が主なものですが、それ以外にも、カレンダーやSNSへの投稿で不貞行為が裏付けられることもあります。
一般論として、デジタルデータは、改ざんが容易なので、証拠にならない(証拠価値が低い)という発想もありますが、実際には、特殊な事情がない限り、デジタルデータは証拠として使われます。

デジタルツール上の情報

あ メール、メッセージ

EメールやLINEのトーク、FacebookやInstagram(SNS)のメッセージ

い カレンダー

オンライン、クラウドのスケジュールの内容

う SSID

訪問先のホテル等のWi-Fiの設定がスマートフォン、ノートPCに残っているケース

え 撮影した写真、画像、動画
お SNS

ア Facebook、Instagramへの旅行先の画像アップイ 他のユーザーがアップした画像に写っている、タグ付けされているウ 2人がアップした画像が一致している 旅行先の風景、料理
エ 登録情報漏洩 ・ハッカー・クラッカーの悪意によるもの
・情報管理の不備によるもの

か 領収証、クレジットカード利用明細

オンライン上の情報(表示)というものも多い
例=ホテル・飲食店・プレゼント購入・旅行費用

き GPSカテゴリ

・スマホのアプリによる追跡
・タクシー・ハイヤーのサービス・システム
効率的な課金とGPS記録が一体となってシステム化されたサービスが提供されています。
例=タクシー配車サービス

4 メッセージの証拠価値

いろいろなデータは、1つだけで性的関係がはっきりすることもあれば、性的関係があるかもしれない、というレベルにすぎないこともあります。1つのデータでは不十分でも多くのデータを合わせるとはっきりする(証明できる)ということもあります。
特にメールやLINEによる、夫や不貞相手のメッセージは、あくまでもお互いしか読まないことを前提とした発言・セリフにすぎません。場合によっては冗談かもしれません(冗談であるという言い訳が通用することもあります)。
内容、組み合わせによって証拠としての価値は大きく異なります。

メッセージの証拠価値

メールやラインのメッセージは不貞行為を推認させる証拠となるが、内容によっては不貞まで認定できないものも相当ある。
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p54

5 サイエンス系の証拠

少し変わった不貞の証拠として、夫がSTD(性感染症)になったことや、妻以外の女性が産んだ子と夫に親子関係があることがDNA鑑定ではっきりした、というものもあります。

サイエンス系の証拠

あ STD(性感染症)

夫が性感染症になり、そこで妻が不貞の疑惑を持つケースがある
STDになったということ自体が不貞を示す証拠の1つとなる

い 出産後の子と父のDNA鑑定

ア 不貞女性の出産 夫と不貞女性の間に子ができた(妊娠)際、不貞女性が、夫の反対を押し切って出産することがある
その後、子供の存在が妻にばれる(発覚する)というケースがある
イ 不貞男性との間の子の出産 妻と不貞男性との間にできた子を夫婦の子としてしまう(出生届をする)ケースもある
この場合、夫は、いわゆるカッコウの子を育てるツバメ(托卵)という状態になる

6 アナログなアイテム

もちろん、デジタルではない、アナログな情報(アイテム)が不貞の証拠になります。
手帳やスケジュールとして行動が記載されているケース、手紙のやりとりの中に一緒に旅行したことが記載されているケース、クレジットカードの明細書に旅行に関する費用が出ているケース、などがあります。これらも、1つだけで不貞を証明できることもありますが、多くは他の証拠と組み合わせて証明する、ということになります。

アナログなアイテム

あ 行動記録系

手帳・スケジュール帳・手帳

い 意思疎通系

手紙・ハガキ・メモ

う 金銭フロー系

ホテルなどの領収書
預金通帳やクレジットカードの利用明細に、使途を手書きでメモしてあるケース
預金通帳などの金銭の動きと他の証拠を合わせると、使い道(特定の観光地で宿泊した)が推測できるケース

7 調査会社による行動調査結果(2人の写真)

不貞の証拠の決定打の1つに、調査会社(探偵・興信所)による行動調査報告書(調査結果)があります。要するに尾行して撮影した写真です。
典型例は2人でラブホテルに入った写真と出てきた写真です。旅行先の旅館やホテルでも同様です。
ただ、2人が自宅に入った写真と出た写真では、性的関係が持たれたかどうか分からない、という判断になることもあります。

