【ハーグ条約により国際的な子供の返還,面会交流がやりやすくなった】

1 平成26年に「ハーグ条約」が締結され、海外から子供を戻す手続が整備された

国際的な離婚については、法律の適用が多少複雑です。

国際的な離婚の準拠法は夫婦の居住地国,国際的裁判管轄は被告の居住地国

ここでは、国際的な子供の返還などをサポートする内容の「ハーグ条約」について説明します。
「ハーグ条約」の正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」です。
このタイトルどおりですが、条約の概要は次のとおりです。

ハーグ条約の概要

・条約締結国間での子供の連れ去りなどについて発生防止、返還の実現に向けた国際協力体制
・具体的な子供の返還、面会交流などの手続内容

これにより、子供の返還を求める手続において、外務省、裁判所などが連携を取った処理をできるようになりました。
結果的に、子供の返還、面会交流の実現が以前よりも大幅にやりやすくなりました。

2 利用できるのは条約締結国の間で子供を連れ去った場合と留置した場合

自分の子供が海外に連れ去られた
 海外に一時的に行き、戻る予定だったのに戻らせないという場合も含みます。
 「留置」と呼んでいます。
子供の所在国がハーグ条約加盟国である

3 子供の返還申立の手続は、日本、外国の外務省が協力してくれる

子供の連れ去りには、日本→海外、と、海外→日本、という2方向があります。
以下、日本→海外、と連れ去られたという前提で説明します。

(1)子供の返還手続の申立

このような場合、子供の返還申立ができます。
管轄の機関は子供の所在地国の裁判所です。

ただし、申立については、2とおりが認められています。

子供の返還申立の申立先

※いずれか

あ 日本の外務省(外務大臣)

日本語での申立が可能です。
この場合、日本の外務省を経由して子供所在国の裁判所に連絡がなされます。
所要時間が長くなる傾向にあります。

い 子供の所在国の外務省(国によって機関が異なる)

日本語での申立は通常認められません。
しかし、「日本の外務省経由」よりも所要時間を短縮できます。

(2)子供の返還手続の進行

管轄は子供の所在地国の裁判所です。
しかし、連絡、調整については、日本の外務省、所在地国の外務省も協力します。

(3)手続は裁判、決定だけではなく、調停、斡旋も含まれる

子供の返還手続は、要件の審査→決定、という単純なものではありません。
裁判所を介した話し合いや裁判所からの提案という、話し合いベースの進め方をすることも多いです。
調停や斡旋と呼んでいます。

4 子供が連れ去られた、16歳未満、などの場合に返還が認められる

次の要件を満たす場合、所在地国の裁判所は原則的に、子供の返還を命じることとされています。
ただし、これは純粋な理論です。
実際の手続においては話し合いなども積極的に行なわれることが多いです。

子供の返還を認める要件

※すべて
・子供が16歳未満である
・条約締結国に子供が所在する
・連れ去りまたは留置により、子供が当該国に所在している
・返還拒否事由に該当しない

返還拒否事由

※いずれか
・連れ去りまたは留置の時から1年が経過している+子供が新たな環境に適応している
・申立人が連れ去りまたは留置の時に現実に監護の権利を行使していなかった
・申立人が連れ去りまたは留置の前に同意し、または後から承諾した
・元の国に子供を返還することによって、子の心身に害悪を及ぼす、その他子を耐え難い状況に置くという重大な危険がある
・子供の年齢及び発達の程度に照らして子供の意見を考慮することが適当である場合において、子供が返還されることを拒否している

5 面会交流援助の手続もある

元々子供が海外に居住している場合、子供の返還手続では、日本に連れて来る、ということは認められません。
ただし、親が子供の所在地に赴いて面会することは親権(監護権)の一環として認められます。
詳しくはこちら|子供と親の面会交流の理論(裁判所の手続の根拠と面会交流の権利性)
実際には、相手方の親が面会をさせない、妨害する、ということも多いです。
このような場合に、子供の返還手続と同様に面会交流を裁判所、外務省がサポートする手続もあります。
外国面会交流手続と呼んでいます。

6 外部リンク

ハーグ条約に基づく手続については、外務省、裁判所のHPにて細かい説明が記載されています。
外務省;国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)
裁判所;ハーグ条約実施法関連サイト
ハーグ条約;条項内容

本記事は一般的な説明です。個別の事案にそのまま当てはまるとは限らず、一見似ている事案でも、事情が異なれば結論は異なります。個別的事情により、法的判断や主張として活かす方法、最適な対応方法は違ってきます。本記事でご説明したものと同様の問題に直面されている方は、みずほ中央法律事務所の弁護士による法律相談をご利用くださることをお勧めします。

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