法律相談では過去の裁判例を重視するのでしょうか。
私(相談者)に有利な解釈をしてくれるわけではないのですか。
「客観的な予測」と「有利な結果の獲得」は別です。
予測自体は客観的に,案件の遂行における主張,立証の組み立ては最大限有利になるよう検討を徹底します。

客観的な予測受任後の案件遂行時の主張の意欲,熱意は別モノです。
裁判例を尊重して中立的な判断をするイコール有利な主張をしないということではありません。
多くの裁判例などの法律解釈を把握していることは有利な主張有利な結果獲得につながることです。
順に説明します。

1 客観的な予測
裁判例等,過去に採用された法律解釈は,その後の裁判,交渉などの実務で採用される可能性が高いです。
言ってみれば中立性を貫徹する裁判官の判断の予測をする予測の際は中立性が前提ということです。
ここで,予測の精度を高めるためには裁判例を中心とした法律調査が非常に有用です。
客観的な予測が高い精度でできないと,実際のアクション選択が適切に行えません。
なお,アクションを起こすか否か,という判断も含みます。
可能性が低くても,その中で最大限,できる限りの主張,立証を行うという判断もあり得ます。
ただ,↓のようなことはサービスとして不十分だと思います。
なお,弁護士職務基本規程において,予測を説明することは義務とされています(弁護士職務基本規程29条)。
明文化しなくても存在意義に関わる当然のことだと思います。

<予測が不十分という例>
「請求が認められるかどうかまったく予想が付きません。
 実現可能性はほぼ0%かもしれないし90%かも分かりません。
 この部分は判断しないで,とにかくご依頼いただければ遂行します」

2 受任後の案件遂行時の姿勢,方針
具体的な交渉や訴訟における主張,立証については,最大限依頼者に有利な方法を選択します。
方向性を持つという意味で攻撃(主張)はディレクショナルとでも言う状態です。
これが法律家としての存在意義であり,法律家側からすればやりがいそのものです。

例えば,訴状,準備書面や内容証明による通知書の作成の際は,事前に,最大限有利な結果獲得につながる主張,立証を組み立てます。
ここで客観的,中立な予測をする際に使った裁判例をそのまま指摘することはありません。
裁判例,学説等のうち,より有利なものをピックアップしてこれを引用,利用します。
なお,この点,受任した事案によって,主張や引用する裁判例を偏らせることは認められています。
品位保持には反しないと解釈されています(弁護士職務基本規程6条)。
業務というか存在意義の本質なので当然の解釈でしょう。
中立な判断を貫徹する裁判官とは違うところです。

ここで,法律調査が十分にできている,ということが有利な流れになります。

<法律調査の徹底が有利な結果獲得につながるフロー>
多くの裁判例,学説等の法律解釈を調査し,その結果を整理して使える状態としている→有利な主張,立証→有利な結果獲得

条文

[弁護士職務基本規程]
第六条(名誉と信用)
弁護士は、名誉を重んじ、信用を維持するとともに、廉潔を保持し、常に品位を高めるように努める。

第二十九条(受任の際の説明等)
1 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。