調査会社による行動調査結果(2人の写真)

あ ラブホテル→強

(平成27年10月〜平成28年9月の東京地裁判決)
興信所等の調査資料でラブホテルなどに2人で入ったケースは不貞行為が認定されている

い 自宅→弱

自宅や単身赴任先の場合は当然に推認されないとされている

う 遠隔地の宿泊施設→強

2人で遠隔地の宿・ホテルに同宿すれば不貞行為が推認される
※大塚正之稿『不貞行為慰謝料に関する裁判例の分析(5・完)』/『家庭の法と裁判 15号』日本加除出版2018年8月p54

8 被害者が作った記録

妻(被害者)が、夫の行動やセリフを記録しているケースもあります。典型例は、外泊した日や、「仕事で◯◯に出張してくる」というセリフを手帳(カレンダー)に手書きするというものです。
あとから、別の場所のホテルの領収書が出てきたら、「夫が嘘をついていた」ことが分かります。これだけでは不貞を立証できなくても、いろいろな証拠の総合評価で不貞を認定できることもあります。
この点、妻自身による記録なので、極論、後から作り出すこともできるので、一般論としては信用されない傾向があります。しかし、詳細な記述で、かつ、長期間にわたって記録されているような場合は、信用される、つまり証拠として価値が高いということもあります。このような日々の記録は無駄にならないのです。

被害者が作った記録

被害者が記載したメモ・日記帳
→被害者が後から作ったという疑いが持たれる
しかし、詳細で長期間に及ぶ場合などは信用されることもある

9 不貞の証拠とテクノロジーの進化

不貞の証拠は、不貞の痕跡と言い換えられます。現在、生活のあらゆる場面にテクノロジーが活用され、しかも、テクノロジーは日々進化しています。便利になる一方で、痕跡がたくさん残るようになってきています。
具体的には、現在、クラウド(SaaS、ストレージサービス)方式のシステムの普及が一気に進んでいます。行動の痕跡が、別の端末(スマホ、PC)からも閲覧できる状況になっているのです。
夫が、不貞はバレていないだろうと思っていたら、実は妻に全容を把握されていた、泳がされていたというケースもよくあります。利便性とプライバシーのコンフリクトという問題は、不貞問題にも結びついているのです。

10 違法な証拠獲得の抑止力はか弱い(違法収集証拠)

例えば、クラウド上のデータは、IDやパスワードが分かればアクセスできてしまいます。
つまり、本人になりすましてアクセスする行為です。これは違法行為です。
詳しくはこちら|メール,手紙を見られたことへの法的救済;犯罪,慰謝料,証拠能力
一般論として、違法な手段により入手した証拠は排除されることがあります。刑事訴訟では、このルールが徹底しています(違法収集証拠排除法則)。
慰謝料などの民事でも、違法な手段で入手した証拠が排除される(使われない)ことがあります。しかし、排除されない(証拠として使われる)ことも比較的よくあります。
詳しくはこちら|違法収集証拠|具体例|夫婦間の証拠争奪戦・獲得合戦|メール・手紙など
もちろん、当事務所は、違法な行為を推奨するわけではありません。むしろ、違法な行為を抑止するような解釈が必要であると考えています。いずれにしても、客観的な情報として説明する次第です。

11 不貞相手(氏名・住所)の特定の必要性・方法(概要)

以上で説明したのは、不貞行為があったことを裏付ける証拠です。不貞行為を示す証拠が集まれば、妻から夫に慰謝料の請求(や離婚の請求)をすることができます。
実際には、離婚や夫への慰謝料請求より前に、不貞相手に慰謝料を請求することが多いです。ここで次の問題になるのは、不貞相手が誰かを突き止めることです。夫と女性Aがラブホテルに入ったことが発覚しても、夫が女性Aの氏名や住所を言ってくれないと、慰謝料請求の手続をすることができません。女性A(不貞相手)についてどこまでの情報があれば慰謝料請求の手続ができるのか、ということについては、別の記事で説明しています。
詳しくはこちら|不貞相手への慰謝料請求のために必要な情報と調査する方法

本記事では、不貞行為(不倫)の証拠について説明しました。
実際には、個別的な事情によって、法的判断や最適な対応方法は違ってきます。
実際に夫婦や不貞行為に関する問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。